030 大和さんと七海ちゃんと所長
掲載日が2日づれづれでした。
読んで頂いている方々申し訳ないです。
午後の講義も終わり、ビジ科の教室で朔來と朔來の彼氏である駿介との3人で課題の打合せをしながら颯太を待っていると、普段は他の科の人が入ってこない教室に大和さんが顔を出した。
「やぁ。美月ちゃん!ココに居たんだ?」
美月はびっくりしながらパソコン画面に開いていたSNS機能でメッセージを送りながら、誰かほかの人に用事かな?という期待を込めて大和に顔を向ける。
「こんにちは、大和さん。誰かビジ科に人に用ですか?」
「美月ちゃんに決まってるでしょ?少しいいかな?」
残念ながら美月の希望は叶わなかったが、大和さんの最近のお誘いと言動。新歓での出来事を朔來に話して大和さんと2人にならない為に昼食も、誰かと過ごしていた。
今も朔來と朔來の彼氏である駿介まで巻き込んで颯太を待っているので、美月が大和ついて行って2人きりになってしまっては意味が無い。美月が断ろうと口を開きかけると、駿介が先に口を開いた。
「すみません!エネ制の方ですよね?今、うちの科の課題のプレゼンの打合せをしてて、美月もボクもこの後バイトあって、朔來もサークルに行かなきゃいけないんで後日にしてもらってもいいですか?お急ぎならここでお願いしまぁす!ちょっと、長くは待てないんで!」
駿介はビジ科の仕切り屋さんと呼ばれる段取りが出来る子なので、丁寧且つ率直に大和に願い出て、美月を1人で連れて行かれないように先に牽制してくれている。そもそも、朔來から美月の事を聞いてなんで早く相談しないんですか!と美咲も入れて3人に叱られたのが昨日だった。
「あぁ。今日はバイトなんだ。明日は空いてる?」
「明日は、昼は楓ちゃんたちと約束あって、夜は友達と会うんです」
どきどきしながら、今日約束をとりつけたことを伝える。美月の返事に大和は思案するようにしながら空いている美月の向かいである駿介の隣の席に座った。
「そっかぁ~美月ちゃん。忙しいもんねぇ〜。木曜と金曜も既に予定ある?颯太が車出す日に一緒に帰ろう?朝からおれが迎えに行ってもいいけど、あぁそうだ。連絡先交換しよう!大輝に聞いても、颯太に聞いても、本人に聞いて下さいって言われてさ。いいよね?」
大和さんがそう言い終わった瞬間、教室の入り口から大きくて華やかな声が入る。実は、大和さんが教室に顔を出した瞬間にSNSでメッセージを送っていた七海が嬉しそうに入って来た。
実に早い到着に連絡した美月も驚くが、今日の空き時間に、七海とカフェで会った。その時に最近大和さんと会えないと嘆いていたので見かけたら連絡する約束をしていた。
「大和さぁ~ん!いたぁ~!なんで、メッセ返してくれないんですかぁ?」
「え?いやっ」
「今日、空いてますかぁ~?良いお店みつけたんで一緒に行きたくてぇ~」
突然の七海の乱入に慌てている大和さんを尻目に、七海はどんどん話を進める。今まで凄いなぁ~と圧倒されていた七海の勢いに助けられてホッとするって人間って現金だなぁ~と思いながら美月も七海を援護する。
「大和さん今週予定無いみたいよ!私は空いてる時間を聞かれたんだけど、バイトがあったり友達と会う約束あって忙しくて!七ちゃんが空いてるなら良かったですね!大和さん!」
「え?おれは美月ちゃんと・・・」
「えーじゃあ、毎日予定入れちゃいましょう!私も、今週はずっと空いてるんですぅ~!」
「いやっ。来週から夏休みだから・・・」
「えぇー!来週からも会えるんですか!嬉しい!夏休みもたくさん遊びましょう♪今日、私ぃ~陽菜ちゃんの車に乗って来たので大和さん乗せてください!陽菜ちゃんは、なんか課題をしたいって言ってたんで時間潰してたんです!」
「はっ?えぇ~あの美月ちゃん!連絡先・・・」
「さぁーさぁー!美月ちゃんたち、忙しいみたいなんで邪魔しちゃダメですよぉ!行きましょう!あっ!美月ちゃん!連絡してくれてありがとうぉ~またお願いねぇ~!」
「いいえぇ~気にしないでぇ~楽しんできてね!」
七海ちゃんに腕を捕まれ強引に連れされる大和さんににこやかに手を振る。前にも見たパターンだなと思いつつも凄く助かった。
最近の大和さんは強引さが目立っていたが、大和さんは元々大人しくて押しに弱いタイプだったはずなので七海の勢いには抵抗できないのかもしれない。あの3人にも2次会に連れて行かれていたなぁと思っていると朔來から感嘆の声が漏れる。
「いやぁ~七海様凄い!私、一言も喋らなかった」
「正直、利用してるみたいで申し訳ないけど、七海ちゃんにとっても都合がいいのであればいいのかな?・・・・・駿介もありがとうぉ~」
「いーえー、でも全然抑止力になってなかったですね。あの人ってあんなに強引な人でしたっけ?大人っぽいっていうか、大人しいっていうか、グイグイ来る人じゃないと思ってました」
「なんか、わかんない。急にあんな感じになってさぁ〜。なにかしたかな?私」
美月は何故だろうと考えていると朔來がバッサリと切る。それでも、否定するが何か番犬とか別のワードが出て来た。うち、犬飼ってないけどな。
「違うでしょ?美月の事もともと狙ってたと思うよ?」
「えぇ!そんな感じ無かったよ!急にだよ!」
「まぁ。番犬が牽制してたからねぇ〜でも、何か危機感でも感じたのかな?強引になったのは、急だねぇ~。新歓のアレも気持ち悪いし」
「新歓のは、本気で嫌だったみたいで今思い出してもぞわっとする」
美月はが両腕を擦ると、朔來が怒って抗議する。美月のあまり深くとらえないようにする癖が事態を悪化させていると最近少し思うようになってきた。置いてきた危機感を回収しなくてはならない。
「嫌だったみたいって!なんで他人事なのよぉ~その日には教えてくれなかったし!」
「でも、飲み会楽しかったじゃない?水を差すのも・・・」
「ん~美月が気遣い屋さんなのは分かるけど、なんかあったら言って!助けられないのは嫌だぁ~酔っぱらってたから気を付けてだけじゃわかんいよぉ~!」
「うん。ありがとう!今度から早く相談する」
朔來の優しさにほっこりしていると駿介もフォローすると言いながら惚気る。器用な事だ。
「そうですよぉ~ボクだってクラスメイトですし、一応たっぱはある男なので、可愛い彼女の友達だし、ボクらも友達じゃないですか!」
「ふふっ。駿介は、すぐに惚気る」
「ボクの彼女、照れる顔も可愛いので!」
朔來の真っ赤な顔を見て柔らかく微笑む駿介と、真っ赤な顔をしながら駿介を睨む朔來を微笑ましくみていると颯太が教室に入って来た。そんな、颯太に照れ隠しなのか朔來がつっかかる。
「待った?」
「颯太さん!マジで遅い!大和さん来てましたよ!」
「え!?マジ!大丈夫だった?」
「美月が七海様を召喚してました」
「おぉ・・・。それは凄い召喚獣ですね」
颯太が若干引き気味に言うと、朔來は有効でしたとなんだか自慢げな顔をする。本当に可愛い。駿介に気持ちが分かる。颯太と駿介は高校が同じで更にバスケ部の先輩後輩で仲が良くなったと言っていた。駿介も気兼ねなく会話に混ざる。
「颯太さん、なんで遅かったんですか?」
「なんか、最近帰りに雄大によく呼び止められるんだよ。駿介も一緒にいてくれてありがとな。流石に女子二人では心配だし、こーゆーときは山口のバッサリの方が助かるよな。美月も田中もいいやつすぎるからなぁ・・・」
「あーそれ、大和さん関係あるんじゃないですかぁ?」
「「ん?」」
「なんで、二人して気がついてないんですか!中村雄大に七海さんの相談されてますよね!美月さん!」
「あっ!」
「げっ!」
「忘れてましたね?七海さんと大和さんがくっつかないように中村雄大が大和さんのお手伝いしてる可能性ありますねぇ~」
「考えたく無いからあまり考えてなかった」
「興味ないから忘れてた」
「あはは相談に乗ったのに」
「アレは無理矢理・・・」
「確かに・・・」
朔來の指摘に2人して、うっかり雄大の行動原理を思い出した。思い出せたので今後、回避がしやすいだろうと考えると本当に助かる。最近、人間運おかしいなとは思うが友達運には恵まれて良かったと美月は正直に思った。
◇◇◇◇◇
火曜日はもちろん、事務所に顔を出さないといけないし日曜の事があるので家に帰ってすぐに準備をして早めに家庭教師事務所に向かった。案の定、難しい顔をした所長と職員さんが3人仕事している部屋に通される。
「森ちゃん。日曜日はアプリ立ち上げましたか?」
さっそく問われたのは、家庭教師事務所独自のアプリの件だった。この家庭教師事務所には独自のアプリがあり、家庭教師の時間は家に入る前に起動して、これがタイムカード代わりになり、家を出たらアプリを停止する。
位置情報や、授業中の会話を記録するためのアプリで、契約時に保護者へは説明される。生徒に知らせるのは保護者に任されているが、その機能や使用用途は家庭教師の職員やアルバイト生にはきちんと説明されている。
ただのボイスレコーダーではなく、アプリに登録されている家庭教師情報と位置情報と会話が紐づけされてクラウド保存の上に、所長のアカウントでのみ録音を聞くことが出来るのでアルバイトが勝手に録音を再生したり使用したりすることができない。職員も所長立会の元で確認の作業をする。
家庭教師は、所在地、授業内容を全て所長に聞かれているという状況は気が引き締まるし、もしも生徒に不埒なことを考えることへの抑止力にもなる。さらに、悲しい事に昨今悩ますのが生徒側が家庭教師の不利益になる事を起す事件から家庭教師自身を守るためにも使用されている。
「いえっ。家庭教師の時間じゃないですし・・・」
「そうです!家庭教師の時間じゃないのです。なのに会いに行くなんて。はぁ~。あんな連絡だけ寄こして・・・」
「でも・・・・、連絡しないと駄目ですよね?」
「もちろん決まってます!しかし、報連相です!報連で終わったら駄目でしょ!」
「だって所長!最近、時間が取れなかったお父さんが遊園地に連れて行ってくれる日曜日に、梅雨なのに晴れた日曜日に!お母さんが不在で中止になった時のリクトの気持ちを考えるとほっとけなくて・・・落ち込んでるリクトを見る大翔もどうするか心配で・・・
しかも、お母様ご不在で!子供たちだけだったんですよ!
もし、大翔が1人で2人を連れて行ったらどうしようとか、リクトが大翔に止められたのに1人家を出たらどうしようとかたくさん頭の中で嫌な想定が出たんです!マイちゃんもいるし・・・だから、ほっとけなくて・・・」
美月の言い分に、ぐっと1度呼吸を止めた所長は話を続ける。
「ほっとけない子たちを、君に合わせた私の責任ですし、松永さんにも散々謝られましたので何もお咎めは無しです!が!次回はありません。
この様な状況では連絡と待機が正しい。万が一、彼らを監視する為に貴方が行く場合は、アプリはすぐに起動します!アプリの使用は契約書にも記載がありますし、親御さんには説明しています。これは、彼らを守るためでもあるし貴方方を守るためでもあります。そして、移動は絶対にしてはいけません!わかりましたか?」
「はい・・・・」
「森さんが、親切でしたことですので叱りたくはないのですが、貴方を弊社で預かってる大事なスタッフです。預かっている身としては気が気じゃありませんでした」
「はい・・・申し訳ございません」
所長も、美月の行動の意味も分かっていたのでこれ以上は言わないでくれたが、今回の事でたくさんの人に心配をかけてしまったと美月は反省することになった。
読んで頂きありがとうございます!
~登場人物~
森 美月21歳 1浪大学2年生 ITビジネス科 SNS名【森美月】
6/12生 何かと人に相談されがちな事が少し気になる今日この頃 体系にコンプレックスを持っている 男兄弟の真ん中 ブラコン 敢えて鈍感 年下に甘い
田中 朔來20歳 大学2年生 ITビジネス科
6/23生 大学からの友達 スポーツウーマン背が高い 同じ科に彼氏がいる バレーサークル所属
辻 駿介19歳 ITビジネス科2年
9/7 朔來の彼氏 颯太と同じ高校のバスケ部の先輩後輩 彼女ラブ 元バスケ部 事務のインストラクターのアルバイトをしている
前田 大和23歳 専門2年卒業後 大学2年生 エネルギー制御科
5/12生 専門学校卒業後の入学なのでみんなより少しお兄さん 色白神経質そうな容姿 美月狙い 最近本気モード?
山下 七海19歳 大学2年生 インテリアデザイン科
3/21生 他科の知人 陽菜の幼馴染 メンヘラ気味の自称サバ女 無神経 女から声をかけるのはナンパは嫌らしい 七海節があると言われている(陽菜談)
山崎 颯太20歳 1浪大学2年生 エネルギー制御科 SNS名【Sota.Y】
7/28生 美月の幼馴染 幼小中 高校別なのに同じ1浪して同じ大学で再会した 美月が好き みんなにバレてる 美月にはバレてない
西村所長 58歳 家庭教師事務所の所長
ふわふわとした雰囲気のオジ様 凄く子供好き 心を病んで辞めていく塾生を何人も見てもっと踏み込んだ教育をしたいと思い家庭教師事務所を立ち上げた。




