025 颯太とお出かけ
デートとお出かけの境目とは・・・
今日の夕食は、昨日、大翔の家から帰って来てから課題にも身が入らず眠くも無いので仕込み始めたポークカレーだ。しかも、ハンバーグまで仕込んでしまったので煌星は喜ぶだろう。ルーは朝に入れたので、太陽兄に頼んでおいたけどせっかく帰ってきたのでハンバーグを焼いて置いとく。
それからはバタバタとシャワーに入りさっぱりしたところで、冷房の効いた部屋でメイクをし直す。折角の夜のお出かけなので少し濃いめだ。服は、琴音と真央と会う時用にとっておいた黒のバイカラーの薄手のニットに少し青寄りの紺のロングスカートで、足元はミュールサンダルに履き替えた。
最近、琴音と真央と会えず着れなくてソワソワしていたので、今日は思いっきって着てみることにする颯太と2人なら気兼ねしなくてもいいだろう。
颯太から今出るとメッセージが届くのでいつもおろして貰っている場所まで歩く。いつものローファーは踵が5cmなのだが今日のサンダルは7cm。2㎝でも歩くの違うなと思いながらゆっくりと向かう。
待ち合わせ場所に付いて3分ほどで颯太の車が見える。ナイスタイミングな時間だ。スーッと目の前に止まるシルビアに近づき助手席のドアを明けると、目を丸くしてる颯太がいた。
「どうした?」
「・・・・スカート」
「そう!琴音と選んだから、琴ちゃんと会う時に着たかったんだけどねぇ~最近お忙しいので颯太に1番にお披露目してみました!写メは送った!」
「・・・・そっか。似合う」
「よかったぁ~。颯太はそーゆーの嘘つかないもんねぇ~!ダメなときはバッサリですもの・・・似合う頂きました!ありがと!可愛い服ってそれだけでテンション上がるよねぇ~」
「・・・・・だな」
映画館へ向かう前に食事をしようということになった!やっぱり映画館といえば!パスタチェーン店がいいと所望した!トマトニンニクパスタが食べたいと言うと、男と出かけてニンニク食う女・・・と颯太に爆笑されたのだが我々の間では良いでは無いかと説き伏せて美味しく頂いた。
レイトショーだが、さすがに金曜なので結構混雑している。颯太が電子チケットで購入したらしいのでスルスルと館内に入ると颯太に案内された席は、ゆったりとした2人用のソファーの席だった。
「なにこれ?」
「あ?カップルシート」
「へ?なんで?」
「位置が最高!」
「あぁ。確かに」
この映画館のカップルシートは真ん中の真ん中より少し後ろでゆったり何個かある。その中の真ん中のカップルシートだった。カップルシートとカップルシートの間は少し離れていて通路になっている。隣を気にしなくていいのもいいし、凄くスクリーンが見やすい位置だ。何故か、先に颯太が座ると、んっと何故かその膝の間を指す。
「ん?」
「ここに座るんだよ!」
「え?違うでしょ?」
「美月、カップルシート座ったことあるの?」
「無いけど・・・」
「はい。座る!」
あまりに当たり前の様に言われるので違和感を感じつつちょこんと、颯太の膝の間に座る。ナニコレすごく恥ずかしくない?そして、我々はカップルじゃないよね?とダラダラと焦る身を小さくする。
すると、背後の上の方から笑いを堪える音が漏れる。くっそ。してやられた。後ろをふり向き低い声で呼びながら睨むと颯太は笑い顔で謝って来た。
「ソ~タァ~」
「悪い!素直すぎねぇ?ふはっ・・・ふっふっ。誰でもにしたら駄目だからな!」
「ぐぅ~。颯太だから座りましたが?」
「・・・・・・・・・・まぁ。俺で慣れてみん?」
「は?何を?」
「美月さ。大輝と響以外の男子が近づくと、体強張って固まるだろ?」
「・・・・・へぇい」
「逃げれるくらいには慣れれんかね?」
「颯太で?」
「そー」
「うーん」
「嫌か?」
「うーん。颯太では無理かも?」
「ん?」
「この場所、恥ずかしいんで移動していいですか?」
「あ?あぁ」
美月が1度立つと片端に颯太も寄り、普通に隣に座る。そして、颯太に向き直ると一応小声で話す。まだ、予告前だけど映画館は何故か小声になる美月だから距離も近くなる。
「えーとですねぇ。さっきの座り方もものすごく恥ずかしいんですが、別に颯太だと嫌悪感とか無くてですね。意味ないかも?」
「ふ~ん」
「大和さんとか中村さんとか、隣の席に座るだけでも嫌なんだよねぇ~」
「あー大和さんは嫌な人になったの?」
「んーなりました。今日で完全に駄目になった」
「そりゃ、ご愁傷様です」
「ん?」
「いやっこっちの話。じゃあ、触れるのは?」
「ん?」
「俺ら、車の乗り合いでこう横に座ったりは多いから、近くに座るのとかは慣れてるかもだけど、手握るとか、肩組むのは出来る?」
「肩を組む?とは?」
「あーアレだな」
隣の隣の席のカップルが、男性が女性の肩に腕を回してくっついている。おぉ!カップル!と思うがアレを颯太とするの?なんで?
「え?なんで?」
「だから、嫌なやつに近寄られた時逃げる為の訓練」
「あっそーゆーことか!」
「どうゆうことかと思ったんだよ」
「いやぁ~最近、彼女作らないから人肌寂しいのかと思って」
「無差別にくっつきたいと思ってると?」
「うん」
「・・・・正直かっ!そんな節操無しじゃねぇーわ!」
「でも、一時期、月に2人彼女交代してましたよ?」
「うぐっ・・・そんな時もアリマシタネ」
「アリマシタヨ」
どやっとした顔で美月が微笑むと、颯太が睨んでくる。図星を言われて怒るのは違うぞぉ~と思うが図星を言われたからこそイラっとするかもとぼんやりと考える。
「美月の意思なしでは触りません!」
「それは、助かります」
「んで、肩組んで映画見るか?」
「え?嫌だけど?」
「・・・・・・なんで?」
「映画に集中したいので映画中は嫌ですね!」
「・・・・・そっか。確かに。じゃあ、始まる前までだな!」
「え?」
「さっきの、膝の間に座る?肩組む?」
「えーなにその2択!」
颯太の顔を睨むがニヤリとしているだけだ。取り下げる気が無いらしい。颯太は颯太なりに最近の美月の嫌な体験を気にしているようだ。
多少、遊んでいる感はいなめないが・・・確かに、ふいに来られた時に体が固まるのには自覚がある。飲みの席に出るのであればまたあのような場面は訪れるかもしれない。これで、その対応が出来るのかは謎だけど・・・何もしないよりはいいのか?
「意味あると思う?」
「わからん」
「わからんのかい!」
「でも、ふいに来られて固まるのはどうにかしないと・・・何されるかわからんぞ?男から接近されることに慣れて、嫌なものは反射的に避けれると良いんだけど・・・」
「颯太は心配性のお兄さんだなぁ~でも、正直助かる!自覚してなかった。んじゃ肩組む!予告までね」
「おっ!おうっ!」
「なんで、今狼狽える!」
「なんでもねぇ」
颯太の傍に美月が寄って、颯太が肩を回す。なんか、温い。これは、駄目かもしれない。コテンと頭を颯太に預けると、一瞬ビクッと颯太が動く。重かったのかもしれない。
「ねぇ。颯太」
「ん?」
「これは、良くないよ」
「へ?」
「なんか、温くて眠くなる・・・」
「ぶはっ。寝んな!緊張しねぇの?」
「しないねぇ~」
「しないかぁ~。ふ~ん」
「私の体は颯太に慣らされている」
「んぐっ」
「颯太、変な音が漏れてる」
「おまっ!美月が変なこと言うからだろ!」
「颯太」
「なっなに?」
「五月蠅い。予告始まる」
「・・・・・はい」
それからは、夏休みや秋に上映開始される映画の結構多い予告が終わるまではその体制で涼しい空調、暗い照明に温かさである。かる~く睡魔と闘い。
映画の本編が始まる時にはスルっと離れ、颯太とは反対側の肘置きにもたれかかり映画に集中した。映画は、本当にこのシリーズのクライマックスだけあって豪華で凄かった!面白かったぁ~といいながら映画館を出るとやはりそのままは帰りたくない。語らいたい。
どっかでお茶しようという事になったので、《トラモント》に行くことになり颯太が連絡して2人席を確保した。どうやら、前回行って気に入ったようで連絡先を登録していたみたい。良かった!良かった!
◇◇◇◇◇
「こんばんわぁ~」
「おぉ!美月ちゃん!今日はスカートだぁ!可愛いぃ~」
美月が挨拶しながら《トラモント》に入ると、ダイチが挨拶してくれる。やっぱり服装も褒めてくれる!流石、サービス業の鏡!美月は少し照れ笑いになってニコッと微笑む。その後ろから、颯太が予約の名前を告げるとダイチが反応する。
「こんばんは。予約した山崎です」
「あっ!さっきの電話の!美月ちゃんたちだったんだね!えっと、山崎ソータ君?」
「あっ。はい。颯に太いで颯太です」
「OK!今度から颯太で予約していいからねぇ~」
ダイチが颯太に返事をすると、カウンターの奥からユウさんが顔を出す。服装も相変わらず高評価!自己肯定感上がります。本当にありがとうございます。そして、今迄座った事の無い席に案内される。
「いらっしゃい!ソファーの2名席で良かったかな?ロングスカート可愛いね。似合う」
「え?あのカップルシート?」
「あはは確かに、カップルシート!」
「すみません。今、映画見てきたんでつい」
カップルシートに引っ張られて、立ち話をしているとキッチンの出入り口からヨータさんも顔を出す。いつもの頼むのかい?って目がキラキラしてる。小腹は空くかもしれないけど、夕食にしっかり目のパスタを食べたのでパンはいらないかなぁ。と思ってるけど・・・。
「おぉう!ほんとだ!スカート!可愛い!オレは短い方が好き!しかし、今日はだいぶ遅い時間だね!飯は?」
「ご飯はたべましたぁ!飲み物と軽食頼むかもぉ!今日はノンアルです!」
「ん?美月は飲んでいいよ?」
「え?颯太飲まないでしょ?」
「まぁ~車あるし」
「じゃあ、いいよ」
「ん~飲むか?」
「えーここから代行いくらするかなぁ?」
「あーそこそこ遠いか?」
「うん。遠い!いいよ。ソフトもうまいよ?颯太の好きなアイスカフェモカに生クリームが乗ってるよ」
「マジ!んじゃそれにする!」
「あはは」
颯太と美月のやり取りを見ていた《トラモント》メンバーににっこりと微笑まれる。
「ははっ仲良しだねぇ~」
「本当に」
「まぁ。座りなさいな。珈琲には何がいいかなぁ~甘いものに甘いものいける?」
カウンターでもいいと言ったがここでも、カップルシートに座らされた。まぁ、颯太なので嫌では無いが知り合いの前でカップルばかり座る席に案内されるのはなかなかに恥ずかしい。でも、座って会話をするとその恥ずかしさはスルッと解けてしまう。
「そうだ!真央は、このフレンチトーストが好き」
「わぁっナニコレ。食パンくりぬいてる?」
「そうそう、軽く繰りぬかれて卵液に浸された半斤の食パンをオーブンでじっくり焼いてその上のアイスが乗せられるの」
「おぉ~うまそぉ~」
「本当に甘いもの好きだねぇ~少しなら手伝えるけど・・・流石にこの時間はヤバい?」
「美月、明日予定ある?」
「ん?夜に家庭教師くらい?」
「んじゃ、これ食って朝までドライブ行こうぜ!そしたら、ヤバくないと思わねぇ?」
「え?そうなる?」
「食って、そのまま寝るからヤバいんだろ?」
「えーそーかなぁ?」
「まぁいいけど!カラオケでもビリヤードでもいいよぉ~!」
「おぉ!ビリヤードもいいな!あーカラオケも捨てがたい」
颯太と注文前から盛り上がってるとダイチさんが注文を取りに来た。苦笑いしながら・・・。
「君ら色気ないね」
「ふふっ」
「ははっ・・・」
「甘い物の話してる女子会なのか。遊ぶ話してる男子なのか・・・」
まぁまぁと言いながら、颯太はアイスカフェモカ、美月はノンアルブルータートルを注文した。ブルーキュラソーシロップ、レモンシロップ、トニックウォーターのさっぱりしたノンアルカクテルだ。色も真っ青で綺麗で、味はちょこっと甘味の付いたほぼレモン炭酸水!レモンも刺さってて可愛い。もちろん、バケモノのようなハニーフレンチトーストも頼んだ。結局パンを食べる。
「ヤバい楽しみ!」
「あははそれは良かった!」
「・・・・そういやなんで、この店教えてくれんかったん?結構、通ってるって事は去年にはすでに常連よな?」
颯太は先ほどまでの甘いものにワクワクする顔を、神妙な顔に変えて聞いてくる。うーん。なんでだろう?と美月が考えていると颯太は続ける。
「好きな人とかがいる?」
「ん?」
颯太はそう言いながら、《トラモント》のスタッフを見やる。美月の眉間に皺が寄る。どういう事だ?今、美月の中で琴音と真央との隠れ家みたいな感じだからかな?とか考えていたのでふいに声を顰めて聞かれた事に何のこと?となる。
「いやっ。店員さんの中に好みの人がいて、男友達は連れてきたくなかったのかな?とか思ったり?」
「なんなのそれ?それに、何でもかんでも相変わらず恋愛に絡めるねぇ~」
「ん~美月の好みが知りたい」
「ん?美月さんに彼氏を見繕おうとしてる?」
颯太の発言に美月はまた眉を顰めて、眉間に皺が寄る。美月の言葉に颯太は一瞬間を置き、溜息をついて違うと言う。
「・・・・・・・はぁ~・なんで、そうなるかな・・・まぁいいや。別に俺は彼氏の斡旋はしません」
「そう?ならいいけど」
ホッとする美月を眺めつつ、颯太が頭をポンポンした後そのまま撫でる。これも、スキンシップ関連なのだろうか?ん?っと目線だけ颯太に向けると、何故か顔を思いっきり反対側に逸らされた。なんなんだ。そして、ドでかいため息を吐かれる。本当になんなんだ。
その日は、凶悪なハニーフレンチトーストが細身の颯太の中にどんどん消えて行くのを眺めつつ映画の良かったシーンとか気になるシーンの話をして盛り上がり《トラモント》の閉店まで居座り、腹ごなしにカラオケに行った。
颯太に、「美月さん!密室に男と二人ですよ!」と言われたが「颯太じゃん?」と言うと何故か盛大な溜息を着かれた。その後も、なんだか髪の毛をいじってきたり、頭を撫でて来たり、手を握ったりと軽いスキンシップの多い颯太だった。
優しく温かいので差し当たり嫌でもないが、人肌恋しいのかなぁ~そろそろ彼女作りたくなってきたのかなぁ~と思う。颯太に彼女が出来ると、送迎もだがこういう風に気軽に二人では遊びに行けなくなるのかと美月の方がなんだか寂しくなった。
読んで頂きありがとうございます!
颯太が仕掛ける回のはずが、何故か返り討ちに合ってる・・・。
無自覚に心を許してる人ってこわいよね・・・
お次は週末ですので明日の3時更新です☆
~登場人物~
森 美月21歳 1浪大学2年生 ITビジネス科 SNS名【森美月】
6/12生 何かと人に相談されがちな事が少し気になる今日この頃 体系にコンプレックスを持っている 男兄弟の真ん中 ブラコン 敢えて鈍感 年下に甘い
山崎 颯太20歳 1浪大学2年生 エネルギー制御科 SNS名【Sota.Y】
7/28生 美月の幼馴染 幼小中 高校別なのに同じ1浪して同じ大学で再会した 美月が好き みんなにバレてる 美月にはバレてない
林 陽太32歳 『トラモント』のオーナー キッチン担当
高身長濃いめの顔の陽気なアラサーなお兄さん 失言が多い
中島 侑29歳 『トラモント』店長 キッチン・バーテン兼用
中性的な美人なお兄さん 怒らせると1番怖い
福田 大智24歳 『トラモント』バーテンダー
糸目の雰囲気イケメン(真央談)お話上手で褒め上手




