022 説教と意外な救世主
もち、怒られます。
でも、返り討ちされます。
散々にみんなに怒られたが、月曜日は講義は詰め詰めで忙しい。午後の講義が終わりお昼休みの事など忘れて車に戻り、スマホのカレンダーを開いて課題の予定やプレゼンなどの予定を入力しながら美月は颯太を待っていた。助手席のドアが開くと同時に、聞きなれた声が一段低く責めるようなに耳に入る。
「おいっ」
「お疲れぇ~。珍しく遅かったね!」
「あぁ。ちょっと捕まってな」
「そっかぁ~。ん?荷物後ろに載せないの?」
「ちょっと待て!俺のおいっはスルーか?」
「ん?なに?おいってよく言うじゃん?とりあえず、荷物後ろに載せて入りなよ。冷気逃げる」
美月が車内の冷気が逃げると文句を言うと、颯太は渋々一旦話を止め、いつも通りに後部座席に荷物を置いて助手席に座る。最初からそうすればいいのにと思いつつもなんだか、お説教スタイルなのでとりあえず出発はしないで待っておく。
「昼間の事、駿と輝から聞いたぞ!何してんだよ?美月、男子と接触とか駄目じゃなかったか?」
「あっあー。んーー。輝だから大丈夫だった?かな。それにめっちゃ気にしてるんだもん!気まずくなりたくないので、私から仕返しすることにしました」
「『仕返しすることにしました』じゃねぇ~よ!はぁ~輝だから良かったものを・・・」
「えー人は見てますしぃ?あまりにも気に病んでて嫌だったんだもん!美咲とも仲良くなれそうな男の子は貴重なのですよ!今後、一緒に遊ばせたい!」
「ん?くっつけようとしてる?」
颯太の言葉に、美月は眉間に皺を寄せて口が「あ?」の口になる。ここは、きちんと言っておかねばなならない。
「してない!友人!なんで、すぐに恋愛に持って行くかなぁ~君みたいに彼女をとっかえひっかえする人は少ないのよ?」
「うぐっ」
「ふふん!」
「今は、してねぇ」
「そうだね?ここ最近、彼女の話聞かないや。どうした?・・・ん?この送迎のせい?え?辞めるべき?」
美月が指摘すると颯太が今はしてないと言う。そういえば最近はめっきり彼女が出来た。別れたという話を聞かない。美月とのガソリン節約のせいかと思って聞けば颯太様は颯太様らしい理由を言う。おモテになることで。
「いやっ。それは関係ない。俺が、その気がないだけだから・・・」
「ほっほぉ~う。その気になればすぐに彼女が出来るのですね!はぁ~ウラヤマ!」
「羨ましいの?美月も彼氏ほしくなった?」
「うんにゃ。言ってみただけ!」
「・・・・・」
「ふふっ。私は仲のいい友達がいるだけで幸せですよぉ~」
美月はハンドルに体を預けて、顎をのせ助手席の方を向いて頬を染めながら嬉しそうに微笑む。最近は、友達が増えて楽しい。高校の時とは大違いだ。同じ科の子たちとも仲良くなってきたが、エネ制の子らとも響のお陰で友達が増えているのだ。
「・・・・・。はぁ~左様ですか。それは、よござんした」
「よござんすよ!」
「ってか、ちげぇ~!」
「ん?」
「男子に抱き着くなよ!」
「え?私、痴女じゃないから普段はそんなことしませんよ?」
「でも、したじゃん!」
「いやいや輝だし?」
「輝ならいいのか?(2回もハグしてるし)美月、あーゆーのがタイプ?」
「だ~か~ら~!なんで、すぐにタイプとかなるの?可愛い後輩じゃん!颯太も好きなタイプでしょ?駿とか輝とか?楓と花音もしゃべりやすでしょ?」
「まぁ。付き合いやすい」
「一緒です!」
「それだけ?」
「それだけ!颯太、なんか・・・うるさい!」
「あっごめん」
「太陽兄みたいだよ!」
「・・・・・うん。気を付けます」
なんだか神妙な顔になったが、話は一旦の終わりを迎えたようなので、美月は車を走らせる。颯太は黙ったままだけど、美月は颯太が彼女と長続きしない理由はこれでは無いかと思い立つ。
「ねぇ。颯太」
「ん?なに?」
「颯太がフラれるのそーゆーとこじゃないの?」
「んぁ?」
「ほら、なんか。お兄ちゃんみたいに口うるさいからさぁ~」
「やってねぇ」
「ん?」
「彼女に口うるさくはない」
「え?そうなの?でも、なんでフラれるかなぁ~。颯太、良い奴だし、面倒見良いし。結構まめじゃん?良い彼氏だと思うんだけどなぁ~」
「・・・・・」
「え?友達にだけとかないよね?」
「はぁ?」
「ほら、まめなのとか付き合う前だけで付き合ったら『釣った魚に餌やらないタイプ』とかなの?うわぁ~嫌だわぁ~」
「違う!俺は変わらない!」
「そっか。ん~なんでだろうねぇ~?」
「美月は何を気にしてんの?」
「え?友達の恋路?」
「なんで?」
「幸せになってほしいじゃん?友達には」
「美月は?」
「え?私はいいよ」
「俺も美月には幸せになってほしいけど?」
「あー。ねー」
美月が言葉を濁すと、颯太が言いにくそうに、言いたくなさそうに話を切り出した。
「大和さんがさぁ~」
「ん”?」
「美月誘って飲みに行こうって言われたんだけど・・・」
「えー。あー。んー。」
「どうした?」
「んー。えーと。嫌かな?」
「え?なんで?珍しい。今までは大丈夫だったじゃん?」
美月が渋い顔で、珍しく断りたいなぁ~と遠回しに言うと。不思議そうに颯太が聞いてくる。颯太は大和さんと美月をくっつけたいのか?と美月は思うが・・・嫌なものは嫌なので話を続ける。
「んー。中村くんはなんて言ってた?」
「あっ!金曜?」
「そうそう」
「大和さんが、美月に壁ドンしてたって。え?結構ヤバいやつ?」
「壁ドンのヤバいやつって何?あーと。それだけじゃないんだよねぇ~」
「はぁ?美月何も言ってなかったじゃん!」
「うーん。言いたくなくて・・・」
「はぁ?なんか、された?殴ってくるべき?」
「おうっ!急に物騒。未遂なんだけどさぁー。離れてって言ったらさ。頬にキスしてって言われてさ」
美月は思い出してしまい、信号待ちなので腕をさする。正直今思い出しても気持ち悪い。流石の颯太も絶句しているようだ。うん。分かるよ。分かる。私にそんなことすると思わないじゃん。うん。でもね~。
「・・・・・・・・はぁ?」
「まぁ。酔ってたんだろうけどさ・・・」
「・・・・・」
「気持ち悪かった・・・」
「おっおう・・・。だな!きめぇ~」
「なので、こう、大きい飲み会で会うのは、まぁ。別にしょうがないけど、個人的って言うの?少人数は嫌かなぁ?って」
「OK!駄目って言っておく」
颯太が即決で、了承してくれてホッとする。感謝を伝える。まだ、SNSのIDを交換してなくて本当に良かったと思いながら颯太が対策まで言ってきた。ん?こんなに早く切り替えるってことはくっつけるとかの意図は無かったのか?とホッとする。
「ありがとぉ~。大和さんは、大輝か颯太経由じゃないと連絡先無いからそーしてもらえると助かる。直で誘われると断りにくいし・・・」
「あー。大輝と雄大にID勝手に教えるなって釘指しておく。輝と駿にも教えた?そっちも言っておかないと」
「おっおう。まぁ前科があるからね。そーして貰おうかぁ。自分でお願いすべき?」
「輝と駿は、美月が言ってもいいけど、大輝と雄大は俺から言うわ!強めに!」
「あはは大輝、信用無っ」
「無いだろう?1回やらかしてるからな!」
「確かに!」
二人で、大輝は良い奴なんだけどこーゆーこと困るよなぁ。って会話をしていると、颯太の家に着いた。明日は颯太の車でってことでお願いして家へ帰る。
先ほど言っていた、IDを教えないでねっと言うメッセージを輝と駿に送ると当たり前じゃないですかと返って来た。そう。当たり前のことを教えちゃう奴がいるんです。
この画面、大輝にスクショで送っていいかも聞いてみようかと思うが、こんな学年初期に後輩に冷たい視線で見られても可哀想だと思い。辞めてあげる。今度会った時にこれが普通の反応ってチラッと見せようと思う。
今日は、バイトも無いし急ぎの課題も無い。お風呂入ってから御飯が食べたいが今日は後回しにする。昨日のうちに、お母さんにさばいて開いてもらったアジにパン粉を付けてアジフライにしようと企んでいた。揚げ物は汗かくからもう食べてからシャワーすることにする。
添え付けは、無限キャベツにしようとせっせとキャベツの千切りをして洗い水を切る。耐熱のボウルに千切りキャベツを入れてツナ、鶏がらスープの素にマヨネーズとごま油を入れる。ラップをふわっとかけるとレンジで加熱して、全体をなじませるように混ぜ胡椒もふる。
これでは、野菜が足りないのでスープは根菜ときのこが盛りだくさんの豚汁にする。種類を入れるともりだくさんになるのだが、明日の分もぉ~と思っても煌星に全部食べられている時があるので、期待しないで今日の分と割り切りつつたくさん作る。
後、1品出来そうなので、トマトも切る。薄くスライスして、その上にミックスチーズをパラパラかけてラップをする。これは、食べる直前にレンジで少し煮えるくらい温めてスイートチリソースをかけると、うまいのだ。今日は、みんな早く帰って来たので揚げたてアジフライを家族で食べれて良かった。
◇◇◇◇◇
翌日の火曜日、午後1の授業がお互い休講になったとお知らせがあったと話しながら学校へ向かったので、お昼休みからカフェテリアで共通の課題をしようとなった。颯太が休講なんだから、他のエネ制の人も休講だったりすることを忘れていたわけでは無い。
「美月ちゃん。オレもここいい?」
昨日、関わりたくないなぁと颯太に話したばかりの大和さんが目の前にいる、カフェテリアのテーブルは正方形で1辺に1脚の椅子が配置されている。左隣には颯太が座っているので、右隣をご指定なのである。颯太も自分の隣に座ってくれとは不自然で言えないでいる。
どうしようかと、颯太に目をやるが颯太も困っている。こう見えて案外年上に弱い。兄姉に色んな意味で可愛がられている颯太は、年上になかなか逆らえない。
本当に無理な事は無理だと言えるけど、ムキになって止める事ではないこの状況が1番苦手なパターンだろう。美月だってそうだ。しょうがないかぁと、いいですよっと声を出そうとした瞬間、声を横から遮られる。
「あー美月ちゃーん!久しぶり!隣イイ?」
空気を読めない?いやっ読まない山下七海である。いつもなら、颯太が睨むと離れる七海だけど、今日は凄くいいタイミングで来てくれたので颯太が睨む前に席を進める。
「七ちゃん!七海ちゃんは食事?どうぞ!座って!」
正直、まだあの気持ち悪さは残っていて。あまり大和さんには近づきたくない。大和さんには悪いけど、七海に隣を進める。
七海の押しの強さでその隣まで追いやられる。つまり美月の向かい側の席だ。颯太が大和さんどうぞと言い座らせる。
そして、七海は颯太は視界に入れないで、美月を見てニコニコと大和さんをチラチラ見る。あれ?面識なかったのかな?と思いながら紹介する。
「あっ大和さん!会ったことないですか?こちら、陽菜ちゃんの幼馴染の山下七海ちゃんです。インテリアデザイン科なんです」
私も、そんなに会ったことないのでこれ以上の情報は自分からお願いしますと七海を向く。七海は嬉しそうに大和さんを向いて挨拶をする。
「初めまして!山下七海です!美月ちゃんの友達です。私も仲良くしてもらえると嬉しいです!」
「どうも、前田大和です。陽菜ちゃんと同じ科です」
あら。私の友達だったのね。と美月が思っていると、七海はガンガン大和さんに話しかける。
「大和さん、以前から素敵だなぁ~って思ってました!キャー!つい何でも正直に言っちゃうんですぅ。私。あー恥ずかしい。あっ!大和さんまだ注文してませんね!私も、昼食買いに行くんで一緒に行きましょう!」
いつもの七海ワールドを披露しながら立ち上がると、大和の腕を取ってぐいぐい腕に絡みつくと体を押し付けて注文カウンターへ向かう。
美月と颯太は、にこやかにいってらっしゃいと言って送り出す。心なしか大和さんの顔は助けてと訴えている気がするが、本人が拒否しないので七海は嬉しそうに連れ立って行った。
「なんか、凄いね・・・」
「写真見てから張り来ちゃって」
美月が言うと、颯太では無い声が背後からした。どうやら、七海に置いて行かれたらしい陽菜が立っていた。
陽菜は後ろのテーブルから椅子だけ持ってきて美月と颯太の間に座ると声を落として七海の行動の理由を話す。
「新歓の写真。響君たちが共有してくれたんだけど・・・それに、馬場さんが大和さんにしなだれかかってる写真とか、川口さんが手をにぎにぎしてる写真が出てきちゃって・・・」
「おぉ!七海ちゃんは以前から?」
「そうなんだけど、私も大和さんとそんなに話ししないし、颯太さん経由で話しかけようか?って聞いたけど、七海近寄らないからさぁ。美月ちゃんに紹介してもらおうとしてるんだけど、美月ちゃんも、大体颯太さんか美咲ちゃんといるから・・・」
「あー美咲も苦手?」
「ほら、この・・・美月ちゃんの・・・えーと。七ちゃんが・・・んーと。胸を揉んじゃった時があるじゃない?」
言いにくそうにしていた陽菜が、後半早口で告げる。あーあったななーと軽く血の気が引く。
「それから、二人がめっちゃ睨んでくるって・・・ね」
「そらそーだろ。友達に嫌がることする奴近づけるかよ」
美月が返事を言いあぐねていると颯太が返す。大変心強いです!そして、美咲もそうなのか・・・友達思いな友達ばかりで嬉しい。
「そう!私も当たり前じゃん!って言ってたんだけど、まぁちょっと分かんない七ちゃん節を言われまして・・・大きいからいいじゃんとか何とか・・・」
最後辺りは、陽菜もよく意味が分からないようで、小声で早口になっている。なんか、すみません。
「なんか、お疲れ様です」
「いえいえ。それで、写真見たばかりの意気込んでいるところに!」
「俺らが大和さんといるところが見えたと?」
「そう。美月ちゃんに大和さん紹介してもらおうと突撃していったの。颯太さんいるけど、背に腹は代えられないとか言って」
「あーそう」
颯太はどうでもよさそうに素っ気なく返事するけど、まぁ興味ないんだろうけど・・・美月は気になる事を陽菜に聞くが意外とドライに返された。
「じゃあ。私は七ちゃんをアシストすればよいと?」
「え?しなくていいんじゃないかな?もう、紹介してもらったからガンガン行くと思う」
美月はなんだかよくわからない理論に面白くなって紹介の有無を聞く。だって、ガンガン行けるなら最初からいけばいいと思う。
「あはは紹介は必要なの?」
「そう、なんか知らないけど、友人の紹介は必要らしい。接点無いのに声かけるのはナンパらしいの!男からならともかく、女子からナンパなんてってとか言ってました。本当に意味わかんないんだけど・・・」
「うん。大丈夫。私も分かんない」
「俺もわからん」
「「「ねぇ」」」
3人で渋い顔になりながら同調する。逃げるなら戻って来たばかりがいいかもと言って陽菜はここまで来たからと南棟の食堂に向かった。せっかくなので、お魚食べたいと言っていた。陽菜は割と一人で行動を苦痛じゃないタイプなので美月とも気が合う。いってらっしゃいと見送る。
颯太と美月も食事はほとんど終わりかけだったので、手早く片付けて二人が戻って来たところで図書館に資料を探しに行くと席を立つことにした。アシストいらずなら、いないことが1番のアシストだからね。
読んで頂きありがとうございます!
~登場人物~
森 美月 21歳 1浪大学2年生 ITビジネス科
6/12生 何かと人に相談されがちな事が少し気になる今日この頃 体系にコンプレックスを持っている 男兄弟の真ん中 ブラコン 敢えて鈍感 年下に甘い
山崎 颯太20歳 1浪大学2年生 エネルギー制御科 SNS名【Sota.Y】
7/28生 美月の幼馴染 幼小中 高校別なのに同じ1浪して同じ大学で再会した 過保護 モテ男 彼女と続かない
前田 大和23歳 専門2年卒業後 大学2年生 エネルギー制御科
5/12生 専門学校卒業後の入学なのでみんなより少しお兄さん 色白神経質そうな容姿 女の子に弱い 酔うと積極的?
山下 七海19歳 大学2年生 インテリアデザイン科
3/21生 他科の知人 陽菜の幼馴染 メンヘラ気味の自称サバ女 無神経 女から声をかけるのはナンパは嫌らしい 七海節があると言われている(陽菜談)




