015 後輩男子に謝っておく事
後半独り言の様な響くん視点が入ります。
朝起きて服を選んでシャワーを済ませる。先週の飲み会で少し勇気を出して着て出かけたおかげで、学校にも琴音プロデュースの服を着れるようになってきた。今日は、脇下でしぼりがあるフレアTシャツに、黒のタイツ、五分丈のデニムのショートパンツにした。
お母さんが作ってくれた朝ごはんをありがたく食べ終わりスマホを見ると、SNSの通知が1件。昨日、葵ちゃんの授業が終わって帰ってから送った大翔のところに家庭教師行けるよというメッセージの返信が届いていた。
ヒロト『よかった。リクトもマイも喜ぶ。明日、よろしく』
なんだ。この可愛い思春期は!と思いながら身悶える美月を煌星が不審な目で見て、太陽兄が大丈夫かと心配する。
「大丈夫か?美月、何かあったのか?」
「あぁ。太陽兄。心配することじゃないよぉ〜!新しく受け持つ生徒さんがさぁ。煌星の思春期っぽいんだけど、煌星より凄く!すごく!素直で可愛いのよ!」
「辞めろ!俺の思春期の話はワスレロ」
「いやっアレは忘れんでしょ?」
「だな。忘れられないくらい長かった」
美月の生徒さんが煌星の様で可愛い話をすると、煌星が喚いた。そんな弟に兄姉は慣れっこだ。ちゃんとその要求を却下する。煌星はぐうの音も出なくなり、もくもくと朝ごはんを再開した。朝から3杯目の飯に正直ドン引きだ。
「大丈夫か?煌星と同じようってことは男子だろう?」
「うん。そうだけど、めっちゃ可愛い!悪態はつくけどすぐに打ち落とされてぐぬぬって顔してんのが可愛い!」
「変な遊びは辞めなね。逆襲に合うかもよ?」
「そうだね!あまり虐めないように気を付ける!ありがとう太陽兄!」
平和主義者らしい兄のアドバイスにハッとする。あまりに反応が可愛くていじり倒したいけど相手は思春期男子だった。身長は157cmの美月とほとんど変わらないけど、ブチ切れたら力では太刀打ちできない。兄に感謝をする。まだ、本質的に性格が分かってるわけでもないしね。
「あっ今日さ。優海が来るから!夕飯多めに準備してくれないか?」
「OK!OK!ん~何がいいかなぁ?優海ちゃんなら和食だよねえぇ~この間はがっつり洋食だったからねぇ~」
「あぁ。魚食べたいって言ってた!最近、やっと卒園、入園が落ち着いたけど・・・今年は初担任で家で魚を作る余裕がない。食べれてないってしょぼくれてた」
「今の時期ならイサキかな?煮つけがいい???」
「えぇ~煮つけ!がっつりしたのがいい!」
太陽兄と優海との食事の相談をしているのに、ちまちま煮つけから身を取って食べるのが苦手な煌星が横から口を出す。しょうがないなと思いながらレシピを考える。やっぱり、がっつりと言えば唐揚げだなと思って献立を立てる。
「んじゃ、御飯と豚汁と、イサキの煮付けと唐揚げ、肉じゃがと口直しに梅きゅうりとかかな?」
「おぉ~うまそう!優海も喜ぶ!」
「流石、みづ姉ぇ~天才か!?」
「あははOK!イサキときゅうりは無いから帰りに買ってくる。冷凍から豚バラと牛バラだしておかなきゃ!」
スマホのカレンダーに放課後買い物、イサキ・きゅうりと備考欄に書いて、冷凍庫から目当てのお肉を冷蔵庫に移動してから、学校へ向かう。
◇◇◇◇◇◇
颯太と車を別々にして2日目の水曜日、美月はどうしても話をしたいと思っている人物が南棟の食堂にいるという事で会いに来た。
「響君ごめん!」
「おっ?どうしたんですか美月さん」
学食で珍しく一人で何か資料を見ながら昼食を取っている宮崎響に美月は向かい側に座って頭を下げて手を合わせて謝る。
「新歓。私じゃ役不足かも・・・むしろ、遠慮した方がいいかも?」
「え?何でですか?」
「いやぁ。一昨日、そちらの3名様に苦情を頂きまして・・・嫌われてるかも?」
美月がなんとなくふんわりと濁して、新歓に行けないかもしれない理由を述べると響はますます不思議そうな顔をする。
「えぇ~美月さんに?」
「そう。別に彼女たちが悪いわけじゃないよ?私が勝手に嫌われてるから話し相手にならないんじゃないかな?って思って・・・」
「あぁー3人って派手な方の?」
「そうかな?お洒落さんでかわいい子ら!」
「あー颯太さん?」
「おぉ!なんでわかったの?」
「えぇ。まぁ。1,2年合同授業で色々と・・・」
「あはは!」
あの3人は何をやらかしているんだと思って思わず笑ってしまう。すると、あの日の|陽菜《陽菜》ちゃんに続き響君まで謝ってくる。
「なんか、すみません」
「なんで、響君が謝んの?大丈夫よ?」
「でも、美月さん絶対何もしてないのに言いがかりを受けてますよね?」
核心を知っていそうな響君の言動に、うーんと美月を悩む。でも、別に恋心はねぇ~しょうがないらしいよ?と思いながら自身の反省点を述べる。
「あー心当たりが皆無というわけでもなく・・・」
「ん?」
「先週、毎日颯太の運転だったり?金曜はボディーガードみたいなことさせて、一緒に飲んでるからね」
「えー?でも、それって颯太さんと美月さんの日常では?」
「まぁ。ボディーガード以外?」
「(ボディーガードも日常な気もするけど)」
「ん?」
「何でもないです。でも、新歓来れるならお願いしたいです!陽菜さんも同じ学年女子いないですし、後輩のあと2人の子がいるんで!その2人が少し人見知りなんですよ」
「そうなの?」
「はい。最初の席は俺が座席表作って決めるんで、その子たちと話して貰えたら嬉しいです。あとの3人は男子に囲まれてる方が良さそうなのでそうしますんで、遠くに離します。朔來さんがきてくれるんでしたっけ?」
「そう、美咲はやっぱ嫌みたい。他の子も用事が既に入ってる子とかバイトとか違う科に呼ばれてるとかもうすでに予定が入ってた子とそもそも飲み会が苦手な子多くて・・・。すまぬ!」
「いえいえ、急に声かけたのに来てくれる美月さんと朔來さんに感謝ですよ!」
「じゃあ、そのままお邪魔するでいいのかな?」
「何処に邪魔すんの?」
響との会話が終わりそうなので席を立とうとすると、すぐ真後ろから声が落ちる。近すぎる声に椅子を引くのを止めるが声で颯太だと分かりシッシッと退けとジェスチャーして立ち上がる。
「んで、何処に邪魔するの?」
「新歓だよ」
「新歓です」
響君との声がハモると、一瞬怪訝そうな顔になる颯太に美月は自身の役割をサラッと説明する。
「金曜日のか?」
「そうそう、新入生の女子の緩衝材役!」
「あ?いらんだろ?」
「あっ!そっちじゃなくて、二人の方です」
「・・・・・あぁ。あっちか」
「そっちです」
そっちとあっちで会話が成り立つらしい。あの3人とは大分タイプが違うのかなと思う2人との出会いも楽しみにしつつ美月は響に声をかけてビジ科へと向かう。
今日は母親が朝食と一緒に作ってくれたお弁当持参。美咲はいつもお弁当だし、朔來は他の子と食事に行ったので、飲み物を買いに行った美咲とビジ科の空き教室で待ち合わせをしている。
「んじゃ、新歓でね!」
とバイバイと手を振る美月の腕を颯太にガシッと掴まれる。おっ?と言う顔で颯太を見上げるとなんか変な顔をしてる。
「明日、車は?」
「別々で!家庭教師のバイト行く前にちょっと買い物あって」
「今日もじゃなかったか?」
「今日は優海ちゃんが遊びに来るから、優海ちゃんの好きなもの作る為に追加食材を買いに行くのよ」
「ふ~ん。相変わらず、兄の彼女と仲良しだな」
「まぁね。優海ちゃんはあまり会え無い私のお姉ちゃんみたいなもんだからねぇ~。んじゃ!行くね!美咲待たせると怖いんだよぉ!」
「あぁ」
美月がその場を去ると、美月が座ってた席に颯太が荷物を置くと響に相席の了承をとる。
「響、ここで食べていい?」
「はい。いいですよぉ~」
颯太は持参した弁当を開きながら、響に問いかける。
「美月。なんか変くない?」
「あぁー。まぁ色々あるお年頃ですからね!」
変な言いまわしをして誤魔化した響の笑顔に、ムッとしながらもこれ以上は、話さなそうだと諦める。颯太は、響が同人種だと思っているので、話さないぞって示したものは意地でも話さないと知っている。
「何か手伝うのあったら言って。今日から新歓までは空いてるからさ」
「マジですか!?助かります!買いだし一緒に行ってくれません?」
「全部一人でやってるのか?」
「集金は大和さんがしてくれてます」
「けど、景品なにしようかと思ってて。でも、みんなに話すと適当なことばっか言いそうで余計時間食いそうで・・・」
「あぁ。分かる」
あははと笑いながら弁当を食べる颯太が相槌をうつ。響は人好きする顏でニカッと笑うとホッとしたように颯太に笑いかける。
「颯太さんなら相談しやすいです!」
「分かった。今日行けるか?明日は美月次第かな・・・」
颯太は美月の去って行った方向を眺めながらつぶやくと、弁当に目線を戻し食事を再開する。
響は、大丈夫かな?とは思うが美月が黙っている以上、響に出来る事は今のところない。あまりにすれ違いそうなら手助けしようと思いながら響も残っている食事を平らげた。
お弁当も自作らしい目の前の『何でもできます』って感じの男が、去年の夏くらいから、彼女がまた出来たという話もなく番犬化しているのは、響だけが思っているわけではなくわりと周りにバレている。
入学してから夏休みが明けるまで、『この短期間に何人変わるの?彼女』っていうくらいコロコロ変わっていたのに夏休み空けてからそれがパッタリと無くなった。本命が出来たのなんて推して知るべしだ。
しかし、2人は仲がいいが進展しない。本命は別の誰かなと思ったこともあったが、響は良く話をするようになった美月が自分を恋愛から遠いところに置いている事にもだんだんと気がついてきた。きっと、この男が勝負に出られない原因かもしれない。
それなのに最近、美月の服装が変わった。この番犬には気が気でない一旦だとは思うが似合う服を着たいと言う人を止めることが彼氏ですらやっちゃダメだと思う。幼馴染が口出しなんて以ての外だ。今は、外野が何か言ったりする事じゃないなと思いながら相談されたらなんて応えたらいいんだろうかとお節介な事を考え始めた。
読んで頂きありがとうございます!
~登場人物~
森 美月21歳 1浪大学2年生 ITビジネス科 SNS名【森美月】
6/12生 何かと人に相談されがちな事が少し気になる今日この頃 体系にコンプレックスを持っている 男兄弟の真ん中 ブラコン 敢えて鈍感?
森 太陽 25歳 役場勤務
8/15生 優しいお兄ちゃん 大雑把?大らか?
森 煌星19歳 大学1年生 教育学部 日本文学科
2/3生 末っ子らしい人懐っこい性格 大食い 高身長 バレー部 今はバレーサークル
佐藤 優海23歳 保育士
4/27生 しっかり者のお姉さん 美月の事を気にかけているので美月も優海を気にかけてる
宮崎 響20歳 大学2年生 エネルギー制御科
4/10生 幹事をしがちな人懐っこい男の子 タイ人っぽい純日本人 エキゾチックイケメン
山崎 颯太20歳 1浪大学2年生 エネルギー制御科 SNS名【Sota.Y】
7/28生 美月の幼馴染 幼小中 高校別なのに同じ1浪して同じ大学で再会した




