011 中村雄大は何がしたいの?
色々ありましたが、冒頭のメッセ―ジの日です。
気が重い金曜日。講義と空き時間はディスカッション準備で忙しく、放課後の事は講義時間の間は考えなくて済んだ。しかし、今日の最後の講義を終えてパソコンルームから廊下に出ると、待っていた。
もちろん件の中村雄大が・・・笑顔で美月を見つけて手を振る。しょうがなく、美月も近寄っていく。
「美月ちゃん!」
「お疲れ様です。中村さんはもう終わっていたんですか?」
「そう、この時間の講師、最後の時間個別質問タイム作るから早めに終わるんだよね。鐘と共に退室出来てラッキーだけど!」
何処から突っ込んでいいかわからない。美月ちゃんとはなんだ?それからその時間は、分からないところを聞きに行く時間であって帰り支度をする時間ではないのでは?と思うが質問がなければそんなものかと思いなおす。ITビジネス科のある棟から出るように歩きながら何処で話をするのかを聞く。
「それは、いいですね!お話はカフェテリアでいいですか?」
「えぇー。それはちょっと、誰に聞かれるかわからないじゃん」
中村はそう言いながら、東屋が所々にある駐車場横の中庭に向かって歩く。そのままずんずんと駐車場に向かうので不思議に思い声をかける。
「東屋で、話すんじゃないんですか?」
「いやぁ~人通るかもしれないでしょ?」
「はぁ~。何処に行くんです?」
「アレ!俺の車。乗って!乗って!」
「え?」
美月が一瞬固まるも、中村は助手席のドアを開ける。美月が入らないので怪訝そうに見る中村に美月も答える。
「別の場所に行くなら、車出しますよ。何処ですか?」
「えぇ!ここまで来てるのに車取りに行くとか面倒でしょ?何処に止めたの?」
「B駐車場ですよ」
「遠いじゃん!後で、そこまで送るから乗って!」
「えぇ~」
「なになに!俺が美月ちゃんに何かすると思ってるの?自意識過剰じゃない?俺、七海ちゃんみたいな子が好きなんだよぉ~」
暗に、ダボTで体型を誤魔化しているお前は好みじゃなくて、スレンダーでフェミニンな恰好の美人が好きだと言っているんだろう。だけど、わざわざ相談相手に選んでおいてなんて言い草だとは思ったがここでごねて長引くことが面倒くさくなった。
「何言ってるんですかぁ〜。ただ、家方向なら帰りが面倒だなと思って言ったんですよ」
「あぁ!大丈夫すぐそこの《荒木公園》!乗って」
再度、車に乗れと言う催促に抗うのも面倒になり、美月はお邪魔しますと乗り込む。中村の車は黒のスカイライン色々手を加えてるらしく、色んなところからライトの光が眩しい。セレブめっと思いながら乗り込む。
中村が回って乗り込む前に、スマホを取り出しピン止めされている【月颯大】のグループ窓を開いてメッセージを打つ。
『なんか、車に乗せられた。荒木公園行くって』
すぐに既読はつかないけど、その窓をあけたまま膝に置く。中村は後部座席のドア開き荷物を置いて、何やらクーラーボックスを開ける音の後に、ブラックコーヒーとカフェラテをずいっと目の前に差し出してきた。
「どっちがいい?」
一瞬驚くがブラックコーヒーを受け取る。中村はふーんと一言言ってカフェラテをボックスに戻し自身もブラックコーヒーを取り出し運転席に座った。
「ブラック飲むんだね美月ちゃん!」
「あぁ。うん。あまり甘い飲み物は得意じゃなくて、気分わるくなるんですよ」
「えぇ~そうなの?女の子だから甘いのかなぁ?って思ってた!食べ物も駄目?」
「食べ物は、甘さ控えめの物を少しなら大丈夫ですよ。あまり砂糖が合わないらしくて・・・」
「へぇ~甘いもの食べないんだぁ?」
そう言いながら中村は、美月を全身上から下へ眺める。美月はあらかたその体系でとか思っているんだろうなと思いながらも中村の無駄な話に付き合うつもりを失って本来の話に水を向けた。
「そうなんですよ。それで、相談って何ですか?」
「えぇ~早くない?ってか何で敬語?美月ちゃん、颯太さんと同じ年なんでしょ?俺、まだ19歳だよ。タメ語でいいよぉ~」
じゃあ、貴方が敬語で話をしては?と思いながらも美月はぐっとこらえる。高校時代はスマイルを0円で売っていたのだ。そこで培った笑顔を作って答える。
「そんな、ほぼ初対面の人に年下だからとタメ口では話せませんよぉ~」
「えー先週会ったじゃん!颯太さんはタメ口だよぉ~」
「まぁ。会いましたけど、アレだけじゃないですか。話もしてませんよね?」
「えー去年も、合同飲み会で何回か会ったよぉ~」
「はぁ」
正直本当に面倒くさい。帰りたい。車を走らせているから前を向いているが止まったらこっち側を向いて話しそうな中村に美月が辟易しているとスマホがぶるっとなる。中村は気にせずそのまま話始める。
「響とは仲よさそうだったじゃん!」
「響くんは大輝と仲いいので、良く飲みに行ったりしますよ。それに、私もですけど彼も幹事役が多いので情報交換を良くしているので話しますし」
「あぁ~あいつ顔広いもんねぇ~イケメンだし!」
「はぁ」
「美月ちゃんもあーゆーのが好み?」
「好み?」
「響モテるんだよぉ~ID科とかHB科とかの女子からも話しかけられてよく飲み会してるよぉ~軽いんだよなぁ~」
「まぁ。社交性ありますよね」
「えぇーアレ、社交性って言っちゃう?軟派でしょぉ〜。颯太さんも顔は硬派っぽいけど、意外に誰とでも話すよねぇ〜?颯太さんもモテモテだよねぇ~」
「はぁ。まぁ見解は人それぞれなんで、私は響君に好感を持ってますし、颯太とは幼馴染で仲がいいです。中村さんは響君や颯太がお嫌いなんですね」
美月の声のトーンが一段低くなった事に少しだけ慌てた様子で雄大は声が大きくなる。社内でその声量はうるさいなと思う。好感度は皆無だ。
「えぇ~嫌いじゃない!嫌いじゃない!なんで、俺、悪者みたいになんの?」
「別に悪者とはおもってませんよ。人の好き嫌いなんて本人の自由です。中村さんがお決めになる事なんで、私には関係ありません。いいとも悪いとも私は思いません」
「えぇ~美月ちゃん。硬いなぁ~もっと柔らかい感じの人かと思ったぁ~」
「そうですか?私こんなもんなんで相談辞めるなら学校に戻って下さい」
仲の良い友達を色々言われて流石にイライラしてきた美月は端的に帰せと要求する。流石に焦ったのか中村は言い訳をする。
「いやいや、なんかごめん!俺悪い事言ったのかな?言ったんだよね?ごめんね!でも、話は聞いてほしくてさぁ~ほんとごめん!相談!相談の話しよ」
お前が散々いらないことを話したんだと思ったが、公園の駐車場にはついてので、やっと相談する気になったような中村雄大に小さな溜息をつくと話を促す。
「私、うまい事アドバイスとか出来るかわかりませんが、話は聞きますよ」
「ありがとぉ~。美月ちゃんやっぱ優しい!えっとねぇ!ほら、七海ちゃんってモテるじゃん?だから、何か有利な情報ほしくてさぁ~!美月ちゃん、七海ちゃんのタイプの人とか知らない???」
「あぁ~あんまり、そういう話したことないですねぇ~」
「へぇ~どんな話するの?女の子って恋バナ好きじゃん。そういう話しないって何の話するのか気になる!」
美月は一生懸命、七海との会話を思い出す。1番最近は胸の柔らかさと大きさの事だったがその話をここでするつもりもない。そして、七海の話は基本的に七海が誰某に告白されたとか、誘われたとかという話ばかりだった。その時に好みの話してたかなぁ?と思いつつも美咲の言っていた事を思い出す。
【山口さんは前田さんが好きなんじゃない?】という事を、それをそのまま言うのはマズイ。そして情報元も七海じゃない。美月はその情報を少し真綿に包んで中村雄大に伝える。
「あぁっ!えっと、七海さんから直接聞いたんじゃないんですけど、七海さんの知り合いが七海さんは大人っぽい落ち着いて人が好きみたいって話してましたよ」
「へぇ~大人っぽい人かぁ~俺、結構老け顔って言われるからアリかな?」
「あぁ。顏かなぁ?私はあまり顏の好み無いから・・・わかんないけど・・・」
顏の好みどころか、好きな人がわかんないけど・・・とは思いつつもそこは濁す。友達でも無い人に色々晒す気はない。
「そっかぁ~美月ちゃんは顔で人をみないんだねぇ~だから、響とか颯太さんがイケメンでも関係ないのか。そうだね!大輝さんとも仲いいもんね!」
中村がまたなんか、失礼な事は気がついていたが、本当に何なんだろうと思いながら話を聞き流す。確かに、大輝はイケメン枠では無いが悪くも無いし、優しいしいいやつだ。
こーゆー事に巻き込んではくれたが、勝手に個人情報はIDは教えたが!それだけで、嫌いになるほどでもなく。大輝だからなってところがあるし優しさから来てるとは思う。今日、説教はするけど。
そんなことを考えていると、膝のスマホがブルッと震える。さっきも震えたなと視線を落とすと先ほどメッセージを送ったグループ窓【月颯大】が表示されている。
「あっごめん!メッセージ返していい?」
「えぇ~人と話してる途中に返すぅ~?まぁいいけど、じゃ俺も見るわ」
いちいち批判しないと気が済まないのかと思いつつも、まぁ失礼なタイミングなのも自覚している。SNSを開きメッセージを見る。雄大も同じようにスマホをチェックし始めた。
Sota.Y『なにしてるんだよ。大丈夫か?」
Daiki(北高/E制科)『えー学校から離れたのぉ!時間大丈夫かなぁ?』
Daiki(北高/E制科)『そうそう、飲み19時に予約してる!颯太も迎える?』
Sota.Y『@森美月 俺、公園にいるから』
Sota.Y『@Daiki 美月が終わってから決める』
え?颯太、公園にいるの?窓の外をきょろきょろ見回す。今日も、私がこの相談があるから車は別々だ。ふと、前かがみになってバックミラーに映った車を見ると颯太のシルビアだった。スマホに視線を戻し、打ち込もうとしてると中村雄大がぐっと顔を寄せてスマホを覗き込んで来た。
返信を打とうと画面に集中していた美月は近づくのに気がつくのが遅れ、気がついたときは顏が触れそうなほど近づいてきていた。美月は驚き、スマホを握りしめガバッとドアの方に後ずさる。美月が吃驚して後ずさっているのに、雄大はニコッと微笑みその場から戻らない。
「えぇ~そんなに、反応する?響とはこれだけ近づいてスマホ見てたじゃん!」
さらに、ぐっと近づいてきたとき、美月の持たれていた方のドアが開き、少し外へ倒れかかるが、シートベルトをしているのでひっかかって落ちなかった。しかし、背中は誰かの手で受け止められる。
「雄大さぁ。なに?美月に迫ってるの?合意?」
聞きなれているが、聞いたことないほど低い声に美月もビクッと震える。美月の肩を抱きながら颯太は車に上半身を滑り込ませ、シートベルトのロックを外す。
密着具合にドキッとするがシートベルトの支えがなくなった美月の体は外に落ちそうになり慌てる。そのまま颯太が支えながら後ろにゆっくりと引く。
「美月。降りて」
「雄大。相談は終わった?終わってないなら、俺離れるけど、美月は外に立たせる」
「なっ。颯太さんには関係無くないですか?彼女じゃないんですよね?」
雄大は、一連の颯太の動きに驚きフリーズしていたが正気を取り戻すと反論する。それに、颯太は大きな溜息をついて続ける。
「あのさ。雄大、ほぼ初対面の男に車に乗せられて怖くない女子はいないから。お前、良くモテないっていうけど見た目じゃなくてそーゆーとこだと思うよ。高身長で、顏も悪くないのにモテないのはどう考えても性格のせいだろ?」
「え?」
「まぁ。この際だから、言っておくけど。人を貶める言葉使ったり、マウントとる発言したり、相手を軽視したりすると普通に人から嫌われる要素だから。考えてみなよ。それと、お前が調子に乗ってる時の、相手の顔とかよく見たほうがいいよ」
「あぁ~。颯太言いすぎだよ」
「でも、美月もそう思ったでしょ」
「・・・・・」
「沈黙は同意だから、美月」
うっかり黙ってしまった美月にも溜息をついて颯太は、雄大に目線を戻す。
「大丈夫か?俺、別にお前、嫌いじゃないよ。人が嫌がる事とかは割とやってくれるのは普通に凄いなって思うし、大勢いる場では盛り上げてくれるから響が助かるって言ってたし、大和さんはお前の事、結構気に入ってるよ。年齢とか関係無く話してくれるの嬉しいって言ってたし」
「だねぇ。気易くて話はしやすいと思いましたよ。でも、最初からそのテンションは女性は引く人が多いかも?」
あまりに意気消沈している雄大が可哀想になり、美月が声をかける。
「七海ちゃんと飲み会セッティングしましょうか?」
「え?」
雄大がガバッと顔を上げてキラキラした目で美月を見上げる。颯太は顔を顰めたが少し考えて口を開く。
「俺も行く」
「え?颯太さん来たら颯太さんに行くじゃないですか!3人がいいです!」
「え?嫌だけど?」
「えぇ~美月さんセッティングしてくれるって言いませんでしたか?」
「言ったけど、3人とか嫌だ」
「何で?」
「えー」
「まぁ。分かる」
「でも、ほかに男いたら俺話せないじゃないですか!」
「えーそこは自分で頑張ってよ」
「そうそう。他力本願過ぎる。人に頼んでいいのはきっかけだけ」
「それに、私が仲のいいエネ制って、颯太と(空気の読めない)大輝と(七海ちゃんが好きかもしれない)大和さんと、(モテる)響くんくらいだよ?」
大和さん以外の副音声は聞こえたらしい。でも、大人な大和さんも嫌だと思ったんだろう雄大はぐっと唇を一度引きむすぶと蚊の泣くような声でお願いした。
「・・・・颯太さんお願いします・・・」
読んで頂きありがとうございます!
~登場人物~
森 美月 21歳 1浪大学2年生 ITビジネス科
6/12生 何かと人に相談されがちな事が少し気になる今日この頃
体系にコンプレックスを持っている 男兄弟の真ん中
山崎 颯太 20歳 1浪大学2年生 エネルギー制御科
7/28生 美月の幼馴染 幼小中 高校別なのに同じ1浪して同じ大学で再会した
中村 雄大 20歳 大学2年生 エネルギー制御科
4/7生 颯太と大輝と同じ科の人 急に面識の薄い美月に恋愛相談を持ちかけて来た 高身長 濃い顏




