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回想5

よろしければお読みください。

 「200万!」


 「250万」


 「仕方ない350万!」


 「・・・350万これ以上はいませんか!?異世界からの転移者でございます!スキル持ちの上に見てください!今なら4人全員ついてきますよ!」


 「650万・・・」


 

 「おーっと!?650万!出ました!・・・」


 司会者と思われる仮面をした男が満面の笑みで木槌を台にたたきつけた。


 「234番様、650万で落札でございます」


 映画館のような場所に座る様々な仮面をつけた者達が、234番と呼ばれた男に対して拍手を送っている。まるで勝負の後に互いを褒め讃えているようだった。


 「それでは、234番様はオークションが終わり次第、別室にて商品の受け渡しをしたいと思いますので、ご準備のほどよろしくお願いします。それでは、まだまオークションは続きますよ!皆様、この後もご期待ください!次は、おそらく聡明で果敢な皆様であれば、きっと飼いならせると思われる商品です!それでは少々お待ちください!」


 司会の男は舞台の下手に視線を送り、そこに待機していた数人の黒子たちを動かした。その黒子達によって僕たちはまた別の場所に移動させられた。


 「さあ!それでは次に行きましょう。続いてはこちらの商品です・・・」


 ステージ上でピエロを演じる司会を眺めながら、僕たちは商品として売られてしまったことにようやく気が付き、あの時の老人は決して良い人なんかではなく信じてしまったことをひどく後悔した。


 部屋に戻ると言葉が話せるようになった。先ほどまでなぜか声が出せないようになっていた。おそらくこの首についている首輪が原因だろう。先ほどまで桃色に淡く光っていたが今はおとなしくなっている。だが、手足の枷はいまだに黄緑色に光っており、おそらくこれが原因でスキルが使えないものだと考えることができた。


 「クッソ!なんでスキルが使えねーんだよ!」荒れた様子で悠人が叫んだ。悠人のスキル剣豪であればこんな石の枷きっと切れるはずだ。でも今はそのスキルが使えない。


 「私も何もできない。なんか体の中の一部が胸やけしているみたいな感じ。皆はどう?」遥の言葉に全員が押し黙った。そう僕たちはただの人になってしまったらしい。これまで通りの。


 「ねえ、この後どうなると思う?」唯が珍しく怯えた表情をしていた。


 「知らねーよ。蒼空お前はどうなると思う?」


 「よくならないとは思う・・・」


 「はっ、なんだよそれっ・・・!?」途端に僕以外の3人が膝から崩れ落ちた。


 「えっ!?どうしたの!?」僕も皆に引っ張られてバランスを崩しそうになった。


 「わっかんね・・・でも急に力が抜けて・・・」悠人が悲痛な目で見てくる。


 「私も急に・・・なんで?」遥の目には涙が浮かんでいた。


 「これって、もしかして蒼空の力の代償じゃないかな・・・」唯が確認するかのように僕の方に目を向けてきた。


 僕はその時自分の体力が回復しているのが分かった。きっとスキル「貸付付与」の効果だった。そう言えばここに来るまでに何度も三人には僕のスキルを使っていた。そして3人から返してもらうのは一旦また今度ってことになっていたのに、なんで今になって・・・。


 「おい、蒼空俺たちを連れて逃げることはできねーか?」悠人が残り僅かな力を振り絞って聞いてきた。


 「うっ、どうだろ・・・」


 「はっきりしなさいよ!」遥が大きな声をあげた。だがタイミングが悪かった。檻の近くに看守が来ており、その声を聞いて中に入ってきた。


 「うるさい!静かにしてろ!」そう言って下でうずくまっている遥に対して蹴りを腹に入れた。遥は蹴られたが檻の中では転がることもできず、痛みをそのまま体の中に閉じ込めることになった。


 「おい!何してんだ・・・」悠人がその様子を見てとっさに声をあげた。


 「ああ?お前こそ何偉そうに口きいてんだ!」看守は悠人の顔を持ち上げて吸っていた煙草を鼻に押し当てた。悠人は悲痛な声をあげてそのまま地面に顔から落下した。


 「お前ら立場ってもんを分かってねーな。お前らは売られたんだよ。誰だっけ確かお前らを売ったタールってやつの話じゃあお前ら、人前でスキルがどうこうとか色々話していたらしいじゃねーか。馬鹿だよな、ほんと。しかも初めて出会う人から勧められたものを疑いもせず口にするなんてな」


 看守は笑いながら這いつくばっている唯の上に座っていた。そして犬でも触るように唯の身体を服の上からまさぐった。


 「やめ・・ろ・・・」悠人がその様子を見て微かに声を出した。


 「お前すげーな。その状況で自分より他人の心配ができるなんてな」看守は唯の胸を乱暴に掴みながら悠人の方に目を向けた。


 「お前のその勇敢さに敬意を表して、お前らを買った男の情報をくれてやる。お前らを買った男ってのはレリーフって男だ。まあこの界隈では少し有名なやつでな、嗜虐趣味があるんだ。人が苦しんでいる様子を見ることに興奮を覚えるやつなんだ。お前、今こいつが俺に胸をもまれているのを見て、やめろと言ったが、お前らがこれから行くところではこんなこと、気にもならないような場所だぞ。お前らがどんな風になるかは知らないが、これまでの話だとそいつは、1組の夫婦を買って、その旦那の指を関節事に切除して家畜の餌にしたこともあるらしいぞ。泣いて許しを請う妻に対して、自分のイチモツを咥えさせて時間内に射精させることができたらやめるといったそうだ。時間が経ち夫の指が切り落とされる様子を見て妻は一層激しく男のものを咥える。夫は妻が一心不乱に他人のものを咥える妻を見て絶望する。そんな二人を見て快感に至るような奴って話だ」


 看守は世の中にはいろんな変態がいるんだよ。お前らも頑張れよと言って出て行ってしまった。その話を聞いて僕は震えが止まらなかった。悠人と遥は意識は無かった。唯は一段と僕のスキルを借りていたからその反動もあって、動けそうになかった。その様子を見て僕は良くないことを思いついてしまった。だがそれはこの3人を裏切ることにもなる。どうするべきか考えているとまた別の檻に入った人が連れてこられており、何かを叫んでいた。


 「いやだ!あのレリーフって奴だけは!」


 その男は看守に滅多打ちにされ、すぐに静かになった。でも今まで聞いたことのないぐらいの絶叫に僕の考えは一つに決まった。


 ここから逃げよう。


 今の僕ならこの枷を壊すことができる。3人の力を少し得た自分ならきっとそれができると細い木の枝を見て、折れると確信するかのようだった。僕の力はスキルを貸した相手から少し色を付けて体力や力を回収して自分のものにする力だとそこで改めて認識した。そしてそれは支払いが延滞するほど相手から多くの物を取ることができるようだった。


 「よし!」そう言って僕は石でできた枷を砕いた。ゆっくり崩したのでほとんど音は出ず看守や周りにいる人たちには気が付かれなかった。そしてその後全力で鉄格子を捻じ曲げて僕だけ檻の外に出た。その後は覚えていない。すぐにその場から去り、全力で走った。


 気が付けば見たこともないような場所にいた。僕はその後近くにいた獣にあえて体力を預け、その獣に力を貸しそのあとを追った。そしてしばらくしたところで貸した力を利息を付けて回収し、動けなくなった獣を喰らった。

 

 そうしたことを何度も繰り返している間にスキルが進化した。どうやら、これまではある一定の期限内であれば貸したままにしておくことができたスキルが、今後は無期限で貸すことができるようになったらしい。つまりこれまでは回収した時の利息には限界があったが、どうやらその上限が無くなったことらしい。つまり雪だるま式に利息を増やすことができ、今まで以上に相手の力を大きく奪うことができるようになった。またスキルが進化した結果、貸し付けるものに対して利息が細かく設定することができるようになったらしい。例えばスキルを使うための力などは利息が高く、体力など寝れば回復するようなものは今までよりも少し低くなったりした。だが、この力を使えばあの3人を救うことができるはずだ。そう思い、既に3か月ほど経っていたが何とかして僕たちを買った男の所在を掴むことができ、少しずつその男にスキルを使っていた。そして1年ほど経った後、僕はその男と周りにいる奴らから根こそぎ、奪い去った。そしてすぐにそれを3人に付与した。


 これまで、どんな目にあっていたのかは具体的には分からない。だが3人は急に力が戻り屋敷中の人間を始末していった。


 そして、三人血まみれの姿で出てきた時、その目の中には何も光が無いことに驚きを隠せなかった。


 「皆、大丈夫だった?」そう言って僕は3人に近づいていった。だが、彼らは僕のことを全力で殴ってきた。あまりの出来事に僕は何もすることができなかった。

   

 「お前が!お前があの時俺たちを連れて逃げてくれれば!」悠人がそんな言葉を泣きながら吐いていた。


 この三人に襲った悲劇はきっと僕が想像もできないようなことなんだったと思う。同時にあの日、皆を置いて逃げてしまった僕は一生、この三人から軽蔑の目を向けられることを覚悟した。だが、3人の口から語られる断片的な物語を聞いて、僕はこの三人を置いていったことを心底後悔した。


 「ごべん・・・」


 顔が腫れ口の中は血の味がしていた。全身もひどく痛かった。だけどこの3人が受けたものはきっと、もっとひどいものだったと思うと何も言えなかった。裏切ったのは僕だから。


 「おい、お前俺たちと一緒に来い。まあなんにせよ助かったのはお前の力のおかげだと思うからよ。取り合えず俺たちは今からこの世界に住む人間たちに復讐していく。お前は俺たちに力を貸せ。そして俺たちと契約しろ。無期限の返済期間の延長を」


 悠人が上からそう言って来た。無期限つまり、よこせと言っているようなもんだ。普通なら納得できるわけもないが、僕にそれを拒む権利はない。

 

 「うん、ばかっ・・・た」


 そう言うと悠人は唯と遥に手を出すのを止めさせた。


 「二人ともこいつも、謝ってるしやめてやろ。それにこいつの力はこれから俺たちがこの世界に住むやつらに復讐していくのにやくに立つ。だろ?」


 悠人の言葉を聞いて二人はようやくやめてくれた。


 「確かに、こいつを殴っても全然すっきりしないわね。やっぱりこの世界に住む奴らを殺さないと気が済まない。私たちを裏切ったのは事実だけど、助けてくれたのもこいつだしね。せいぜい私たちの犬として約にたちなさいよ」


 遥はそう言って舌打ちをした。


 「うん。確かにそうだね。私も悠人と遥の意見に賛成する。あいつらには地獄の苦しみを味わってもらわないと許せない。こいつの力があればきっと、私はこれまで以上のスキルを使って想像以上にこの世界の人間どもを苦しませることができると思う。これからよろしくね」


 唯の目には何も映っていなかった。僕を見ているようだけどそれでも、その瞳は僕のことを映していなかった。ただの道具を見る目だった。


 「それじゃあ、とりあえず意見もまとまったし、まずはあの俺たちを売った老人どもの町を壊しに行くか。どうやら人身売買は基本的に禁止されているらしいが、利益も大きいらしく町ぐるみであの商人どもはしているらしい」


 その言葉を聞いて遥と唯の顔は険しくなった。


 「それじゃあ、この世界の人間どもぶっ殺しにいきますか」


 そう言って3人は町を目指して進み始めた。僕はそのあとを黙ってついて行った。

お読みしていただきありがとうございます。ご要望があれば3人を襲った出来事も書きたいと思いますのでよろしくお願いします!

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