回想4
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目が覚めると、3人と合流した。全員まだ完全に疲れが取れているわけではなさそうで、宿の近くの飲食店のテーブルを囲って座っていても次々に欠伸をする音が聞こえてくる。
「よし、それじゃあ全員そろったし、一旦現状の確認でもするか」悠人がそう言って紙を取り出した。
「まずは、ここがどこかってことだよな」悠人が周りに目を向ける。それに倣って僕も同じように見渡すがその質問の答えになるようなものは何一つとして無かった。だがこの問題は店で働く人に質問することですぐに解決した。どうやら今僕たちがいる町は「オーズベル」という町らしい。行商人の町らしく、この町に生まれた人の多くが商人として働くことになるらしい。そのせいもあるのかそれほど大きな町では何の二も関わらず、食事のメニューの種類がやけに豊富だったりしていた。
「次は、スキルについてだよな。見た感じ誰も使ってないからかなり凄い力なんじゃないかって俺は思うけど、どう思う?」その言葉に僕たちはうなづいて見せた。町の中だからかもしれないが、空を飛んでいたり、火を手から出している人がいるなんてことは無かった。
「なら次だな。だがこれはかなり残念な報告になる」悠人の顔色は暗かった。
「どうやら、この世界には魔王がいるなんてことは無いらしい。信仰の対象の女神「フルート」ってのは実際にいるとは言われているが、別にそいつは悪さをするわけでもないらしい。それに姿を見たって人もいないらしい。だから、俺は正直元の世界には戻れないんじゃないかって思ってる。魔獣なんてものは俺たちも見たが、あれもどうやら元の世界でいう動物とかと同じ感覚らしい」
「えっじゃあ私たちずっとこのままってこと?」遥が声を震わせて聞いた。
「多分な。絶対じゃないけど。まあ、もしかしたらその女神に言えば少しは可能性はあるかもしれないけどな。おそらく俺たちをこの世界に連れてきたのはそのフルートって女神だろうしな」
そんな話をしていると後ろに昨日僕たちをこの町まで連れてきてくれた老人が立っていた。
「何だ、お前さんら。女神様に連れてこられたんか?」少し驚きを帯びた声だった。
「分からないです。ただ多分そうなんじゃないかってだけで」そう僕が答えると老人は何かを考えるような仕草を取った。
「どうしたんです?」
「あのな、もしかしたらかもしれんが、女神様がいると言われている場所について教えることができるかもしれん。まあ噂程度の話なんだがそれでも聞く気があるなら話すがどうだ?」それを聞いて僕たちは一斉に頷いた。
「よし、それなら話してやる。つい最近なんだがこの町から5つほど離れた町の近くに突然、湖が出現してな、そこに行ってみると女の姿をした何かがいたらしいんだ。それを見た奴は、初めはただの人かと思ったらしいんだが、そのものは湖の上を歩き始めたらしい。そして中心部に着くと当然姿を消したそうだ。湖を作るなんて芸当ができるのは女神様ぐらいしかいないだろってことで、しばらくそのあたりは探索されたんだが、その姿は結局見つからなかった。でもな湖の中に入ろうとして足を踏み入れても入れないらしいんだ」
「どういうことですか?」
「いや、そのまんまの意味だ。足をつけようと一歩踏み出すとその反対側の地面に足がついてしまう。遠くで見ていた奴らによると瞬間移動した見たいだといったそうだ。だからもしかしたら、湖の中に女神様がいるんじゃねーかと言われている。どうだ気になるならお前さんらをその町まで案内してやろうか?」
僕たちの答えに断るという考えは無かった。
「はい、お願いします」
「よし、それじゃあ連れてってやる!と言いたいとこだが、俺は別の町で仕事がある。だからそっち方面で仕事のやつに頼んでやるよ」そう言って老人は店を出て行ってしまった。
「どうなんだろう?」僕がそう聞くと悠人が不思議そうな顔をしていた。
「行ってみるしかないんじゃねーかな」
「私もそう思う。スマホも何もないこんな世界いくらスキルが使えるからってずっとはいられない」遥が勢いよく言った。
「私はどっちでもいいかな。皆についていく」そういう唯だったが目には希望がともっていた。
「よし、それなら行ってみようぜ」そうしてしばらくすると老人が若者といっても30歳は超えている人を連れてきた。
「おっ、こいつらだ。連れてってやってくれ。タール」元気よくそう言うと、タールと呼ばれる人の尻を思い切り叩いた。
「もう、やめてくださいよ・・・。でも別に連れていくくらいいいですよ」そう言ってタールは僕たちの顔を見た。
「よろしくおねがいします」悠人が頭を下げるとタールは微笑んだ。
「うん、よろしくね。でも他の荷物と一緒に荷台に乗ってもらうことになるけどいいかな?」
「はい、でも頼んでおいてなんですが、俺たちが乗った分商品の積み荷の量が減るんじゃ、それでもいいんですか?」
「うん、別に構わないよ。それに荷台も別にギチギチに詰まってるわけじゃないし、4人載せるくらいなんでもないさ」
「そう言ってもらって助かります。では出発は何時になりますか?」
「そうだね、明朝になると思うから、今日は早く寝ておいてね」
「分かりました」
「他に何か聞きたいこととかある?」
「あっ、食料とかは・・・」もう昨日までのような飢えを味わいたくない。悠人の質問に胃が締め付けられるような気がした。
「別に大丈夫だよ。1日でその町まで行くわけじゃないからいくつかの町を巡ってその後って感じだから、都度補給はできるよ」
「そうですか、安心しました」
「それじゃあ、準備があるからここら辺で退散させてもらうね」そう言ってタールは店から出て行った。
「よかったな、お前さんら。何にしても明日遅れないようにしとけよ」そう言って老人は袋から小さな飴玉のようなものを取り出した。
「これをやる。食べてみろ」そう言われて差し出された物を手に載せて眺めた。
「なに、この町では町から出るときに、危険な目に合わないようにって意味で、この花の蜜を抽出して作られたこれを食べるんだ。まあ花ってのは装飾品にもなるし、食料にもなるしってことで商人にとっては演技がいいもんだと言われてるんだ」そう言って老人は自分の手に置かれた僕たちと同じものを口にした。
「よし、それじゃまたな」老人はそう言って外に出て行った。中に残ったのは僕たちとタールだけだ。
「じゃあ、明日の朝、迎えに来るからすぐに出られるようにしておいてくれよ」タールはそう言い残してどこかに行ってしまった。
「よかったな」悠人が嬉々とした声で言った。
「そうね!とりあえず私たちの目標はその女神についての情報を集めることね」遥が確認するように言った。
「うん、それでいいと思う。私もまだ読みかけの本とかあるから早く帰りたい」
「よし、それじゃあ今日一日は少し街の中を見て回るか」悠人がそう言って先ほどもらった飴玉を口に入れた。僕たちもそれにつられて口の中に放り込んだ。
「甘!」遥が口の中で飴玉を転がしながらそう言った。飴玉は口の中に入れるとすぐに溶けだしこれまで感じたことのないような甘味で僕たちの口の中を満たしていった。そして同時に得も知れぬような多幸感に全身が包まれ一瞬で座ってられなくなり、次々に地面に倒れこみ大きな音を響かせた。何故急にこんなことになったのかは分からないけど、薄れゆく意識の中で先ほど外に出て行った老人とタールの靴が微かに見えたような気がした。そして僕の頬に濡れた小さなボールのようなものが当たった気がした。
「あれさっきの飴玉じゃ・・・」その時にようやく気が付いた。あの飴玉は食べてはいけなかったって。でももう既に遅かった。
そうして気が付いたころには全員、檻の中に入れられ手足に枷をはめられていた。外の景色は見えないだけど、地面が振動していることから動いていることは分かった。僕たち四人は大きなミスをしてしまったらしい。この世界は日本ほど治安がいいわけでもなかった。それなのにも関わらず、僕たちは注意していこうといいながらも自分たちの価値観を基準に人を信じてしまった。
地面の揺れが収まったかと思うと外に人の気配を感じた。僕たちは4人が首輪で繋がれており、狭い檻の中ではほとんど身動きなんてできなかった。そしてこれから、僕たちはこれまでの人生で味わったことが無いほどの恥辱、屈辱、侮辱を味わっていくことを、この時はまだ全く知らなかった。
ありがとうございました!
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