第451話 ミュジカとポヨポヨ達を含めても不利
「よし! じゃあ俺が出向いて全員ぶっ飛ばしてくる!」
ずっと黙っていたミュジカが、やる気満々と言った様子で声を上げる。
民衆の為にポヨポヨ達が見捨てられる可能性は高いと思っていたし、そうなっても仕方ないと半ば諦めていただけに。
メロディの言葉が嬉しかったのだ。
「待って。飛天族は強いわ。いくら貴女が強いからって、今回ばかりは一人でどうにか出来る相手じゃない」
当然のように飛び出して行こうとしたミュジカを止めようと、すかさずテレレが首根っこを掴むが、ミュジカの身体能力は並ではない。
ただ歩いているだけなのに、テレレの身体が僅かに引き摺られる。
「止まって」
だが、そこはテレレも大国の党首。
岩程度なら簡単に握り潰せる膂力を振り絞り、何とかミュジカの歩みを止めた。
「なんだよ? 俺が全員ぶっ飛ばすのが、一番被害も少なくて速いだろ?」
自意識過剰の傲慢にしか聞こえない言葉だが、この発言に見合うだけの強さをミュジカは確かに持っている。
既に失われた筈の古代魔法、声魔法の使い手であるミュジカの力は、現存する魔法使い達を一線を画している。
ミュジカが本気で戦えば、党首級の人間が五人くらい居て、ようやく相手になるかどうか。
大国の党首が軍隊を率いて本気で戦ったとしても、正面から真っ当に戦えば、確実にミュジカが勝つ。
それ程にミュジカの力は規格外だ。
「出来るなら、ね。けど今回の相手はそんな簡単じゃない」
だが、単独の勢力であらゆる侵略者を跳ね除けてきた飛天族も並ではない。
単独で大国にさえ勝る力を持つミュジカ。
もはやどこの国にも勝る程の戦力と言っても過言ではないポヨポヨ。
ここに上手くやれば将軍級の魔族なら互角くらいに戦えるメロディに、植物魔法最強の使い手であるテレレを足しても――
飛天族相手では、どうしても分が悪かった。
「アーラも貴女と同じ、とっくの昔に失われた筈の古代魔法の使い手なの」
何故なら飛天族の長であるアーラも、空の力を操ると謳われた天空魔法『ウエルス』の使い手であり――
飛天族があらゆる侵略を跳ね除けてきた要因の一つに、アーラという絶対強者の存在があった事は間違いない。
「メロディも覚悟して。私の見立てでは、ミュジカはアーラ相手で手一杯。他を手伝う余裕はないと思う」
「そんなに強いの?」
話を振られたメロディが信じられないとばかりに、テレレに訊ね返す。
ミュジカは自分が化け物扱いされ、人から避けられる事を酷く恐れており、滅多に本気を出さないが――
加減した状態でさえ、ポヨポヨやエコーバードの群れ程度なら蹴散らせる事を知っている。 そんなミュジカが今回は戦力として頼られている事を自覚して、最初から本気で戦う姿勢を見せているのだ。
いくら伝説の飛天族、その長とはいえ苦戦するところが想像出来なかったのだが――
「ミュジカの相手も一人で出来ない相手に、いくら搦め手を使われたからって、ダーリンが遅れを取る?」
「……納得。確かに多少上手く罠が決まったくらいで、どうにかなる強さじゃなかったわ」
あの出鱈目に強い研一でさえ捕まってしまったと言われれば、頷かざるを得ない。
メロディが知る中で唯一、研一だけが単独でミュジカとやり合えそうな人材だったからだ。
――過去にセンがミュジカを戦闘不能に追い込んだ事があるが。
それはセンを傷付けて嫌われる事を恐れたミュジカの不意を突いただけであり、本気だったなら到底敵わなかったと、倒したセン本人が認めていた。
「そうだ! 相棒の件はどうすんだよ! 見捨てるなんて許さないからな!」
そこで研一の話題が出てきた事で、思い出したとばかりにミュジカが大きな声を上げる。
事実、言われるまで完全に忘れており。
もしここでテレレが研一の話をしていなければ、ミュジカは何も気にせず全力で戦っていた筈だ。
「その件も含めて作戦を考えるって事。と言っても、そっちに関しては、私達に出来る事は少ないわ」
「私達にってなんだ? 他に誰か居るのか?」
「別の国から救出部隊が動いているわ。私達に出来る事は精々、こっちで派手に暴れて、救出から目を逸らす事くらい」
「おー? よく解らんが派手な攻撃すればいいのか?」
「気にせず全力で戦えばいいわ。さっき言ったけど、ミュジカがアーラに手一杯って事は、アーラだってミュジカに掛かりきり。ミュジカは無理に勝とうとせず、時間を稼いで」
「逃げ回れって事か? そういうの苦手なんだけど……」
「……とにかく全力でアーラと戦って。貴女なら、それで十分時間稼ぎになるだろうし、倒せるならそのまま倒して、私に指示を仰いで」
「りょーかいだ!」
ミュジカに細かい指示を伝えても、混乱して足枷になるか、不自然な行動を取って策が見破られる事にしかならない。
それならば解かり易い方針だけをテレレは与えると――
「ちょっと私達は話し合いに集中するから、周囲の警戒をしてきてくれる? 怪しい気配が近付いて来たら、空からでも地上からの相手でも即座に伝えに来て。頼んでいいかしら?」
「任せろ!」
あえて戦略は伝えない道を選ぶ。
この方がミュジカは力を発揮して、役目を果たしてくれる筈だと信じて、見張りを押し付ける形で、部屋から追い出した。
「いい、メロディ。戦力的に私達は大分不利だと思う。けど、ミュジカが居てくれたお陰で、決して覆せないような差じゃない」
「うん。それでどういう感じでいくの?」
そして、二人は作戦を練っていく。
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