第450話 ヴォイス側から見た飛天族
「どうする? 大人しく引き渡せば、アーラ。飛天族の長の性格上、それで納得して帰ってくれるわよ」
あくまでテレレは、外部からの協力者でしかない。
ヴォイスの運営方針を決めるのは、党首であるミュジカと党首補佐とも言うべきメロディだ。
これは例え愛する研一の意向がどうであれテレレは歪める気はなく、二人がポヨポヨ達を差し出すと決めたのなら、文句を言う気はない。
だが――
「は、冗談でしょ」
馬鹿らしい、とばかりにメロディはテレレの提案を鼻で笑う。
魔族だった事には驚いたし、言われてみれば疑う余地もないくらいに生物としておかしい存在だったと納得だってした。
けど、魔族だったからどうしたという話でしかない。
「人間の迷惑になるくらいなら自分が死んでもいいって、迷わず自分の命を差し出そうとした子達よ? 同じように殺そうとしたウチが言うのもどうかって思うけどさあ。あの子達が滅ぼさないといけない敵だとか言うくらいなら、他に倒しといた方がいい奴なんてさあ、いくらでも居るでしょうが」
メロディから見たポヨポヨは、驚くほどに善良な存在だ。
仕事を頼めば嫌な顔一つせず手伝ってくれるし、自発的に子ども達の面倒を見てくれる。
頭を撫でられたり褒められたりする事に飛び跳ねて喜び、無視されたり嫌われたりする事にぺちゃんこになって落ち込む――
穏やかで気のいい隣人でしかない。
これで崩壊させるべき邪悪な存在とか言うのなら、それこそこの世界に生きていていい者なんて、居なくなるんじゃないかと思う程に。
「大体さあ。あの子達が居なかったらウチ等は、エコーバード達に襲われた時に全滅してたし。あの子達を差し出して自分達だけ生き残ろうなんていう、恩知らずのヘタレなんて、うち等の国には居ないっての」
というか、居たらウチ等の国から叩き出してやる。
なんてメロディは付け加え、迷う事無く己の意志を語っていく。
「アレだけ無下に扱って子どもの事で冤罪吹っ掛けたりしても、それでもウチ等を命懸けで助けてくれたあの子達を見捨てるような、恩知らずで恥知らずの外道として生きてく方が無理。そんな事するくらいなら、ウチはあの子達を守る為に死んだ方がマシ」
ポヨポヨを守る為、己の全てを賭けて戦う。
それだけがかつてポヨポヨ達を殺そうとしてしまった自分に出来る、唯一の贖罪だとばかりにメロディは吠え立てる。
「それにさあ、気に喰わないのよ」
「気に喰わない?」
「そう」
オウム返しに言葉を紡ぐミュジカに頷いて、メロディは更に話を続けていく。
ここまでは党首ではなく、メロディ個人の問題。
自分の罪悪感の為だけに街の住人全てを巻き込めるような性格をメロディはしておらず、もし街の住人が飛天族なんて強い奴等とは戦えないなんて及び腰になれば――
きっと叩き出す事なんて出来ないだろう。
そんなメロディが、あえて強い言葉を使ってでも徹底抗戦を主張する理由。
それこそが国と民衆を守る立場からの意見だ。
「あんな小型の龍ばりの魔力を秘めた子達が一気に増えて、それが魔族ってなったら危険だって言い分は、理解出来るわよ」
はっきり言って、理は飛天族の方にある。
ポヨポヨ達は見た目こそ可愛らしく、気性だって穏やかで人間に非常に友好的ではあるものの、戦力で見れば凶悪の一言。
魔力量も高ければ知力も高いという単純な強さも優秀なら、兵糧を必要としない上に増える速度も速いという兵としては反則的な性能を誇る。
しかも敵対種族である魔族。
こんな危険分子としか言えない戦力を他の国々に隠して大量に保有しているとなれば、気付いた国が対処に動くのは、至極真っ当な判断と言えるだろう。
けれど――
「今のウチ等の動きって隠れて見え難いじゃん? そんな中でもポヨポヨの増加数とか把握してんなら、もっと前。それこそポヨポヨが他の魔獣追い払って、地上を自由に歩き回ってた頃から気付いてた筈でしょ?」
捻くれていると言われれば、それまでだが。
人間が綺麗事だけで動くなんて、どうしてもメロディには思えない。
お上品な綺麗過ぎる言い分の裏に、どんな合理的な損得勘定や下劣な思惑が働いているのかと思えて仕方ない。
「そうね。その頃から魔族だって事にも気付いてたでしょうね」
テレレも否定はしなかった。
アーラならばとっくの昔にポヨポヨが魔族である事にも気付いていただろうし、本当に正義の為だけにポヨポヨ達を壊滅させるなら、生態系に影響が出ていた時点で動くべきだ。
「飛天族と長く取引があるっていうテレレに言いたかないけどさあ。このタイミングじゃ侵略の建前とか、ウチ等に有利な立場を取る為に動いたようにしか見えないのよ」
テレレとミュジカの力で資源が潤沢になり。
建国直前という微妙な時期に、わざわざ襲ってくるとなれば――
正義を盾に好き勝手殴り掛かり、自分達から何もかも毟り取ろうとしている、邪な輩にしか見えない。
「そんな連中相手に少しでも譲歩したら、何されるか解かったもんじゃないでしょ」
良かれと思ってだとか、自分達が正しいから何をしてもいいなんて思っていそうな連中ほど、タチが悪い存在なんて、中々居ない。
だからこそ党首として国と民衆を守る為にも、無条件降伏を選ぶなんて道は、メロディには最初から存在しないのである。
面白かった、続きが見たい。
書籍化して絵が付いているところが見たい。
何かしら感じてくれた方は、是非とも高評価してくれると嬉しいです。
また気楽にリアクションなどして頂ければ嬉しいです。




