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憎まれ救世主 ~異世界転移したら不遇なスキルを授かったので、悪役キャラを演じていたら、裏でモテモテハーレムになっていた~  作者: お米うまい
第九部 羽人と空の上にある国

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第436話 アーラの転機

ネトコンが始まりました。

良ければ初レビューお待ちしています。

「っ――」


 ギリギリとプロケラが歯を食い縛る音がした。


 この話を聞く度に、今すぐにでも人間の領土に攻め入り、何もかも壊して回りたい衝動に襲われる。


 けれど、普段は暫く収まらず燃え続ける筈のプロケラの怒りは、意外にも早く収まった。


「全く……。救世主ともあろう者が情報交換や交渉の場で、そんな顔するでないわ。情を見せれば悪党に突け込まれてしまうじゃろうが」


 今にも泣き出しそうな顔をして佇む研一を、正面から見たからだ。


 おそらく研一から訊ねてしまった手前、アーラが淡々と話してくれている以上、自分が泣く訳にはいかないと堪えているのだろうが――


 それは安易に涙を流して辛い気持ちは解かるなんて同情しているような顔を見せるより、ずっと悲痛で苦しそうな表情で。


(ああ、そうだ。バッちゃんもよく言ってる。悪い人間も居れば良い人間も居る。どっちか解からないなら、とにかく優しい顔して近寄ってくる相手だけは、払い除けておけ、と)


 プロケラは一度、大きく息を吐く。


 そして、アーラがこの悲劇を話した後に、絶対にする別の話に耳を傾ける。


「確かに心無い人間が儂の翼を奪ったのは事実じゃ。それに対する恨みや憎しみ、そして恐怖は数百年経った今でも消えておらんよ」


「……ああ」


 数百年という言葉に僅かに驚く研一であったが――


 話を止めるような事でもないとばかりに疑問を押し殺し、続きを促すように短く頷くだけに留めた。


「じゃがのう。その男から儂を助け出し。他の飛天族が来るまで、人間達から匿って世話をしてくれたのも、人間でな。残った羽すら奪われようととしていた所を、新しく現れた男、旦那様が、そやつを斬り殺して助けてくれたのじゃ」


「そう、なんですか?」


 アーラの言葉に研一は驚きと同時に、どこか納得も覚えていた。


 何故なら壮絶な過去の割に、アーラの取っている方策は人間国への配慮が多く見え隠れしており――


 人間を恐れているというだけとは違う、温かさのような何かを感じていたから。


 ――そして、旦那様の部分を深く掘り下げるか迷ったが、一旦置いておく事にした。


「そうじゃよ。あの出会いがなければ、きっと儂は今でも人間を怖いものとしか思わず、恨み続けていたじゃろうな」


 アーラは懐かしむように、柔らかく笑う。


 先程の惨劇を語っていた時の淡々とした様子と違い、数百年生きてきたという言葉が信じられないほどに、どこか幼ささえ感じる程の純真な笑みだった。


「後で知ったんじゃが、羽をもがれて泣き叫んでいた儂の姿に、人間の娘が襲われていると思ったらしい。咄嗟に斬り殺してしまったところで、旦那様は初めて、儂が飛天族の娘じゃと気付いたようでな」


(随分と思い切りの良い人というか――)


 時代が今とは違うからだろうか。


 女性の悲鳴を聞き付け駆け付けて、確認もせず即座に斬り付けるとかいう状況に戸惑いを覚える研一であったが――


 驚きこそあれ、不快感はない。


 男が斬り殺された事に対しては自業自得しか思わず、アーラの羽が片方だけでも残ってくれてよかったという、寂しさ交じりの安堵しかなかった。


「じゃがな。もう人間を信用出来なかった儂には、助けてくれたとは思えんかった。羽を奪う為に男を殺したようにしか見えんかったよ」


 アーラは、自分を騙した男から聞いていた。


 飛天族の羽は美しい上に魔力の塊で、高く売れるのだ、と。


 そして、その羽さえなければ誰がお前みたいな化け物なんて抱くか、とも。


 そんな状態で突如として現れて男を斬り殺した相手なんて、羽を横取りしに来た新しい狼藉者にしか見えなかったのだ。


「感謝も出来ず必死で儂は逃げようとしたもんじゃよ。あまりにも礼儀知らずにな」


 羽を半分失った挙句に精神状態も不安定だったアーラは、魔力の制御も碌に出来ない状態に陥っており――


 無意識に風魔法を操り、身体を支えている飛天族は、魔法を失えば歩く事さえままならない。


 おまけにもがれた羽の痛みで背中からは絶えず血を流しながら、それでも未来で旦那となる男から少しでも離れようと、身体を引き摺った。


「じゃが襲われそうになっていたオナゴを助ける為に、問答無用で躊躇いなく悪漢を斬り殺すような人じゃったからな。そんな哀れな儂を放っておけなかったらしくてのう。旦那様は儂の傷を治療してくれた上に、人間共から匿ってくれたのじゃ」


 涙と絶望で顔をぐしゃぐしゃにしながら、それでも必死に生き残ろうと足掻く年若い娘。


 見捨てられるような人間なら、最初から男を斬り殺してでも助けたりしないだろう。


 自分がアーラを傷付けた訳でもないのに、未来でアーラの旦那となる男は、まるで自分の事のように辛そうな顔でアーラに謝り。


 怯え続けるアーラの世話を懸命に焼いた。

面白かった、続きが見たい。

書籍化して絵が付いているところが見たい。

何かしら感じてくれた方は、是非とも高評価してくれると嬉しいです。


また気楽にリアクションなどして頂ければ嬉しいです。



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