第434話 変則的な最近の若い奴等は……
「お言葉ですが、長。我等、飛天族は、それほど愚かでは――」
「たわけ!」
そこで口を挟もうとしたプロケラに、アーラが黙れとばかりに一喝する。
これは会話に入ってくるなという意味ではなく、あまりに驕った考えに対する注意の割合の方が多かった。
「飛天族なんて大層な名前を名乗っておるが、所詮は儂等なぞ羽が生えてるだけの人間よ。そこそこの平和と安全が続けば、退屈を持て余した阿呆が馬鹿な事を始めるもんじゃ」
「けど、バッちゃ――」
「知らんとは言わせんぞ。最近の若い奴等の間で外で睦み合うことが流行っておるのを! アレこそ刺激を求めた阿呆共が始めた典型的な愚行じゃろうが!」
「…………」
プロケラは何も言い返せなくて黙り込む。
何一つ反論の余地なんてないどころか、プロケラ自身、呆れるくらいに同様の感想しか浮かばなかったからだ。
「想い合う二人が情欲を抑え切れず偶然外で盛ってしまうなら、若いのだからそういう事もあると仕方ないと儂だって渋々目を瞑ろう。じゃが何じゃ! 見付かるかどうかの緊迫感が堪らないじゃと! 秘め事を何だと思っておる! 愛し合う者同士が想いを確かめ合う行為じゃろうが!」
刺激や快楽だけを求めおって。
あまりにも今の連中は爛れておる、なんて嘆きを隠しもせずにアーラは語る。
(なんか、思ってたより大分マトモな方だな……)
研一は予想外に固いアーラの貞操観念に、驚きを隠せない。
酒に酔って城を吹き飛ばした上に、報酬さえ渡せばいいという悪びれない態度から、てっきり飛天族の間で流行っている、乱痴気騒ぎにも肯定的なタイプかと思ったが――
どうやら一口に破天荒と判断していい性格では、ないらしい。
「そんな恥も外聞もなく、楽しければいいなんて雰囲気で生きている連中じゃ。乱痴気騒ぎに満足している内は、何とか許せるにしても、じゃ。いつ新しい刺激とやらを求めて、おかしい事を仕出かすか解かったもんではない」
そして、どうやらこの話はプロケラだけに向けたモノでは、なかったようだ。
どうして子どもに羽無しは無能だ、なんて吹き込んだんだという研一の質問に対する答え。
目的が人間に目を向けないようにする事ならば――
そもそも、こんな謀り事をやる羽目になった理由こそ、あまりに最近の若い飛天族が信用出来ない、という話でもあったようだ。
「だから変な考えを起こす前に、先に解かり易くて身近な的を作っておこうとした、と?」
「そういう事じゃ。話が早くて助かるわい」
補足するように告げた研一の言葉に、満足そうにアーラは頷く。
そこには予想外の行動ばかりする若者達が、他国に迷惑掛けないようにするのも大変だと言わんばかりの統治者としての気苦労が見え隠れしていた。
「それじゃあ六番隊でしたっけ? あの件とかも全部仕込みだったって事ですか?」
話を聞いた研一は、今まで聞いた全ての事件がアーラの仕組んだ狂言だと判断した。
子どもに悪質な話を吹き込んだ事だけではない。
死んだ筈の六番隊が隠密部隊として生きている以上、そちらもアーラの企てと判断するのが自然だと思ったからだ。
だが――
「ちと違う。アイツ等が山の者達に横柄な態度を取っておったのは事実じゃ。そして、山の者達が雑な仕事をした結果、事故が起きたところまでは本当じゃよ」
信じる信じないは、そちらの判断に任せるが。
とアーラは付け加えて、話を続ける。
「ただのう。あの時の雷鳥は、そもそも事故なぞ無くとも犠牲者無しに倒せるかどうか、怪しい程に大物じゃったのでな。隠居している身とは言え、若い連中だけに任せるのもどうかと思い、儂も隠れて見ていたんじゃよ」
「ふむ……」
本当に信じるかどうか微妙な次元の話だ。
事故が起きた現場にだけ、都合よく同席しているなんて有り得るのだろうかと思う研一であったが――
「……いや、長。隠居している身だというのに、ちょっと大物が出てきたら毎度毎度、嬉々として貴女が一番に飛び出していくでしょうが」
「これ、言うな! 儂が統治者としての落ち着きのない者と思われるじゃろうが!」
どうやら信じていい話らしい。
毎度のように大物の討伐に参加しているというのなら、事件の起きた現場に鉢合わせない方が、むしろおかしいだろう。
「んん、まあ、アレじゃ。乱痴気騒ぎには辟易しておるが、将来ある可愛い若者達が心配でな。どうしても放っておけず、ついつい様子を見に行ってしまうんじゃよ」
「単に、ご自身が暴れたいだけでは?」
「貴様は我が国の軍を預かる立場、儂の部下じゃろう! どうして儂の邪魔をする!」
「部下だからこそ。大事な客人との会談で、嘘や誤魔化しの情報を伝えようとする上司を見過ごす事なんて、我には出来ません」
「ええい、この堅物が! 暫く黙っておれ! ここは黒幕の統治者と洞察力に優れた救世主との、知恵比べの場じゃろうが!」
「理解しています。だからこそ、事前情報も少ない救世主様を、偽りの情報で混乱させるのは、我としては平等ではないと思うのです」
プロケラには、プロケラの正義がある。
とりあえずアーラが子どもに悪質な話を吹き込んだ件に関しては、ある程度、理解はしたものの、それはそれ。
重要な場であると解っているからこそ、出鱈目で曖昧な話なんて認められなかった。
面白かった、続きが見たい。
書籍化して絵が付いているところが見たい。
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