第429話 襲撃者の正体
「…………」
研一達の様子を確認していた残りの襲撃者達は、互いに目配せしたかと思うと、一斉に散開する。
どうやらこれ以上戦っても無駄だと悟り、逃げに徹する事にしたようだ。
「む、待て! 仲間達を置いていく気か!」
そこで逃げていく襲撃者に、プロケラが思わず声を上げる。
全員が同じ方向に逃げていたなら、プロケラには追い付ける自信があった。
だがさすがに飛天族最強にして最速だと自負しているプロケラとはいえ、バラバラの方向に逃げられては全員捕まえる事なんて出来ないし。
言葉通り、まだ戦う余力を残しているというのに、こんなあっさり仲間を置いていく事が許せなかったからだ。
「それでも誇りある――」
逃げる相手を全員追う事は出来ないものの、攻撃自体は十分届く距離。
撤退していく敵に背後から追い打ちを掛けるなんて主義に反するが、それでも仲間を置いていく卑怯者共には相応しい扱いだと攻撃しようとするプロケラであったが――
「いえ、ここは見逃しましょう。見張れる相手の数にも限度がありますし、尋問するだけなら、十分な数が居ますので」
やんわりとした態度で研一が止める。
さすがに逃げる相手を仕留めてしまえば、徹底抗戦するつもりだと思われ兼ねない。
まだ全容が何も見えてない状態で、話し合いの可能性を潰したくはなかった。
(こっちは余裕で撃退した上で見逃したって方が、話し合いになった時に有利だろうしね)
あくまで研一の目的は、この事件に隠されている秘密を知り、その果てに飛天族が人間などの他種族を、どう思っているか知る事だ。
別に黒幕や襲撃者達をボコボコにしたい訳じゃない。
(そんなのは全部知って、殴り飛ばした方がいいかと思ってからでいいしね)
襲ってきたから撃退しただけ。
まだ完全に敵対するかどうかの材料なんて、揃っていないし。
もう一つ、打算的な理由があった。
『センちゃん。アイツ等の位置、追えてる?』
『バッチリです! 今の所、問題なく補足してます!』
魔力制御や探知が苦手な研一と違い、センは魔力の操作に長けており。
一度戦って魔力を補足した相手ならば、相当な距離を追う事が出来る。
尋問出来る分は残っているのだし、あえて全員捕まえてしまうよりは、逃がした方が研一としては、色々と都合が良かったからだ。
「それより急いでコイツ等に話を聞きましょう。援軍でも大量に連れて来られたら、話している余裕もなくなるかもしれませんし」
「むう。救世主様がそう言うのならば……」
プロケラとしては同じ飛天族として、色々と許せないものがあるのだろう。
けれど、研一に言われて不承不承と言った様子で頷いた。
「む、救世主様? 話を聞くのではなかったのか?」
そこで言葉とは裏腹に、研一が背を向けた事に気付いて思わず疑問の声を上げる。
「いや、その、センちゃんの魔法を防いでいる防具とか外したり色々するんでしょう? さすがに敵とはいえ、女性の裸を見る訳にもいきませんし。話すだけなら、これで十分なので」
「ふふ、なるほど」
研一の態度にプロケラが嬉しそうに笑う。
問答無用で襲ってきた相手への対応と思えない気遣いが、おかしいやら嬉しいやらで、顔が緩むのを止められなかったのだ。
そして――
「これは、いや、馬鹿な。そんな事が――」
研一を待たせては悪いとばかりに、早速襲撃者の武装を解除しようと天狗の面を剥いだプロケラは、戸惑いを隠せない。
それもその筈。
「お前は第六部隊の……」
面の下に隠されていた顔は、プロケラの知っている相手だっただけでなく。
過去に魔具が不具合を起こした影響で、討伐に失敗して死んだ筈のかつての同僚の姿だったのだから。
「プロケラさん?」
「その、大丈夫ですか? ここからは私が心を読んで調べても――」
「あ、ああ。いや。君の力を使うかは、話を聞いてからだ。それに先に他に何かないか調べないと……」
あまりにも動揺した姿に研一達が思わず声を掛けるが、プロケラは気をしっかり保ち、死んだ筈の元同僚の装備を全て剥いでいく。
魔具の性能を看破する能力なんて持ってない以上、怪しい物は全て外すしかないからだ。
「おい。起きろ。貴様には聞きたい事が――」
そうしてプロケラが捕虜を起こして、尋問を開始しようとした声が半ばで止まる。
それどころではない事態が起きたからだ。
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