第424話 得する者
「さて、少々脱線してしまいましたが――」
これも勲章取っているから、漫画やアニメ全てが素晴らしい物だという印象操作でしかないのだが――
あえてプロケラの誤解を正す事無く、研一は話をここで区切る。
――あくまで漫画やアニメなんて娯楽のジャンルの一つでしかなく。
悪意を持って意図的に誰かを傷付けるように作れば、結局、娯楽や嗜好品とは言えない何か別の物へと変質する。
要は作り手の意識と使い方次第だ。
「じゃあそんな事して得するのは、一体誰なのかって話になるんですよ」
「む、確かにそうだ。羽の無い者達を悪いって流れにしただけでは、単に両者の仲が悪くなるだけで得なんてないからな」
今までの話は予備知識のようなものであり、本題ではない。
プロケラも話に流されて元々の話を忘れていた事に気付いて、意識を本来の話に戻していく。
「勿論、最初に言ったように何の裏もない事もあります。相手を下に見て優越感を得たいとか、反撃出来ない相手に苛立ちをぶつける対象にしているだけとか、どうでもいい理由の場合が、ほとんどでしょうし」
実際、大体の嫌がらせに大層な理由なんてモノはない。
気に喰わないから、嫌いだから。
それが攻撃理由になると思い込んでいる人間が、攻撃したい相手に後付けで意味を作る事が大半だ。
「ならば――」
「ただ俺は、今回の事は違うんだろうなって思ってます」
裏も無ければ黒幕なんて居ない。
そんな風に信じたいプロケラの言葉を強い声で研一は遮ると、更に話を続けていく。
「まず飛天族の方々が仲違いして得する可能性がある者についてですが、パッと思い付くだけでも二つあります」
「二つもか。我は一つも思い浮かばんが……」
「ええ。まずは飛天族を狙っている敵対勢力です。内部分裂して戦力が落ちてくれれば、外敵が侵略し易くなるでしょう?」
飛天族という精強な兵に加え、山の上にある雲の中にある国という立地。
これまで数々の侵略を跳ね除けてきた事から解かる通り、難攻不落の言葉に相応しいウェンティ国を正面から力任せで攻略する事は、非常に困難と言えるだろう。
「なるほど。仮に山の者達だけでも味方に引き入れる事が出来れば、一気に攻め易くなるだろうな……」
プロケラも気付いた。
もし山の者達が雲の上に住む者達に反旗を翻し、敵対勢力に協力する事でもあれば、状況は大きく変わる。
魔具という名の武器の整備も禄に出来なくなるし、食糧の補給も出来ない。
おまけに山に敵の中継拠点でも作られれば、いくら雲の上に国があるとはいえ、真下に敵の部隊が常に居る状態に晒される。
ウェンティ国を侵略しようと考えた場合、内部分裂を謀って山の民を懐柔していく事が、相当に有用な手である事は間違いない。
「という事は、二つの勢力とは人間と魔族の事か……」
研一の言葉に納得して頷くと同時に、プロケラの身体が僅かに興奮で震える。
ただの子どもの嫌がらせの話が、国の侵略に繋がっていた。
そう考えただけで、国を守る者として、興奮せずに居られなかったのだ。
「いいえ。それはどっちも敵対勢力という一括りです。俺が言うもう一つは、別にあります」
だが、研一はプロケラの情熱に水を差すように、静かな声で語る。
さっきの話は前振りでしかなく、本命は別にあるとばかりに。
「もう一つ、だと? それは一体――」
「飛天族の偉い人ですよ」
皆目見当も付かないと言った様子のプロケラに、研一は躊躇う事無く告げる。
まるで砂糖を舐めれば甘かったとでも言わんばかりの、当たり前の事でも言うような態度で。
「俺の居た世界にこんな事がありましてね。奴隷制度という物を作って、あえて自分達より下の好き勝手に叩いてもいい層を作る事で、上の政府側に文句が行かないようにしたんですよ」
どうしても人間は不満やストレスを覚えた時、それを自分の中で処理するのではなく、誰かにぶつける事で解決したがる。
そこで捌け口にされやすかった政府は、黙って倒される訳にもいかず、武力で制圧していた訳だが――
一方的に叩きのめしたのでは、倒した直後は恐怖で静まっても不満は募るばかり。
結局、時間を置いてすぐに反旗を翻される。
このままでは永遠に終わらない。
そこで一計を案じたのだ。
「効果は非常に大きかったみたいですね。そりゃあ返り討ちに遭うよりは、好き勝手一方的にボコれる方が気分もいいんでしょう」
解かり易い上に叩きやすいストレスの捌け口を用意する。
本当に心の底からの不満や正義感などで行動している者なんて、極々僅かだ。
反撃も出来ない立場の者を用意してやれば、わざわざ返り討ちに遭うような相手に挑む者なんて大幅に減り。
政府の狙い通り、反逆者は大幅に減った。
面白かった、続きが見たい。
書籍化して絵が付いているところが見たい。
何かしら感じてくれた方は、是非とも高評価してくれると嬉しいです。
また気楽にリアクションなどして頂ければ嬉しいです。




