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憎まれ救世主 ~異世界転移したら不遇なスキルを授かったので、悪役キャラを演じていたら、裏でモテモテハーレムになっていた~  作者: お米うまい
第九部 羽人と空の上にある国

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第422話 歪んだ勝ち方

「確かに子どもは意外と大人の言う事を聞いてたり真似したりしているものだが……」


 プロケラは戸惑いを隠せない様子で、何とか言葉を絞り出す。


 実際、親や身内に死ねだの何だの口汚い言葉を使う者が居ると子どもは意味すら解からないまま真似をするし。


 その言葉を聞いて慌てたり注意する大人の姿が面白かったり、自分の言葉に傷付く子どもに優越感のようなものを覚えて、余計に使いたがるようになっていく。


 あくまで偶然の産物。


 事故のような内容で子どもが嫌がらせをしていたのだと、プロケラは信じようとする。


 だが――


「そういう偶発的な話だったら、いいんですけど……」


 研一は消極的に否定する。


 そうやって希望的観測で話を進めていては、決して真実には辿り着けないとばかりに。


「……違うと言うのか?」


「出来れば俺の取り越し苦労だったらいい、とは思ってます」


 具体的な根拠や証拠なんて何一つない。


 だから研一の心配し過ぎという可能性は、十分にある。


「例えばあの子どもの言葉がやけに具体的だったのは、プロケラさんの言うように日頃からそういう事を言う大人が周りに居るから覚えてしまっただけ。そこに故意も悪意もなく、偶然だったという可能性は、十分あるでしょう」


 門前の小僧、習わぬ経を読むなんて言葉があるように。


 もし子どもの周りに毎日のように羽の無い者達への愚痴を垂れ流し続ける者が居れば、子どもだって話の内容を覚えて、具体的な罵倒をするようになるだろう。


(それはそれで嫌な日常風景ではあるけれど――)


 碌でもない環境なのは間違いないが、それでも意図的に子どもを洗脳しようとしているよりは、遥かにマシだろう。


 そういう可能性自体は十分に残っている。


「これは俺の世界の話なんですけどね。子どもとかに人気の物語を描いた漫画とかアニメっていう物がありまして……」


「冒険絵巻みたいなヤツか?」


「そうそう。それで大体合っています」


 漫画やアニメに付いてどう説明しようかと考えていた研一だが、プロケラが丁度良い言葉を挙げてくれたので、そのまま話を続けていく。


 ――ちなみに冒険絵巻とは、大まかに言えば絵本を巻物にしたような物だ。


「その冒険絵巻を発展させたような絵が動いて音も出る物をアニメと呼んでいてですね――」


 そこで研一はテレビや放送という概念を、プロケラに伝えていく。


 最初こそ理解に苦しんでいたプロケラだが、国中に念話で映像を送っているようなモノだと考える事で、大体の意味合いは伝わったらしい。


「それで、アニメの人気作を、昔は暗くなる前に家庭で放送するようにしていたんですよ」


「我が子どもだったら、絶対に見逃さないように急いで家に帰っただろうな……」


 プロケラの頭の中で救世主の活躍をモデルにした冒険活劇が瞬時に想像され、そんな世界に生まれたかったという気持ちが溢れ出てしまったように。


 羨ましさを隠しもしない、羨望の声が上がる。


「正に狙いが、そこにあったんですよ。ちょっと嫌らしい話になっちゃうんですが、そうしたら子ども達は暗くなる前に自発的に家に帰るし、アニメを夢中で見ているから悪戯とかしている暇もない。おまけに内容次第では情操教育にもなる」


「ほほう。救世主様の世界の方は、随分と頭が良いんだな。そんな娯楽があるなんて羨ましいとしか思わなかったよ」


 打算に塗れた話で嫌がられるかと思う研一だったが、どうやら研一が想像していたよりは、プロケラは柔軟な考え方をする者だったようだ。


 悪意なんて微塵もない、感心したような声だけを漏らす。


「ところが、です。これが想像以上に面白くて人気が出てしまいましてね。客が大量に流れてしまい、商売敵に当たる相手が困りましてね。どうしたと思います?」


「それは当然、もっと面白い物を作って客を奪い返すだろう?」


(やっぱりプロケラさんは、真面目で正道な考えをするタイプだし、そう考えるよね……)


 確かに真っ当に考えるのならば、プロケラの言葉が正しい。


 ただ誰も彼もが真っ直ぐに正面からぶつかるかと言えば、そんな事は決してない。 


「それだと結局、どっちが面白い物を作れるかの勝負を続けないと駄目ですからね。そんな面倒臭いし、勝算があるかも解からない事なんてやってられなかったんですよ。だから、もっと戦略的に戦う事にしたんです」


「む、では大人しく敗北を認めて商売変えか? 確かに大きな痛手を追う前に引くのは、戦略的に正しいと言えるが……」


 それはあまりに良い事ではない、とプロケラは考える。


 何故なら商売敵が居らず一強になってしまうと、知らず知らずの内に向上心がなくなったり、手を抜いていったりしてしまう。


 何気にプロケラは食べ歩きが趣味で、偶の休みには移動速度に物を言わせ、国中の飯屋で食事をしており。


 ライバル店が消えた途端、味が日に日に落ちていく店に何度か遭遇しているプロケラは、感覚的にその事を知っていた。


「そうじゃないです。面白さとは別の方法で勝ちを拾いに行ったんですよ」


 だが、研一は首を振って否定する。


 そんな潔い人間ばかりなんかで世界は回っていないとばかりに。


「それはどういう――」


「アニメなんてのは子どもが見る幼稚な物で、大人が見たら恥ずかしいって空気を作っていったんですよ」


 勝てるかどうか解からない戦いをするよりは、そもそも戦わずして決着を付ける。 


 それこそが戦略というモノだと、皮肉を込めて。

面白かった、続きが見たい。

書籍化して絵が付いているところが見たい。

何かしら感じてくれた方は、是非とも高評価してくれると嬉しいです。


また気楽にリアクションなどして頂ければ嬉しいです。



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