第414話 ラブコメなんて認めない
「美味しい……」
どうやらセンは蒸した鳥のような物が気に入ったらしい。
こちらは唐揚げのような油の強烈な旨みこそないものの、雷鳥の肉自身が持っている上品な脂の旨みに加え、まるで老鶏が持つ濃厚な出汁に似た肉の味が、噛み締める度にバチバチと口の中で何度も弾けては消えていく。
それは刺激的でありながら、どこか優しい味わいであった。
「気に入ってもらえたようで何よりだ。我が国の自慢料理だからな」
料理を楽しむ研一達の姿を見て、プロケラは本当に嬉しそうに笑う。
自慢気で誇らしさすら感じさせるその笑みには、良い国だろうという生まれ育った国へのプロケラの愛着が溢れており。
「ええ、これは誰かに勧めたくなる美味しさですね」
嫌味も何もなく、ただ自分の好きな物が相手に伝わって嬉しいと感じさせる温かいプロケラの笑い方に、研一も思わず笑みを返す。
(よかった。ちょっとは気分も晴れたみたいだ……)
それはプロケラの誇らしげな笑顔に釣られて、同じように笑った訳ではない。
出会った時は救世主相手という事で委縮しがちで、その後は子どもの件で曇りがちな表情をしていたプロケラが、今は心の底から笑っているように見えて嬉しくて。
プロケラが元気になってくれてよかった、なんて安堵から笑みが浮かんでしまったのだ。
「あ、う、その。喜んで頂けて嬉しく――」
眩しいまでの研一の微笑みに、プロケラは思わず目を逸らす。
プロケラは生まれ付き強い魔力を持ち、気が付いた時には、良くも悪くも国を背負っていく者として特別な存在として生きてきた。
だからだろうか。
自分と年齢の近い異性に、こんな顔で笑い掛けられた事が今まで無く――
初めての出来事に身体が過剰反応を引き起こす。
(う、なんだ? 身体の制御が覚束無いぞ?)
まるで休みなく全力で飛び続けたように心臓が早鐘の如く激しく動き出し、顔は火にでも焙られているように熱い。
それに、すぐに目を逸らして見ないようにしたのに。
先程少し見ただけの筈の研一の優しい笑顔が、頭に張り付いて消えてくれない。
「あの、大丈夫ですか?」
急に顔を反らしたプロケラを心配でもするように、研一が声を掛ける。
だが、その優しくも不安そうな声が、更にプロケラの心と身体を掻き乱そうとし――
「そういえばプロケラさん! さっき何か言い掛けてましたよね!」
どこか甘い空気が流れ出しそうになった瞬間、センがわざとらしく少し大きい声を上げる。
食事中に行儀が悪いなんて事は言ってられない。
そんな事よりも譲れないモノが、恋する乙女には色々あるのだ。
「私達を羽無しって言って馬鹿にしてきた子どもの件ですよね? 何か気になる事があったんじゃないですか?」
恋の芽は花開く前に刈り取る。
研一の隣は既に予約でいっぱいで、もう席なんて一つだって空いていない。
それならば、下手に期待を持たせて後で傷付くよりは、気付く事もないまま終わった方が何倍も良い筈だ。
なんて自分に言い訳して、センは研一とプロケラの間に生まれそうになっていた甘い空気を、真面目な話題で掻き消そうとする。
「あ、ああ。よければ救世主様にも、意見を伺いたく――」
(うう、心が痛む……)
けれど、この話題になるとどうしてもプロケラの表情は、大きく曇ってしまう。
先程までの嬉しそうな表情を知っているだけに、自分がプロケラが暗い顔をさせてしまった事に、センは気まずさを覚えずには居られない。
――ただ、実際にプロケラが研一に相談したかったのは事実で。
むしろプロケラからすれば、センから切り出してくれた事に感謝こそすれ、恨んでなんていないのだが、その辺を割り切れないのがセンの人の好さだろう。
面白かった、続きが見たい。
書籍化して絵が付いているところが見たい。
何かしら感じてくれた方は、是非とも高評価してくれると嬉しいです。
また気楽にリアクションなどして頂ければ嬉しいです。




