第409話 権力には権力を
「うるさい、俺達が守ってやってるから、羽無し共は生きていけてるんだ! 飯くらい喜んで渡して当然じゃん!」
「そうだそうだ! それが嫌なら、さっさと山から出て行けばいいんだ!」
だが、子ども達はどうしても認められない。
羽無しは自分達より下なんだから、好き勝手攻撃していいし、自分達に都合よく動くのが当然。
それこそが自分達のルールであり――
注意されたからって曲げたんじゃ、自分達が悪いとか負けたような気分になるから嫌だとばかりに、喚き散らしていく。
「それで彼等が本当に山から居なくなってしまえば、君達の御飯は誰が用意してくれるんだ?」
「う、うるさい! それ以上ごちゃごちゃ言うなら親父に言うからな!」
「そうだぞ! コイツの親は警備隊の隊長をやっていて、殴ったなんて知れたらお前なんかすぐに山に降ろされて、羽無し共と同じ扱いになるんだからな!」
尚も注意を続けるプロケラに、子ども達は切り札を繰り出した。
親は警備隊長だ。
これを言えば寺小屋の先生だって黙らざるを得ない、誰でも言いなりに出来る魔法の言葉なのだと、子ども達は今までの経験で知っていたのだ。
「ほら、嫌ならさっさと俺達に謝れ――」
この生意気な女だって、偉そうな態度なんて取れなくなって、嘘のように焦り出し。
それだけは止めてくれとばかりに、泣きべそを掻いて謝ってくる筈だとばかりに、子ども達は勝ち誇ったように笑うが――
「その様子だと、どうやら普段からそうやって家の事を持ち出して、好き放題しているようだな……」
子ども達の発言に、プロケラの気配が一気に変わる。
殴ったりしたものの、それでも最初からずっと怒りなんて微塵も無く、静かに言い聞かせるように話し掛けていた。
だが、そこで初めてプロケラの目に怒りと悲しみのようなモノが色濃く浮かぶ。
「我はプロケラ・ウェンティ。国軍、総司令を長から拝命している」
「コク? 難しい言葉使って誤魔化そうとしてんじゃねーぞ! 俺が親父に言えば――」
「それでは君達に解かり易く言おう。君達のお父さんの先生のような立場に当たる者であり、我が君の親を隊長として相応しくないと言えば、君のお父さんを隊長から辞めさせる事も、君達家族を雲の上に住めなくして、山に降ろす事も可能だ」
「は?」
プロケラの言葉に嘘はない。
この子ども達を家族ごと雲の国から追放するどころか、その気になれば処刑にする事さえ、難しくない。
警備隊を含めた全ての部隊の総司令であり。
同時に国名であるウェンティの魔法名を継ぐ国一番の魔法使いでもあるプロケラには、それ以上の権限が与えられているのだから。
「は、はは! 適当な事言って騙そうとしても無駄だぞ! 隊長ってのは部隊で一番偉いヤツで、俺の親父より上のヤツなんて、長のバッちゃんくらい――」
「ま、待って。俺、聞いた事ある。警備で動き回っているから滅多に街には居ないけど、隊長達の隊長みたいな人が居て、その人は他の隊長より派手な格好してるって……」
「隊長隊長言うな! ややこしいんだよ!」
「えっと、その、この人。お前の親父より本当に偉いかも……」
「なに馬鹿な事言って――」
そこで子どもは、プロケラの恰好を、初めてマジマジと見詰める。
今までは単に、いきなり殴り付けてきて偉そうに喚いてくるムカ付く女でしかなく、特に見た目なんて気にしていなかったのだ。
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