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憎まれ救世主 ~異世界転移したら不遇なスキルを授かったので、悪役キャラを演じていたら、裏でモテモテハーレムになっていた~  作者: お米うまい
第九部 羽人と空の上にある国

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第396話 変わる事、変わらない事

 大学を卒業した研一は身勝手な事件に巻き込まれ、恋人を失ってしまう。


 怒りと絶望の果てに死に掛けた研一だが、そこで現れた異世界の女神から、研一は願いを叶えてもらう事と引き換えに、魔族との戦いに身を投じる事となる。


 人間に悪意を向けられたら強くなるスキルと共に。


 だが、数々の戦いや出会いの果てに、突如として研一の前に現れた魔王こそ、魔族として転生した研一の恋人――


 鏡谷楓、その人だった。


 戦いとも言えない何かの果てに、楓は告げる。


 もっとこの世界の事を知って、それでも人間の味方をしたいなら教えて。


 研一が望むなら魔族を滅ぼしてもいい、私には研一だけが全てだから。


 そして、ようやく出会った二人は再び道を分かち――


 本当に魔族と戦う事が正しいのか。


 戦う理由を見詰め直す為の、新しい旅が始まるのであった。




   〇   〇


 


「お話は解かりました」


 楓の襲来後、楓とした話を研一は包み隠さず、サーラに事情を伝えていた。


 人間を裏切って魔族に就こうかどうか迷っているという話にしかならず、本来ならもう少しボカした方がいいだろう。


 けれど、異世界に来て色々世話になった上に、迷惑も掛けてきた。


 そんなサーラに取り繕った言葉で、誤魔化すような事を言いたくなかったから。


「私の立場を考えれば、人間の敵になるかもしれない貴方を、何としてでも引き止めるべきなのでしょうが――」


 サーラは研一の方に視線を向けながら、言葉を探す。


 気付いていたからだ。


 元々研一がこの世界に来て戦っていた理由が、楓を蘇らせる為でしかなかった事を、サーラは知っている。


 既に研一に魔族と戦う必要なんてないどころか――


 魔族の王こそが楓だと解かった時点で、誰に断る事無く、魔族側に就いてもいいのだ。


「貴方にも戦う理由があったとはいえ、ここまで戦ってくれていたのです。感謝こそすれ、私に止める権利なんてないでしょう」


 こうして全ての事情を話に来てくれた事こそ、研一なりの優しさや責任感の現れであり――


 そんな研一の気遣いを無視して、魔族と戦ってくれなんて、口が裂けたってサーラに言える訳がない。


「いえ、でもサーラさんが召喚してくれたから楓とも再会出来た訳で――」


 だからこそ、研一だってサーラを見捨てられないのだ。


 これでもしサーラが、お前の事情なんて知るか。


 呼び出した私の命令に従って、魔族も恋人も全員殺しまくれ、なんて言うような人間だったなら、研一は迷わず魔族側に回っていただろう。


「私の事はいいんです。それよりも、です。研一には聞きたい事があります!」


 研一もサーラも、お互いに気を遣うタイプだ。


 謝罪合戦になるかと思いきや、そんな事をしていられないとばかりに、サーラが僅かに怒りを滲ませ、声を張り上げる。 


「聞きましたよ! 貴方とセンちゃんの為に用意していた部屋を片付けるように、ベッカに指示したそうですね!」


 サーラが怒っている理由は、あまりにも簡単だ。


 研一がサラマンドラ国を出て行く準備を、当然のように始めている事を知っているからだ。


「それは、その。俺は魔王の知り合いの訳ですし、いつ魔族側に就くか解からないような状態ですよ。これ以上世話になって、迷惑を掛ける訳には――」


 ただでさえ研一は、能力の影響で評判が悪い。


 ここに更に魔王の恋人だったなんて情報が、もし世間にバレてしまったら、召喚した上に客分として部屋まで用意して住まわせていたサーラ達に、どんな支障があるか解からない。


 恩義を感じているからこそ、今の内に国を去ろうとする研一であったが――


「いつ、どこで! 誰が迷惑と言いましたか!」


 その優しさを全て察しているからこそ、サーラは声を張り上げる。


 ここで少しでも困った顔を見せたり、研一が決めたなら仕方ないなんて遠慮なんてしようものならば、本当に研一は国から出て行く。


 そして、二度と戻って来ない。


 今までの付き合いで、サーラは研一と人間を大なり小なり理解していた。


「いいですか! そのくらいで迷惑だと思うくらいなら、とっくに追い出してます!


 既に一部の国からは、あんな悪党を呼び寄せた責任を取れなんて、連日、苦情や非難が届いてますからね。


 なんて付け加えつつ、サーラは話を続けていく。


「もし研一が私達とは付き合い切れないとか、他にもっと厚遇してくれる場所が見付かったから出て行くと言うのなら、私は止めません。それが貴方に取っても、いい事だと思いますから」


「…………」


「で・す・が! 私達に余計な気を遣って出て行こうと言うのなら、全力で止めます! 当然、力では敵わないのは解かっていますので、もう足に縋り付いて全力で泣き叫んで惨めだろうと、私の全てを尽くして止めますよ?」


 いいんですか?


 やると言ったら本気でやりますからね?


 と言わんばかりに、少し涙目になってサーラは告げる。


「ええっと、その……」


 さすがに研一としても、色々と世話になっているサーラが本気で泣くところは見たくないというか。


 サーラじゃなくても、結構いい年齢した大人に、駄々っ子のように泣かれるのは、色々と辛いものがある。


「け、けどですね。実際俺が居ると迷惑に――」


 とはいえ、それくらいで引き下がるなら、最初から言い出さない。


 感情を無理やり押し殺し、サーラ達の為だと初志を貫徹しようとする研一であったが――


「そうですか。どうしても見たいんですね。私が! 国の党首でもある結構偉い立場でもある私が! 研一が恋人と再会出来て良かったと思いつつ、これで完全に失恋だなんて結構へこんでいる私が! 恥も外聞もなく、貴方に行かないでと泣いて縋るところを!」


「い、いえ。その、もう暫くお世話にならせて頂きます……」


 どう見ても本気にしか思えない涙目で叫ばれてしまうと、無視出来る訳もなく。


 頷く以外の道は、残されていなかった。


「……どうか、一人で何もかも背負い込まないで下さい。恋愛感情を抜きにしても、私にとって研一は、優しく尊敬出来る方で、何かあれば助けてあげたい人なのですから」


 ようやく聞き分けてくれた研一に。


 サーラは涙目のまま、自分の素直な想いを伝えるのであった。

面白かった、続きが見たい。

書籍化して絵が付いているところが見たい。

何かしら感じてくれた方は、是非とも高評価してくれると嬉しいです。


また気楽にリアクションなどして頂ければ嬉しいです。



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