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憎まれ救世主 ~異世界転移したら不遇なスキルを授かったので、悪役キャラを演じていたら、裏でモテモテハーレムになっていた~  作者: お米うまい
第一章 サキュバス達の住む場所

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第388話 剥がされた理性

「ええっと、楓? 大丈夫?」


 この楓の過剰過ぎる反応に、研一の顔に焦りが浮かぶ。


 というのも、だ。


(今回は何もせず帰ってほしいって、お願いを聞いてくれるだけでよかったんだけど……)


 いわゆる媚薬や興奮剤と呼ばれる次元の、本人の意志を完全に無視するようなドギツイ物では毒物判定される可能性を否定出来ないし。


 何より、いくら魔法でトラウマが取り除かれたと聞いても、楓が自殺した時の経緯を考えれば、そんな物は気持ち的に使いたくない。


「クエストさん! 話が違うじゃないですか!」


 だから、わざわざクエストに特注で作ってもらったのだ。


 ほんの少し、相手のお願いや命令を聞きたくなる程度の効能しかない薬。


 夜の営みに誘えない、あるいは誘っても素直に受けられない。


 そんな初心な恋人同士や夫婦が前に進む切っ掛けに使う、本当に軽い物を。


「いやいや、私はちゃんと指示通りに作ったさ! 君には悪い事をしたと思っているから、今回は悪戯心だって出してないよ!」


 研一達と同じように全員下の階に落ちており、急に話し掛けられたクエストが、誓って変な物は渡していないと否定する。


 実際に効能としては、少し気分が盛り上がり、好きな人の願いを聞きたくなる程度の効果しかない筈で、楓の反応はクエストだって予想外。


 一体何が起きているのかと慌てるが――


「……無意識に魔力で毒物を排除しちゃうなら、無意識に薬効だって強化されるんだと思う」


 そこで楓の口から確信に満ちた声で推測が語られる。


 自分の身体に起きている事くらい、自分が一番解かっているとでも言いたげに。


「楓、大丈夫――」


「全然、大丈夫じゃない!」


 心配して駆け寄ろうとした研一に、近付くなとばかりに楓は手を前に出し。


 もはや立っている事も出来ないと言った様子で膝を付く。


「ずっと会いたかった人と久しぶりに会って、あんなにいっぱいキスをして。それでこんな薬盛られて、平静で居られる訳ないよ……」


 ハァハァと荒く息を吐き。


 顔だけ上げて、熱っぽく潤んだ目で研一を真っ直ぐに見詰めながら、楓は更に言葉を重ねていく。


「ケンは、さ。女心ってモノを全く解かってない。本当ならプルケルさんを助ける時に、わざわざサーラさんの前でキスする必要なんてなかった……」


「それはどういう――」


 脈絡のない話に戸惑いながらも。


 咄嗟に聞き返そうとする研一の声を聞いている暇もないとばかりに、楓は言葉を重ねていく。


「コレだけの力の差があるんだよ。身構えている時ならともかく、驚いているケンと動けないプルケルさんを連れ去るなんて簡単だったよ」


 言われてみれば、楓の言うとおり。


 楓が部屋に入ってきた時、あまりにも魔力制御が上手すぎて、研一達は誰も楓が部屋に入ってきた事に気付いていなかった。


 もしあの時、不意打ちで攫われていたなら一瞬で終わっていただろう。


「でもね、嫌だった。センさんやサーラさんの顔を見て、一瞬で解かったよ。この二人はケンに恋をしてるって。そんな二人の前で力尽くでケンを連れ去りたくなんてなかった」


「……」


「ケンは私だけの物だって見せ付けたかった。だから二人の前でキスしたの」


 プルケルを助けるだけなら、研一とプルケルだけ連れて、三人だけで事に挑めばいい。


 全て解っていた上で、あえて二人に見せる事を選んだのだと楓は告げる。


「ケンはさ。私の事優しいって言うけど、そんな事ないよ。単にケンに嫌われるのが怖いだけ。ケンの隣に相応しい人間で居たいって思ってるだけ。本当の私は、独占欲と嫉妬に塗れた、どうしようもない女でしかないの」


「そんな事――」


「ケンが絶対に私を嫌いにならないって言ってくれたなら、多分私はセンさんもサーラさんも殺してる」


「あっ――」


 突如として放たれた、この戦いで初めてとなる本物の殺意に、センとサーラが息をする事も出来ないとばかりに、苦しそうに喉を抑えて膝を付く。


 二人は初めて知識じゃなくて、本能で実感した。


 楓が本気で殺す気で戦っていたのなら、一瞬で全員殺されており、本当に小さな虫でも潰さないかのような慎重かつ丁寧に、細心の注意を払って攻撃してくれていた事。


 圧倒的なまでの、生物としての格の違いを。


「本当はね、キスだけで済ませたくなかった。私はケンにならどこを触られても何されてもいいって証明したかったし、私だってケンが欲しかった」


「くっ――」


 直接殺意を向けられた二人だけでなく、クエストやベッカも立って居られないとばかりに膝を付く。


「ううん、今だって欲しい。私はケンだけの物で、ケンも私だけの物だって身体で確かめ合うの……」


 薬の影響で、抑えていた理性のタガが外れて来ているのだろう。


 今にでも研一を襲いたくて堪らないという飢えた獣に似た気配が、周囲を満たしていた。

面白かった、続きが見たい。

書籍化して絵が付いているところが見たい。

何かしら感じてくれた方は、是非とも高評価してくれると嬉しいです。


また気楽にリアクションなどして頂ければ嬉しいです。



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