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憎まれ救世主 ~異世界転移したら不遇なスキルを授かったので、悪役キャラを演じていたら、裏でモテモテハーレムになっていた~  作者: お米うまい
第一章 サキュバス達の住む場所

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第386話 狡いや卑怯は詭道における正道

「いいや、誤用なんかじゃないよ」


 楓の言葉に、研一は悪戯でもするかのように笑う。


 足元を掬われるは非常に間違われ易い言い回しであり、言葉通りに考えるならば、足ではなく、床や地面ごと引っ張られる事になってしまうだろう。


 だが、実際に床が抜けるとなれば話は変わってくる。


(全く、人の部屋だからって、研一も随分と無茶なお願いをしてくれますね……)


 地面にめり込んだまま動いてなかったサーラが、一気に魔力を高めて即座に魔法を発動する。


 研一が時間稼ぎしてまで待っていたのは、クエストの到着だけではない。


 気絶させられたサーラが意識を取り戻す事も期待しており、少し前に目覚めたサーラは、床にめり込んで気絶した振りをしたまま――


 部屋の床を炎で壊す機会を窺っていたのだ。


(それにしても我ながら呆れます。私の部屋を壊していいかなんて酷いお願いの方が、我儘を言って甘えてもらえているみたいで嬉しいなんて……)


 そんな指示、いつ出したのかと言えば当然センの念話だ。


 はっきり言って楓の力は圧倒的で、正面からマトモに戦えば勝ち目なんて絶対ない。


 少なくとも奇襲や不意討ちは必要と考えていたが、ベッカもクエストもバレてしまっていた。


「悪いな、楓。そもそも最初から四対一じゃなかったんだ」


 そこでサーラに仕掛けてもらう事にしたのだ。


 既に倒したと思って意識から外れており、楓本人ではなく、床の破壊に集中していればバレないかもしれないと一縷の望みに賭けて。


「謝らなくていいよ。四対一って勝手に言ったのは私だし、このくらいのハンデじゃ別に何も変わら――」


 ベッカが派手に動き回り、逆にクエストは最低限の動作だけで攻撃を交わしていたのも、単に攻撃を回避していた訳ではない。


 異なる二つの動きに意識を割かせて、少しでも奇襲を成功させる為。


 それでも楓の余裕を崩す事は出来なかったが――


 研一の策だって、まだまだ終わらない。


「か、楓様。け、研一様! 助け――」


 この部屋に居るのは、戦っている者達だけではない。


 もう一人、危篤の状態から回復したばかりのプルケルも残っており――


 民間人と言ってしまってもいい程の身体能力しか持たない彼女では、突然床が崩れれば、慌てて助けを求める以外に出来る事なんてない。


「くっ! やってくれたね、ケン!」


 そこで初めて楓の表情が悔しそうに歪んだかと思うと、非難するように研一の名を呼ぶ。


 気付いたからだ。


 ここで楓がプルケルを見捨てられず、助けに行く事まで見越しての、床崩し。


 楓の優しさに絶対の信用を置いているからこそ、あえてプルケルを巻き込んだ事に。


 事実、それを裏付けるようにプルケルを抱えて両手が塞がるタイミングを見計らったように、研一が楓の元へと飛び込んでいく。


「ごめん……。ここまでしないと勝ち目なんて全くなくてね」


「そこまでして勝ちたい!? ゲームでも勝敗が決まってるとか理不尽な負けとかが嫌いなだけで、別に勝ち負けに拘るタイプじゃなかったのに!?」


 作戦自体も姑息で卑怯なら。


 自分達の為に命まで賭けてくれたプルケルを利用するなんて、仁義も何もない外道の行為な事だって百も承知。


「悪い。どうしても人間側に居るか、楓に就いていくべきか、俺には選べなかったんだ……」


 それでも何もせず、楓に連れ去られる事だけは我慢出来なかったのだ。


 今まで色々と恩があるサーラ達を裏切るような事は、したくない。


 かと言って、逆に楓に魔族達を倒してくれとも言いたくないし。


 ようやく再会出来た楓と離れ離れになるのも嫌で。


「それなら形振り構わず戦ってみて、勝った方の流れに乗ればいいかなんて、我ながら滅茶苦茶だよね……」


 変な話。


 自分の意志じゃ何も選べなかったから、勝敗に全てを任せてみせたかったのだ。


 この圧倒的戦力差を覆せて勝てるのなら、暫くは人間側に居よう。


 無理だったなら魔族側に行くのも悪くない、出たとこ勝負の成り行き任せ。


「もう、ケンってそういうトコ、結構雑というか適当だよね」


 ここまで小狡い事をされているのに、仕方ないなあとばかりに楓は少し嬉しそうに笑う。


 知っていたからだ。


 研一は気が置ける相手には傷付ける事を恐れて必要以上に、優しく接する癖がある。


 逆に言うなら。


 信用している相手に程、甘えるように我儘や無茶を言うような事があり――


 これだけ卑怯な事を仕出かしても、楓なら自分を嫌いになったりなんてしないという、研一なりの愛情の裏返しのようなモノなのだと。


「それじゃあ未練なんて残らないくらい、徹底的に叩きのめしてあげるよ」


 両手が塞がっている上に、下の階への落下中という無防備と言ってもいい状態でありながら、それでも自らの勝利を確信して呟く。


 事実、この状態であろうと、今の研一の魔力では楓には傷の一つも付けられない。


 余裕があるのも当然と言えるだろう。

面白かった、続きが見たい。

書籍化して絵が付いているところが見たい。

何かしら感じてくれた方は、是非とも高評価してくれると嬉しいです。


また気楽にリアクションなどして頂ければ嬉しいです。



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