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憎まれ救世主 ~異世界転移したら不遇なスキルを授かったので、悪役キャラを演じていたら、裏でモテモテハーレムになっていた~  作者: お米うまい
第一章 サキュバス達の住む場所

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第375話 死んでも変わらなかった者

『ケンが知りたい事って、多分いっぱいあると思う。それでもこれだけは絶対に伝えておかないと、きっとケンは前に進めないと思うからさ』


 楓の方からは何も見えていないだろうに。


 黙り込んでしまった研一の反応も全て、お見通しとばかりに楓は言葉を紡いでいく。


『この世界の魔法でね、私はあの事件の記憶を全部変えてもらったの。あの時の事は私がした経験って言うよりも、そういう映画でも見たような感じでしか、もう思い出せない。そうしないと私は前には進めなかったから』


 消そうと思えば、事件の記憶を全て消す事も楓には出来た。


 けれど、それでは研一との思い出も、いくつも失ってしまう事になる。


 それならば体験した記憶ではなく、情報のような記録として事件を残してもらったのだ。


『凄く後悔したよ。事件の認識を書き換えてもらって、落ち着いた目であの時の事を思い出してみたら、ケンは別に私を避けてた訳じゃなかった。ただ傷付いた私を傷付けないよう、慎重になっていただけ』


 知らない男に汚されてしまった上に、抱き締める事さえしてくれなくなった研一の姿に、何もかも失ってしまったと思っていたけれど。


 本当に大事な人は、ずっと傍に居てくれたのに。


『ごめんね。信じてあげられなくて』


 何よりも大切だった研一に当て付けるような言葉を遺して、死んでしまった。


 それだけは、楓としては今も悔んでも悔み切れない罪だと思っている。


「楓は何も悪くない! 俺が! 俺がもっとしっかりしてれば――」


『違うよ、ケン。誰が悪いとか、そういう話じゃないんだよ。そういう考え方じゃ、絶対に答えが出ない事って、たくさんあるの』


 誰が悪いかなんて話を始めれば、事件の犯人が悪い以外の答えなんて有り得ない。


 研一も楓も、ただの被害者でしかないのだから。


『日本語の少し悪いところだね。罰を受けるべき罪と、不注意や能力不足による失敗も、全部一括りに悪いって表現しがち』


「罪と失敗?」


『そうだよ。ケンのは失敗の悪さ。罰を受けて裁かれないといけないような話じゃないの』


 だからさ、もう自分を傷付けないで。


 何も恨んでいないし、研一が後悔に塗れて自罰的に生きる姿なんて見たくないとばかりに、楓は優しく言葉を重ねていく。


「だったら、どうすればよかったんだよ! どうしたら俺達は、ずっと一緒に居れたんだよ!」


 だけど、そんな言葉で納得出来るなら、死にそうになるまで自棄酒なんてしないし、異世界に来て戦ったりもしない。


 何よりも――


「じゃあ何で楓は、あんな目に遭ったんだよ……」


 罰を受けるような罪も犯してないのに、こんな苦しい目に遭わないといけないなんて信じたくない。


 自分がトンデモナイ事を仕出かした。


 だから楓は苦しむ事になったんだと思わなければ、やってられなかった。


『世界まで変わったのにさ、ケンは優し過ぎるし真面目過ぎるよ。もっと適当に生きないと、いつか潰れちゃうというか、潰れちゃったから異世界に来たんだったね』


「うるさい……」


 死んでも変わらないなあ。


 そんな風に言いたげな楓の言葉に短く悪態を吐き、研一は誤魔化すように頭を掻く。


 多分、きっと研一が研一である限り、そこは変わらない。


 頑張っている者が報われてほしいという、研一という個性を作り上げている根源とも言うべき部分なのだから。


「プルケルさん! 自分が何やってるか、解かってるの!?」


 そこで慌てた様子のセンが部屋に入ってきた。


 プルケルに眠らされたベッカに治療を施し、ようやく駆け付けたのだが、そこに浮かんでいた焦りは尋常ではない。


 それもその筈。


「プルケルさんの力でこんな魔法を使い続けてたら、身体が保たない!」


 電話やインターネットが当たり前になってしまった現代の日本人には実感出来ないかもしれないが、本来は遠くの人間と会話をするなんて奇跡のような出来事だ。


 現代だって多くの機械に支えられて、ようやく実現している技術。


 それをたった一人で続けているプルケルの負担が、軽いなんて事は有り得ない。


「ええ、全て解かっているつもりですよ。きっと後三十分もしない内に、私の身体は砕けて死ぬでしょう」


 当然、魔法を使っているプルケル本人が気付かない訳がない。


 いくら濃度の濃い想いを浴びて一時的に魔力が増えているとはいえ、元々があまりにも弱過ぎる。


 全身には激痛が走っており、ここまで続けている事自体、奇跡と言えるだろう。


「ですが大恩ある魔王様。そして、我等サキュバスの為に心砕いてくれた研一様を引き合わせる事が出来たのです。私程度の命なら、十分にお釣りが来るというモノ」


 だが、身体の痛みなんかでプルケルは止まらない。


 世界を越えても変わる事無く、お互いを想う二人を繋ぐ事が出来るのなら自分の命なんて何も惜しくないし。


「サーラ様。こうして救世主様が裏切るかもしれない切欠を作ってしまったのは私です。どうか、この命で償うので、隠れ里への援助の約束は守って頂けないでしょうか?」


 最初から決めていたのだ。


 これを魔族やサキュバス全体の策謀ではなく、自分の勝手な暴走で終わらせる為に、命を捨てる事を。

面白かった、続きが見たい。

書籍化して絵が付いているところが見たい。

何かしら感じてくれた方は、是非とも高評価してくれると嬉しいです。


また気楽にリアクションなどして頂ければ嬉しいです。



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