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憎まれ救世主 ~異世界転移したら不遇なスキルを授かったので、悪役キャラを演じていたら、裏でモテモテハーレムになっていた~  作者: お米うまい
第一章 サキュバス達の住む場所

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第372話 恋愛と共に生きる者

「そうですか。研一様が、あの方の想い人……」


 あまりの事に驚き過ぎて、動けなくなっているセンを置き去りに。


 プルケルは決意を固めたような表情を浮かべたかと思うと、躊躇う事無く動き始める。


「そ、そんな事させない!」


 心が読めるセンには、プルケルが何をしようとしたのか一瞬で伝わった。


 今すぐサーラの部屋に入って楓が生きている事を研一に教えて、研一を魔族達の住処へと案内しようとしているのだ。


 慌ててセンはプルケルの腕を掴む。


「私もセン様のお味方をしてあげたい。ですが、今代の魔王様には私の無理な願いに応えて正規兵を差し向けてくれた以外にも、大恩がありまして……」


 そこで更にプルケルの想いが伝わってくる。


 そもそも本来なら救世主が現れたと言っても噂程度の話では、魔族達の本拠地から正規兵を派遣するまでには至らない。


 それなのにサキュバスの事情を知った今の魔王は、正規兵を寄越してくれただけでなく――


 誰よりも救世主を早く発見して報告してくれたという功績扱いにしてくれ、人間達に襲われないように、隠れ里に結界を張ってくれたのである。


「で、でも! それなら結界なんて張らずに魔族達の居る場所に迎え入れてくれたって――」


「番いの居ない状態の魔力に乏しい我々なんて、魔族達の中に居場所なんてありませんよ。むしろ魔族の地に連れて行かなかった事こそ、あの方が我々に配慮してくれた証拠でしょう」


 あんな場所に放置している魔王相手に、果たす義理なんてないと告げるセンの言葉を、プルケルは迷いなく否定する。


 番いとの交流の為に尽力してくれている研一達より、尊敬していたサキュバスクイーンであるルクシリアの娘であるセンよりも――


 今代の魔王にもらった恩の方が遥かに大きいのだ、と。


「そもそもセン様。この情報を研一様に伝える事を止める権利など、誰にもありはしません。あの方こそが誰よりも知るべき事でしょう?」


「それは、そうなのかもしれない、けれど――」


 プルケルの発言を否定出来る言葉は、センの中にはない。


 だって、セン自身が迷ってしまっているのだ。


 自分の気持ちだけならば、研一が何かの切欠で事実を知るまでは、自分から積極的に伝える義理も義務もないと考えてしまう、女として自らの恋を優先したい自分が居るのは事実。


 けれど――


(あんなに頑張ってきた研一さんに、この事を伝えて喜んでほしいって思う自分も居る……)


 今まであんなにも苦しんで、頑張ってきたんだ。


 そろそろ少しくらい報われる事があってもいいんじゃないか、という研一の努力を見続けてきた仲間としての自分も、センの中には同時に存在していて。


「ふふ。いくら私より魔力が強くても、迷って動けないようでは意味がありませんよ」


 心の乱れが腕を掴んでいたセンの力を、僅かに緩めてしまった。


 その隙を突いてプルケルは腕を振り解くと、そのままの勢いでサーラの部屋へと向かう。


 迷いなき動きの裏にはあるのは、別に魔王への恩だけではない。


(真に愛し合っている者こそが結ばれるべきなのです! セン様には申し訳ありませんが、楓様の登場で終わるような関係ならば、それは間違いだったという事!)


 これでセンが番いである研一を失い、将来的に魔力を補充出来なくなって、死ぬ事になったとしても。


 それも恋愛と共に生きるサキュバスの宿命。


 センの研一への想いが本物というならば、誰が来ようと跳ね除けて、隣を勝ち取るべきだというのが、プルケルの主張だからだ。


 このまま研一に楓の事が伝わってしまうかに見えた。


 その時だった。


「させるか!」


 サーラの部屋に入ろうとしたプルケルに、金髪で長身の女戦士が襲い掛かる。


 この国の警備隊長であり、サーラに忠誠を誓っているベッカだ。


 さすがに救世主である研一達との会見を邪魔する事こそしなかったが、だからと言って魔族であるプルケルを監視もせず野放しする訳もなく――


 ずっと隠れて見張り続けていたのだ。


「貴様に悪気がないのは、話を聞いていたから知っている! だが、その情報は、あまりに危険だ! 止めさせてもらうぞ!」


 ベッカは数少ない、研一の事情を知っている人間だ。


 だから気持ち的には楓の所在を伝えてやりたい部分もあるが、それでも研一が人類を裏切って魔族側に着く可能性を考えたら、あまりにリスクが高過ぎる。


(悪いな、研一! 姫様と話し合って、然るべき時期に必ず伝える! 恨むなら私を恨め!)


 サーラの為ならば、人を殺す事さえ躊躇わない、忠誠心の鬼であるベッカに迷いなんてモノは微塵もない。


 全力でプルケルを取り押さえに行く。


「ふふ、知っていましたよ。貴女が隠れて私を見張っていた事は!」


「だろうな! だが、貴様程度の力で私から逃れられると思うなよ!」


 心を読めるサキュバスに奇襲が通じない事なんて、百も承知。


 だが、ベッカは肉弾戦に置いてはサラマンドラ国一の戦士であり、逆にプルケルは戦闘においては素人同然。


 読まれていたところで、取り逃す筈がない。


「ふふ、甘いです! 今の私は貴女が思っている程、弱くありませんよ!」


「何!? 馬鹿な――」


 ただし、それはサーラと謁見した時とプルケルの力が変わっていなければの話。


 プルケルは凄まじい魔力を放ち、一撃でベッカを眠りへと誘う。


「異性の体液だけでなく、夢をも糧にして力を増す事から夢魔や夢喰いなどと呼ばれる事もある我等サキュバスですが、本当は食べているのは夢を見る時に発生する想いでして」


 番いから与えられる体液とは違い、想いは一時的に力が増すだけ。


 だが、センとサーラ二人の恋心という、あまりにも芳醇過ぎる想いを連続して浴びた今のプルケルの力は、瞬間的には党首級にすら届き兼ねない。


 だからこそ、迷いがあったとはいえ、身体能力だけならば、既に下手な党首よりも強いセンの拘束を振り解く事が出来たのだ。


「待っ――」


 そして、センとベッカという二人の邪魔者を追い払ったプルケルを止める者は、最早どこにも居ない。


 研一の取り戻したかった恋人は、この世界に居るという情報を持って。


 プルケルがサーラの部屋へと向かう。

面白かった、続きが見たい。

書籍化して絵が付いているところが見たい。

何かしら感じてくれた方は、是非とも高評価してくれると嬉しいです。


また気楽にリアクションなどして頂ければ嬉しいです。



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