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憎まれ救世主 ~異世界転移したら不遇なスキルを授かったので、悪役キャラを演じていたら、裏でモテモテハーレムになっていた~  作者: お米うまい
第一章 サキュバス達の住む場所

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第370話 それは既に恋ではなくて

「俺は――」


 今の今までサーラの気持ちや献身に全く気付かないくらいに鈍感だが、これが愛の告白だと気付かない程には、研一だって愚かではない。


 反射的に答えを返そうと口を開くが――


「きっと研一は知りませんよね? 実は私って研一を召喚した時には、既に婚約者が居たんですよ」


 サーラは返事を聞こうともせず。


 世間話でもしているかのような愛想の良さそうな笑みを浮かべて、言葉を被せていく。


「と言っても国で一番魔力が高い男で、私との間に生まれる子だったら、魔力総量が期待出来るって理由だけで決まってた相手でしかなくてですね……」


「サーラ、話を――」


「むしろ早く婚姻関係を結んで、次の党首候補を育てるべきだと、こちらから何度も持ち掛けたのに断られていましたので、正確には形だけの婚約者候補ですけどね」


 研一に名前を呼ばれても、まるで気にした様子も見せず。


 貼り付けたような笑顔を浮かべたまま、サーラは語り続ける。


「覚えていますか? フェットという名の商人を。彼が私の婚約者だったんですよ」


「フェットって――」


(え? あの脂ぎった、悪徳商人を実体化したような中年のオッサンだよな?)


 あまりに予想外な婚約者の正体に、研一は驚きを隠せない。


 センを地下に監禁していた奴隷商人のような男であり、見た目的にも性格的にも、どう考えてもサーラに釣り合う相手には思えない。


 むしろフェットの方が無理やり権力欲しさにサーラにでも迫りそうな印象しかなく、研一は信じられないとばかりに。


 サーラを振るフェットの姿を思い浮かべる。


「あんな小悪党の男にさえ、地位も魔力も持っているのに袖にされてしまうくらい、魅力のない女です。世界を救う偉大な救世主様に、振り向いてもらえない事なんて解かっていますから」


 だから、気にする事なんてありませんよ。


 と言わんばかりに全てを諦めているような、寂しそうな顔でサーラは笑う。


(振り向いてもらえないなら、せめて重荷にだけはなりたくないですから)


 サーラだって自分の事をどう思っているのか、聞きたくない訳ではないのだ。


 振られると解かり切っていたって、せめて自分みたいな女に好かれて嬉しかったのかくらいは知りたくはある。


 けれど、振るような言葉を言わせては研一は心を痛めるだろう。


 それならば、どちらも最小限の傷で済ませようとしたのに。


「覚えてますか? 初めて会った日の時の事。貴方に迫れたのは別に覚悟があった訳じゃないんです。本当はあんな中年男と初めてを迎えるくらいなら、まだ研一との方がマシだって思ってただけ」


 言葉が溢れ出して、止められなかった。


 こんな話をしても困らせるだけだと頭では解っていても、出会った頃から今まで抱いてきた全ての気持ちを吐き出さなければ収まらないとばかりに、声が漏れていく。


「どうせ国の為、あの男と遅かれ早かれ、子どもは設けないといけない。それならばまるで絵本の中から出てきたような男との方が遥かにって、最初は本当にその程度だったんです」


 お世辞にも見た目が整っているとは言えない、中年との初夜を控えていた身。


 仕方ないと諦めていた中、突如として現れた絵本の中から出てきたとしか思えない、この世界では珍しい黒髪黒目で、自分と同じくらいの若い男。


 そんな男が世界を救ってほしいなら、身体で払えと迫ってくる。


 世界の為なら仕方ない。


 いっそこの人との子どもが出来れば、国の為とはいえ、あんな男と結ばれなくても済むかもしれない、と縋るような想いもあったのだろう。


「でも、触れてもらうどころか目の前で吐かれて。あの時は本当にショックでした」


「う、それは本当に申し訳ないと――」


「解かってます。亡くなってしまった恋人と重ねていたんですよね? こちらこそ、傷口を抉るような事をしてしまって、ごめんなさい」


 それなのに吐かれて、裏切られたような気分になって怒りを覚えた事はある。


 けれど、どうしても嫌いには、なれなかった。


「でも、自分でも不思議なんです。そんな失礼な事されたのに、私が自殺しようとしたと勘違いして、貴方が気遣ってくれた時の顔が、ずっと離れなかったんですよ」


 乱暴で、他人なんて自分の欲望を満たす道具みたいな事しか言わない癖に。


 言葉とは裏腹に、必死で心配してくれている時の顔の方が、妙に馴染んでいるように見えて、忘れられなくて。


「その後も滅茶苦茶な事ばかりして。貴方は酷い人なんだ。変な期待や理想なんて抱くなって自分に言い聞かせても、それでも心配してくれた時のあの顔こそが、貴方の真の姿なんじゃないかって気持ちが消せなくて――」


 否定しようと悪いところを探そうとすればするほど。


 悪党にしか思えない態度や言葉とは裏腹に、自分達を守ろうとしてくれる姿ばかりが見えてきた。


「おかしい、ですね。こんな事言って、困らせる気なんてなかったんです。貴方の迷惑にも重荷にもなりたくないから。ずっとずっと、貴方が恋人を蘇らせて、元の世界に戻るまで。貴方の事を嫌いな振りを続けようと思っていたんです。本当ですよ」


 そして、全てを知って悪党の振りをしていただけだと知った時。


 研一が世界を救う為に、似合いもしない悪党の振りをして苦しみ続けるなら。


 恋人の為に誰でも踏み躙るなんて言っておきながら、必死で犠牲を最小限に抑える為に、自分一人で傷付こうとするなら。


「貴方を癒す事も抱き締めて上げる事も出来ないのなら、私も貴方と同じ傷を負って生きていこうと、決めていたのに……」


 自分は研一への想いを、一生隠し続けて生きていく。


 裏でどれだけ研一に協力しようとも、それは全て世界を守る為に仕方ないから嫌々協力していると嘯いて。


 それこそがこの優し過ぎる人に自分が返せる、唯一の献身だと覚悟していた筈なのに。


「ごめんなさい。全部バレちゃって、もう貴方に隠さなくてもいいんだって思ったら、途端に抑え切れなくなっちゃいました」


 どこかスッキリした表情で涙を零しながら、サーラは告げる。


 振られるなんて解っていても。


 困らせるだけだと解っている筈なのに、それでも止められないとばかりに。


「全てを知ったあの日から。ずっとずっと、私は貴方の事だけを愛していました」

面白かった、続きが見たい。

書籍化して絵が付いているところが見たい。

何かしら感じてくれた方は、是非とも高評価してくれると嬉しいです。


また気楽にリアクションなどして頂ければ嬉しいです。



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