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憎まれ救世主 ~異世界転移したら不遇なスキルを授かったので、悪役キャラを演じていたら、裏でモテモテハーレムになっていた~  作者: お米うまい
第一章 サキュバス達の住む場所

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第364話 自分の事しか考えてない人間って、本当は少ない

「思ったより大変だったな……」


 クエストとの実験を終えた研一は、誰に言うでもなく声を漏らす。


 スキルの影響で身体能力が大きく強化されているし、自動回復の効果もあるから、肉体的な疲れは皆無と言っていい。


 問題は精神的な気疲れの方だ。


(何かこう、思っていた以上にちゃんと実験だった……)


 一度魔法を放っても、それで終わりではない。


 再現性を確かめる為に同じように魔法を使うように指示され、少しずつ条件を変えたりしながら、その都度質問してくるのだ。


 これが想像していた以上に、精神的にクるモノがある。


(しかもあのクエストさんが物凄い真剣にしてるから、気を抜けないんだよな……)


 かと言って協力すると約束したのは研一だし。


 何よりもクエストが、普段からは想像も出来ないくらい、真面目な態度だったのだ。


 最初は難色を示していたセンでさえ途中からは全く口を挟めない程にクエストの気迫は凄まじいの一言で。


 あの破天荒にも程があるクエストのそんな姿を見せられて、手を抜くとか途中で止めるなんて出来る訳もなく。


 研一の集中力に限界が訪れ、これ以上は実験結果にブレが起きるという理由で、今日の実験は終わったのである。


(凄いとしか言いようがない……)


 しかも、クエストは研一との実験が終わるなり、次は周囲の調査の続きだと言って、休みもせず砂漠に向かっていったのだ。


 慌てて後を追ったセンすら、置き去りにし兼ねない程の勢いで。


 その溢れんばかりの行動力と探求心には、研一も感心するしかない。


「お疲れ様です」


 そんな無限にでも体力のありそうなクエストと違い。


 見るからに疲労困憊といった雰囲気の研一に声を掛けたのは、プルケルであった。


「その、人間というのは、皆さん。あんなにも活力に溢れた方が多いものなのでしょうか?」


「クエストさんが特別なだけですよ。さすがに普通は、あんなにずっと動き続けられませんよ」


「それはよかった。もし番いの方にあんな勢いで求められたと思ったら、応えられるかどうか不安だったもので……」


「そ、そうですか」


(何というか返答し難い……)


 研一が知っているサキュバスと違い潔癖で真面目そうな部分もあれば、当たり前のように性的な話題も振ってくる。


 イマイチ判断のし難い相手に、戸惑って動けない研一にプルケルが口を開く。


「それで研一様。何でも、辛い事がおありだったようで。私であれば痛みも苦しみも、その時の記憶さえ消し去る事も出来ますが、如何でしょう?」


 それは魔法による精神的な苦痛の除去。


 辛い過去やトラウマを解消するには、とても有効な手段なのかもしれないが――


「んー、俺は別にいいかな」


 研一は躊躇う事無く、プルケルからの申し出を断った。


 隠れ里の問題解決に向かって協力している研一への、プルケルなりのお礼だとは解っていたが、どうしても受け入れ難かった。


「……解かりません。どうして貴方様もクエスト様も、お受けになってくれないのです? やはり私達が信用されてないという事でしょうか?」


「クエストさんがどう思っているかは知らないけど、俺は別にプルケルさんの事を疑っている訳じゃないよ」


「でしたら、どうして? 痛みや苦しみをそのままにしておいても、良い事なんてないでしょう?」


 心というモノを大事にするサキュバスという種族にとって、心の傷は肉体の傷と似たような扱いだ。


 痛みや苦しみは消えるに越した事はないと思っているし、トラウマなんて肉体の欠損と同じように思っている。


 だから、治せるのに放置する事が理解出来ないのだ。


「んー、確かに泣きたくらい辛い事はあるし、忘れたい記憶だってあるよ。だからプルケルさんの魔法を受けるのもさ。別に絶対に無しって訳じゃないんだ」


「それでは――」


「たださ。そういう痛みや思い出を失くして戦い続けられるほど、俺って強くないんだよ」


 研一だって、出来るのなら辛い事なんて何もかも忘れてしまってもいいんじゃないか、と思わなくはない。


 ただ、これは綺麗事でも何でもなく、研一は自分の為だけに頑張れる人種じゃない。


「よく人間ってさ。自分の事以外考えてないとか、人の為に生きられる人間なんて居ないって言うけど、それって違うんだよ」


 むしろ人間なんてのは、見栄と面倒臭さの塊だと研一は思っている。


 自分の為だけに真剣に行動出来る人間なんて、どれくらい居ると言うのか。


 テスト勉強しなければマズいとか、良い成績取ってた方が楽だと解っていたって、サボってしまうし。


 身嗜みを整えたり、筋トレでもして逞しい身体でも作っていた方が何かと受けはいいと解っていたって。


 ただ自分の為だけに自分を高められる人間なんて、きっと一握り。


(評価されたいっていう見栄か、周囲に溶け込めないと面倒な事になるから仕方ないって理由で動いている人間が、ほとんどだろうね)


 もし何もしなくても文句を言われず、生活が保障されるのなら。


 きっと自分はダラダラと時間を無駄に過ごしていくだけだろうし、他の人も似たようなものじゃないだろうか、と研一は思う。

面白かった、続きが見たい。

書籍化して絵が付いているところが見たい。

何かしら感じてくれた方は、是非とも高評価してくれると嬉しいです。


また気楽にリアクションなどして頂ければ嬉しいです。



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