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憎まれ救世主 ~異世界転移したら不遇なスキルを授かったので、悪役キャラを演じていたら、裏でモテモテハーレムになっていた~  作者: お米うまい
第一章 サキュバス達の住む場所

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第352話 追放という名の自由

「やれやれ。君が心を読めるのは知っているが、私が口にしても居ない事を、勝手に語り出すのはマナー違反だろうに……」


 クエストは言外にセンの言葉は正しいと認めつつ。


 それでも大した事でもないかのようにセンに目を向ける事もせず、周囲の調査作業を続けていく。


「私だからよかったが、あまりそういう事はしない方がいい。深い霧の奥にはドラゴンが潜んでいる、なんて言うだろう?」


 これ以上、好奇心で踏み込んでくるな。


 余計な事をしたせいで、要らないトラブルを招きたくないだろう、とクエストは自分を怒らせるなとばかりに言葉を投げ付ける。


 だが――


「真の宝はドラゴンに挑む者にしか手に入らない、とも言いますよ」


 そんな言葉で引くようなら、最初からこんな話題を振ったりなんてしない。


 何よりもこの状況になっても、クエストの心の声は、まだセンに聞こえてこないのだ。


 これで警戒するなという方が難しい。


「…………」


 二人の間に沈黙が生まれる。


 突き放すような言葉とは裏腹に、まるで何事もないかのように調査を続けるクエスト。


 睨み付けるようにクエストを見詰め続けるセン。


 普段なら気にもならないような弱い風の音だけが、妙に強く二人の鼓膜を叩いていく。


「ふう。今となっては本当に大した話ではないんだけどね……」


 張り詰めていく空気に耐え兼ね、口を開いたのはクエストだった。


 下手に隠す方が面倒になると思い、自分が研一に抱いていた想いを語る事にする。


「救世主の魔力を研究したいってのは本心だよ。人類の窮地に異界から現れる、特殊魔法の使い手。魔法の研究対象として、これ程の検体は滅多にお目に掛かれないだろうからね」


 神から授かったという魔力は、果たしてどんな属性で、どんな効果や現象を引き起こせるのかという魔法への興味もあれば――


 別世界から来たという部分だって非常に興味深い。


「何より私としては常々思っていた。魔法というのは基本的に、子どもへと遺伝する。それならば、救世主との間に子をたくさん儲ける事が出来れば、世界の命運を左右する救世主の力を持つ子どもがたくさん生まれ、魔族なんて簡単に根絶出来るのではないか、と!」


 そして、たった一人で戦況を覆す程の力を持つ救世主。


 この力を増やす事が出来れば、あっという間に世界は平和になってくれる筈だという思惑があったからこそ、積極的に子作りをしようと誘っていた部分もあったのだ。


「…………」


「ああ、解ってる解ってる。私としては女好きの救世主様に好印象を与えつつ、将来的な戦力増強の一挙両得の作戦のつもりだったが、嫌われたり避けられたりして、研究に支障が出る方が困る。子作りの件は、暫く諦めておくよ」


 研一と子作りなんて絶対に許さない、とばかりに睨み付けるセンを軽くなだめつつ。


 クエストは話を続けていく。


「ただ、そういう研究とかとは別に、闇野研一っていう個人に興味もあったんだ。あの堅物テレレを手玉に取った悪党ってのが、どういう男なのか、さ」


 クエストに取って、自分の国の党首であったテレレという存在は色んな意味で特別な相手だった。


 戦闘力は自分の方が上。


 薬の知識だって、外に出て研究を重ねる前。


 ドリュアスを追放される前から、自分の方が詳しかったと自負している。


 けれど――


「テレレは凄い奴でね。力でも知識でも私の方が絶対に上の筈なのにさ。どうしても私の方が優れてるって思わせてくれない。この女には勝てないって思わせてくる、そんな雰囲気を持った女だった」


 そういう能力的な部分ではない。


 人間としての格のような面で、どこまで行っても敵わないような気持ちにさせられる、憎たらしい相手であり――


「けどね。悔しい事に、それが悪い気分じゃないのさ。コイツになら勝てなくても仕方ない。むしろ、ずっと私の上で居てほしい。そんな気分にさせる女でね」


 同時に。


 閉鎖的で下らない連中しか居なかったドリュアスという国で、クエストが唯一人、好意を抱き尊敬していた相手でもあった。


(まあ、だからこそ、あの生き方が気に喰わなかったんだけどね……)


 自分が唯一認めている相手が、下らない規則や風習に縛られ、あまりにも、つまらなさ過ぎる生き方をしている。


 それを見続けるのが嫌で、ドリュアス国の党首が代々守り続けてきた霊薬、万病を治癒し、身体を若返らせ寿命を延ばすと謳われた『ドリュアス』を奪い――


 その失態を原因に、テレレを失脚させようとした事がある。


 ――と言っても、半分くらいは飾るだけで研究もしないなんて勿体ないだろう、という理由だったが。


(私の狙いも全部お見通しで、逆に私が追放させられてしまったんだけどね!)


 だが、テレレはクエストの企みを全て知った上で、わざとクエストに霊薬を盗ませ。


 追放という名目で、退屈で閉鎖的なドリュアスの国から、クエストが思いのままに研究に励める場所へと抜け出す、切欠を作ってくれたのだ。


(ああ、本当に敵わない女だよ……)


 おそらく自分は一生、テレレに勝てないのだろう。


 別に勝ち負けに興味があった訳ではないが、そう確信させられるのには十分で。

面白かった、続きが見たい。

書籍化して絵が付いているところが見たい。

何かしら感じてくれた方は、是非とも高評価してくれると嬉しいです。


また気楽にリアクションなどして頂ければ嬉しいです。



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