第339話 押し強研究者、クエスト
「嫌がる女を無理やり俺色に染め上げてやるから、面白えんだろうが。自分から股開く女なんか願い下げだ」
そもそも研一の女好きの噂は、恨まれる為に作った出鱈目なモノ。
噂を利用して女性の身体を弄ぶような事なんてする気もなく、しつこく迫られない為にも、完全にクエストの身体に興味がないとばかりに振る舞う。
「そういう趣味だったか。では、好きに乱暴してくれたまえ! 代わりに事が済んだら、君の身体を調べさせてくれればいい!」
そんな言葉で諦めるような人間なら、いきなり服なんて脱がないだろう。
クエストは誘惑するようなポーズを止めたかと思うと、殴り掛かって来いとばかりに両手を広げ始めた。
「ああん? テメェ、話聞いてなかったのか? 自分から求めてくるようなヤツなんて、やってもツマラネェって言って――」
「安心してくれ! 私に甚振られて悦ぶような趣味はない。出来れば気持ち良くお互い納得した上で絡み合いたかったが、君がそういう趣味というなら譲歩しよう。その痛みと苦痛と引き換えに、貴重な救世主の身体を調べられるなら安いものさ!」
どうやら最初の提案は、それなりに恋人同士のような情事を求めていたらしい。
けれど、優しくしてくれないなら、それで構わない。
研究の方が大事だ、というのがクエストの考えらしい。
「だから後遺症が残らない程度に好きに私を痛め付けながら、自由に私の身体を使って楽しんでくれ! いや、そちらの好みに合わせて言うなら、私の身体を君色とやらに、染め上げてくれたまえよ! さあ、早く! 今すぐに!」
(え、ええー……)
研一としては、完全に当てが外れた動きに困るしかなかった。
研究者だし理屈っぽい部分が見え隠れしているから、それじゃあ自分の身体を調べる対価になんてならないと告げれば――
少なくとも身体以外の代案を出してくると思っていたのだ。
ここまでゴリ押しして来られると、悪党演技を保ったまま断る方法が、咄嗟には出てこない。
「クエスト!」
どうするかと動きを止めた研一を助けるべく、サーラが声を上げる。
サーラは表面上では研一の事を嫌っている振りをしているが、研一の事情は全て把握しており、裏では色々と手助けしてくれているのだ。
――ついでに言えば、ベタベタと研一に裸で迫るクエストに、いい加減ムカ付いてきたという部分も大きい。
「貴女が起こした問題行動の後始末を引き受け、研究費用も出す代わりに、救世主に協力するという契約だったでしょう!」
この短い時間でも片鱗が見えているように、クエストは相当に問題がある人物だ。
どれくらいヤバイ人物かと言えば、過去には研究材料が足りなくなったからと言って城の一部を勝手に破壊して持っていったり、国の宝を勝手に宝庫から盗み出したり。
処刑されてもおかしくない規模の事件を、いくつも引き起こしているという、国際規模の指名手配犯だったりする。
「約束を破る気なら、貴女を探している国に身柄を引き渡してもいいんですよ!」
それを一国の党首であるサーラが身元預かり人になり、まだどこの国にも連絡していないから、拘束もされていないだけ。
各々の国に連絡すれば、すぐにでも転移陣を使って捕まえに来るだろう。
「う、解かったよー。そんなに怒らなくてもいいじゃないか……」
そして、本気でサーラとベッカの二人が動けば、余所から人が来るまでもなく、拘束されてどこかの国に引き渡されるのは確実。
それくらいは理解しているクエストとしては、さすがに引き下がるしかない。
「けど、救世主君が調べてもいいって言ったら調べるのは、いいんだろ?」
「その辺の話し合いは、各々でして下さい。私の関与するべき場所では、ありませんから」
とはいえ、諦める気はないらしい。
もう迫ってくる事は止めたようだが、それでも隙あらば研一の身体を調べてやろうとばかりに、虎視眈々と研一に視線を向けている。
「で、お姫様? このイカレタ研究者様は、何が出来るんだ? 俺は一緒に戦える相手が欲しいんであって、暴走変態脱ぎ女なんか寄越されても迷惑なだけなんだが?」
この短いやり取りの間に、研一にはクエストへの苦手意識が生まれていた。
本人に直接聞けばいいと解っているのだが、どうしても話しかけ難く、あえて少し離れた場所に居るサーラに問い掛けたのだが――
「ふふ、その言葉を待っていた!」
クエストは話しかけられてもいないのに叫び出したかと思うと、両手に魔力を集め始める。
それは下手な魔獣なら触れるだけで消し飛ぶ程の大きさで、党首になっていてもおかしくない力の持ち主というのも納得の強さだ。
そして――
「百の論文よりも、一の実験と言うだろう! 一度戦ってみようじゃないか、救世主様!」
やはり実際に受けてみるのが、一番解かり易い。
全力で救世主の魔力とやらをぶち込んでくれたまえ。
なんて、最初のインドア全開のイメージは、どこへいったのやら。
やる気満々に勝負の提案をしてきたのであった。
面白かった、続きが見たい。
書籍化して絵が付いているところが見たい。
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