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憎まれ救世主 ~異世界転移したら不遇なスキルを授かったので、悪役キャラを演じていたら、裏でモテモテハーレムになっていた~  作者: お米うまい
第六章 救いのポヨポヨビースト!

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第328話 一つの死体と共に戦いは終わった

「クケー!!」


 だが、長く空の覇者として君臨してきたエコーバードは気付いていた。


 体力を削り合っていくジリ貧の展開になれば、そんな微弱な強化の違いが、次第に大きな差を生んでいく事に。


 時間を掛ければ負けるだけなら、もうここで決着を付けるしかない。


 横薙ぎに攻撃を続けていては、いつまで経ってもポヨポヨビースト達に致命傷を与えられないのなら、横ではなく縦。


 空から地面に向けた攻撃で致命傷を穿つべく、空高くへと舞い上がる。


 もはや視認する事すら叶わぬ高度。


 音速を超える速さを持ってしても必中は難しく、外せば地面に嘴が突き刺さり、大きな隙を生んでしまうだろう。


 それでも、最大火力で短期決戦に出る以外に、勝機はないとばかりにエコーバードは覚悟を決める。


「ポヨ!」


 空気の変化にポヨポヨビースト達も捨て身の攻撃が来る事を確信して、身構えた。


 いくら痛みが薄れてきているとはいえ、体力も魔力も十分じゃない。


 エコーバードの決死の攻撃が直撃すれば耐えられないだろうし、今の状態では避ける事も難しい。


 このまま特攻が始まれば、数に勝るエコーバードに軍配が上がる。


 エコーバードが三十体死ぬ代わりに、ポヨポヨビーストも三十体倒され、二十体のエコーバードが残る単純な引き算になってしまう。


 ただし、このまま行けば、の話だ。


「ウチの国で、随分と好き勝手やってくれたみたいじゃん……」


 エコーバードは知らなかった。


 ポヨポヨビーストが研一に殴り飛ばされて飛び始めた時よりも僅かに早く、全力疾走でメロディが街に向かっていた事を。


 とはいえ、気付いたところで気にも留めなかっただろう。


 メロディの力はエコーバードの群れからすれば些細という程に微力だったし。


 いくらメロディの足が魔力で強化され相当に早い方だとはいえ、それでも研一に殴り飛ばされて数分で移動する事に比べれば、あまりに遅過ぎた。


 まだ街に着くには、一時間以上掛かってしまう。


 それだけの時間があれば、ポヨポヨビーストとエコーバードの戦いは終わってしまう。


「ここまで時間稼ぎしてくれたら、十分じゃん」


 だが、そもそもそんな戦い。


 最初からなかったのかもしれない。


 この戦はソヌスの街を守れれば勝利であり、どちらが現状では強いかかなんて、誰も競ってなんていなかったのだから。


「これで狙えるよね、やみのん、ミュジカ」


 この距離まで近付けば、ミュジカには劣っているメロディの力でも、レーダーの役割をする事くらい出来る。


 そして、位置が正確に解かり、空高く飛び上がって街に被害が出ない、遠距離から全力で狙い撃ってもいい状況。


 この千載一遇の好機を作る為に、ポヨポヨビースト達は追い詰められるまでは相打ちを狙おうとせず、ただ必死で耐え続けていたのだ。


 そして――


『おう。バッチリだぜ、メロディ』


 ポヨポヨビースト達を街に飛ばし終え、メロディに遅れる形で研一と共に街に向かっていたミュジカが、音魔法で声を伝える。


 メロディよりは街より遠い場所だが、それでも山の頂上よりは遥かに街に近い位置。


 この距離にメロディから照準の指示にセンの補助もあれば、研一やミュジカからすれば十分に有効射程。


 当てるどころか、一網打尽にする事さえ不可能じゃない。


「いくぜ、相棒!」


「ああ、解ってるよな?」


「勿論!」


 二人の全力の攻撃がソヌスの空に放たれる。


 音の衝撃波が触れる物全てを砕き、大気すら捻じ曲げて空を駆け――


 触れるだけで全てを消滅させると思える程の莫大な魔力の奔流が、雲さえ吹き飛ばしていく。


 そして――


「クケ……」


 何体かのエコーバードが音の渦に巻き込まれて全身を砕かれて墜落し、やはり何体かのエコーバードが魔力の波に呑み込まれて姿を消した。


 あまりにも突然の出来事に、エコーバード達は空に浮かんだまま動けなかった。


 自分達は今から、あの丸っこい奴等に決死の攻撃を仕掛ける筈だったのに、何が起きたのか解からなくて。


 だが、倒されたのは十体程度。


 しかもあまりに突然過ぎて何が起きたか解かっておらず、竜巻か何かのような自然災害でも巻き込まれたのだろう、と考えたエコーバードは――


 まだポヨポヨビースト達よりも数は上だし、気を取り直して突撃しようとする。


 その瞬間だった。


『余計な事すんじゃねえよ。次は全滅させるぞ』


 エコーバードの全身に、死を確信させる音が響いた。


 それは幻聴でなく確かにエコーバード全員の心臓を一瞬だけ締め上げ、慌ててエコーバードはソヌスの街から離れていく。


 それが最後の警告であり、これ以上ソヌスの街に何かをするなら、容赦はしないという警告だと正しく受け取り。


 そして――


「ポヨヨ!」


「ポッヨッヨー!」


 脅威が去っていく事を感じたポヨポヨビースト達が、嬉しそうに飛び跳ねて弾むような声を上げる。


 もう大丈夫だよ、安心して。


 まるで戦いを応援していた人間達に、そんな言葉を伝えるように。


「逃げた、のか?」


「アイツ等も喜んでるみたいだし、そうなんじゃないか?」


 空高く飛び上がったまま、いつまでも戻ってこないエコーバード。


 何よりも戦っていた時と違い、無邪気に跳ね回るポヨポヨビースト達の姿に勝利を確信して。


「やったぞー!」


「俺達は救われたんだー!!」


 隠れていた建物の影から飛び出し、喜びを分かち合う。


 ある者は歌い、ある者は叫び。


「お前等のお陰だ!」


「ありがとう! ありがとう!」


 ある者は熱情に身を任せるように、ポヨポヨビーストに抱き着いた。


 それは乱暴で無遠慮で、かつてポヨポヨビースト達が夢見ていたような優しさに溢れた抱擁とは程遠い、勢い任せのモノであったのだが――


「ポヨ! ポヨ!」


 誰も自分達を恐れていない。


 仲間だと認めてくれたような扱いは、望んでいた光景よりも遥かに幸せに溢れていて。


「ポヨー!!」


 喜びのあまり。


 この人達に食べてもらいたいという想いが爆発して、一体のポヨポヨビーストが突然叫んだかと思うと、満面の笑顔を浮かべて死んでいった。


「きゃああ! 急に死んだわよ!」


「きっと鳥達の戦いで限界だったんだ!」


「癒しの歌だ! 残っている体力と魔力、全部を急いでコイツ等に注げ!」


 まさか自死したなんて想像出来る訳もなく、慌てて街の人間達が治癒効果のある歌を歌い始める。


 見当外れに放たれる治癒の歌声。


「ポッヨポッヨ!」


 そして、そんな街の人達に自分達は大丈夫だから心配しないで。


 なんて必死で伝えようとしながら、それでもどこか嬉しそうに響くポヨポヨビーストの声に包まれながら。


 戦いは終わりを迎えたのであった。

面白かった、続きが見たい。

書籍化して絵が付いているところが見たい。

何かしら感じてくれた方は、是非とも高評価してくれると嬉しいです。


また気楽にリアクションなどして頂ければ嬉しいです。



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