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憎まれ救世主 ~異世界転移したら不遇なスキルを授かったので、悪役キャラを演じていたら、裏でモテモテハーレムになっていた~  作者: お米うまい
第六章 救いのポヨポヨビースト!

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第326話 外野の影響

「ポヨヨ……」


「クケ……」


 あれから二時間ほどが経過し、戦いは膠着していた。


 数を減らすだけでは意味がなく、仕方なく回避に徹するポヨポヨビースト。


 捨て身になってまで攻撃に移れないエコーバード。


 どちらも決め手に欠け、時間だけが過ぎていく。


「ちくしょう! 期待させるだけ期待させやがって! 結局無駄じゃねえか!」


 その緊張に最初に堪え切れなくなったのは、ミュジカを貶して研一に投げ飛ばされた男であった。


 一体もエコーバードを倒せてない事に焦れ、このままでは結局、自分は殺されるという恐怖に耐えられず、それが悪態となって口から飛び出す。


 助けに来てもらった上に、自分は建物の影に隠れて何もしていないというのに、あまりにも浅ましい言葉だろう。


 だが、自分が助けられる事は当然であり、相手への感謝や労わりなんて感情を持ち合わせていない人間なんて、どこの世界にでも居る。


「ポヨ……」


 けれど、心無い言葉が与える影響は本人達が思っている以上に大きい。


 こんな人を助ける為に、戦っているのかという迷いと落胆。


 それが人々を守りたいという、ポヨポヨビーストの戦闘意欲を大きく削いでいく。


「クケー!!」


 そして、心の乱れは、そのまま表に現れて隙に繋がった。


 集中力を欠いて動きに乱れが出始めた事に気付いたエコーバードが、この好機を逃すまいと一斉に攻撃を仕掛けた。


「ポヨっ……」


 持久戦の疲れに、迷いまで加われば交わし切れる訳もない。


 今までは何とか避け切れていた筈の攻撃が、ついにポヨポヨビースト達の身体を捉え始め、身体が削られていく。


 均衡は、崩れ始めていた。


 このまま続けば、近い内にポヨポヨビースト達は敗れ去るだろう。


「ポヨォ……」


 ただ倒されるまで逃げ続けていては、無駄死にだ。


 それならばせめて、少しでも道連れにした方がマシだろうか、という想いが過ぎる。


 と同時に、ポヨポヨビースト達に、疑念が湧き始める。


(ケンスとミュジカの話は、嘘だったの?)


 街には心優しい人が大勢居て、仲良くなって受け入れてもらえれば、たくさんたくさん撫でてもらえると聞いていた。


 そして、ポヨポヨビースト達がこれまで出会ってきた人間。


 ミュジカにケンス、センに研一にメロディ。


 それに警備隊の人達だってそうだ。


 時に喧嘩したり殺されそうになったりもしたけれど、それでも全員が良い人で、こんな人達がたくさん居るのが街だと思っていた。


 今までの出会いに恵まれ過ぎていたからこそ、ポヨポヨビーストは人間を愛し、人間が大勢居る街に憧れすら抱いていたのに。


 それが崩れ始めていた。


「クソが! どうせ勝てないんなら、せめて俺達が逃げる為の囮にくらいなれって――」


 もしこの心無い声さえなければ、きっとポヨポヨビーストは半日くらい持ち堪えた。


 そうすれば、研一達が救援に間に合っていただろう。


 たった一人の身勝手な人間。


 自分の弱さや不甲斐なさに目を向けられず、他人にぶつける事しか出来ない愚かさがソヌスの街を崩壊に導くかに思われた。


 その瞬間だった。


「……ばれ」


 罵倒よりも遥かに小さく、か細い声が空気を震わして消える。


 その音はあまりに弱く頼りなく、耳の良いポヨポヨビースト達でさえ聞き漏らしかねない程だった。


 だが―― 


「頑張れぇ、ぽよぽよぉーー!!」


 次に放たれたイノの懸命な叫びを、聞き逃す筈がない。


 あそこには、自分の仲間が命を賭けてでも守ろうとした子が居る。


 その事実が崩れかけていたポヨポヨビーストの気持ちを奮い立たせ、迷いが振り払われた結果、鈍り始めていた動きが精彩を取り戻していく。


 たった一人の罵倒が心を崩す事もあれば、懸命な応援一つに心を満たされる事もあるのだ。


「いけぇー、ぽよぽよぉー!」


「ポヨ!」


 自分の声に応えてくれるように、元気になっていくポヨポヨビーストの姿に、イノの声が熱を帯びる。


 少なくともイノだけは守らねばと、ポヨポヨビースト達がイノを守るように、イノの居る檻を囲むように集まっていく。


「この間抜け共が! そんなガキじゃなくて俺を守れ――」


「黙れ! もう我慢ならねえぞ!」


 尚も身勝手な言葉を続けようとする男を、別の声が遮断した。


 メロディが党首になるまでは国一番の権力者の子どもであり、今もソヌスの国において多くの畑の権利を持っていて、逆らえば面倒な事になる。


 それが解っていたからこそ、他の者も何も言えずに居たのだが、周囲からも声が上がる。


「そうよ。私達の代わりに戦ってくれてるあの子達に、感謝の言葉もないの!」


「テメェ! 俺を誰だと思って――」


「普段はデカイ口ばかり叩く癖に、いざって時には喚き散らすしか出来ない無能で没落するのが当然な、役立たずだろうが!」


 もう畑はエコーバードに荒らされて滅茶苦茶だし、生きるかどうかの瀬戸際。


 もはやゴミカス程度の意味しかない権力を恐れるよりも、ただただ不快な言葉を垂れ流す男の声を聞き続ける方が堪えられない。


「大体、アンタ等がミュジカちゃんに余計な事さえしようとしなきゃ、あの子が今も街を守ってくれてたでしょうに!」


「そうだそうだ! それを自分達の思い通りにならなかったからって、次は化け物の子だの何だのと喚き散らしやがって!」


「見なさいよ、あそこで戦ってくれてる子達を! あんな必死で子どもを守ろうとしてくれる子達に慕われているような子が、化け物の筈ないでしょ!」


 そして、溜まり続けてた不安が爆発したように、口々に男への非難が溢れ出す。


 そもそも街でミュジカを悪し様に罵っていた者達は、先程の男と取り巻きだけであり――


 権力者に目を付けられるのが面倒だから、誰もミュジカを表立っては庇わなかっただけで、最初からミュジカを嫌いな人間なんて。


 自分達がソヌスの街を再び牛耳ろうと目論み、その計画をメロディに潰されて逆恨みしていた者達くらいしか居なかったのだから。

面白かった、続きが見たい。

書籍化して絵が付いているところが見たい。

何かしら感じてくれた方は、是非とも高評価してくれると嬉しいです。


また気楽にリアクションなどして頂ければ嬉しいです。



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