第325話 ポヨポヨVSエコーバード
「ポヨヨ……」
ソヌスの街に降り立ったポヨポヨビースト達は、街の様子に戸惑いを隠せなかった。
街の入り口には、引き抜かれた柵の傍に原型も留めない程にグチャグチャになった肉塊が転がっており、周辺に散乱した警備兵達の死体をエコーバード達が啄ばんでる。
「来るな! こっちに来るなー!!」
「ぽよぽよ! ぽよぽよーー!!」
街の中心からは人間の悲鳴や押し殺すような声が聞こえ、隠れている人間達を引き摺り出そうとエコーバードが建物に群がってるだけでなく――
開けた場所には自分達の同族が、檻のような形になって死んでいた。
「ポヨ……」
目の見えないポヨポヨビーストに、これ等の光景を直接見る事は出来ない。
けれど、街全体の様子を把握しても余りある高過ぎる聴覚が、嫌でも伝えてくる。
人間の恐怖と絶望。
そして、エコーバードの興奮と悪意を。
「ポヨーーーー!!」
想像していた以上の地獄絵図に、驚いて動けなかった時間は一分にも満たなかった。
すぐに動揺は怒りに変わったからだ。
まるで街中に居る全てのエコーバードに聞こえるように、ポヨポヨビースト達が全力で吼える。
こっちを見ろ。
お前達の相手は、ここに居るぞ。
「クケー!」
その叫びに反応して、大量に振り注いできたポヨポヨビーストに、僅かに戸惑っていたエコーバード達も動き始める。
エコーバードは人間達に手を出す事を一端止めると、ポヨポヨビースト達との戦いに備えるように、空に集まっていく。
「ね、ねえ。勝てるの?」
「解からねえよ。どっちの方が強いかなんて……」
はぐれポヨポヨの件で、ポヨポヨビースト達が自分を助けに来てくれただろうとは思う街の住人達であったが、警備兵でない彼らに両者の戦力なんて解からない。
おまけに街に飛んできたポヨポヨビーストの数は三十体。
対するエコーバードは五十体と数では負けている上に、先程、はぐれポヨポヨが抵抗もせず死んだ場面を見ているとなれば、不安に駆られるのも仕方ないだろう。
「クケ……」
だが、かつて手も足も出ずに追い払われたエコーバード達は知っている。
ポヨポヨビーストは一体で自分達、四体分くらいの力を持っており、おまけに集団戦を得意としているのだ。
勝っているのは数だけであり、戦力的には大きく劣っている。
「クケー!」
住人達が固唾を呑んで見守る中、先に攻撃を仕掛けたのはエコーバードだった。
鋭い嘴を最大の武器としているが、名前の通り『エコー』、音の反響によって多くの情報を得る特性を持っており、秘めている膨大な魔力任せに、音魔法を使うくらいは出来る。
威嚇するようにエコーバード達が音波攻撃を放っていく。
魔力の弱い人間なら頭痛や耳鳴りを覚え、立っていられなくなる程の苦痛を伴う威力を秘めた一撃。
「ポヨョョョ……」
けれど、それはポヨポヨビーストの身体を震わせる程度の効果しかない。
身体が揺れるせいで鳴き声が変になる事を、面白がらせる以上の意味はなく、蚊に刺された程度の苦痛を与える事さえ出来ない。
だが――
「クケ?」
こんな攻撃が効くなんて、エコーバードだって思っちゃいなかった。
牽制程度の軽い一撃でしかなく、特に意味なんて求めてなかった筈の攻撃が、エコーバード達に想定していなかった情報をもたらす。
どうやらポヨポヨビースト達は体力も魔力も、相当に消耗しているらしい。
「クケ」
「クケケ!」
山から街まで高速で駆け付ける為、相当な無理をした事が原因であったが、エコーバード達は別の意味に解釈した。
やはり街を覆っている柵は、ポヨポヨビースト達には絶大な効果があるのだ。
この場所ならばポヨポヨビースト達に怯える事無く、自分達は安全に暮らしていける。
ならば、ここで引く道理はない。
「クケー!!」
消耗している今こそポヨポヨビースト達を討ち取る最大の好機だとばかりに、エコーバードが本腰を入れて襲い掛かる。
低く地面スレスレの位置に移動したかと思うと、魔力の込められた嘴を突き出して、回転しながらポヨポヨビーストに突っ込んでいく。
いくらポヨポヨビーストでも直撃すれば身体を抉り取られ、大ダメージを受けるだろう。
「ポヨ!」
だが、ポヨポヨビーストは身体を平たく潰れさせる事で、あっさりと回避した。
最高速度は音速にすら達する事があるエコーバードだが、その速さ故に小回りは利かず、動きは直線的で読み易いからだ。
「クケケ!」
それでもエコーバードに焦りは、なかった。
普段のポヨポヨビーストなら、避ける事なんてせずダメージ覚悟で身体で受け止め、同時に反撃してくる筈。
やはり相当に弱っている。
今この時以外に勝てる機会はない、と確信する。
「ポヨヨ……」
対するポヨポヨビーストは、困っていた。
自分達が突然大量に現れれば、エコーバード達は逃げ出さないでも、もっと慎重に動くと想定していたのに、思っていた以上に積極的だ。
これでは体力も魔力も、回復させている暇がない。
おまけにエコーバードが数に任せて次々に攻撃を仕掛けてくるものだから、合唱するような形で音魔法を放つ隙が無いのだ。
音魔法は基本的に、複数の音を組み合わせる事で力を最大限に発揮する。
仲間達との協力なしで音魔法で攻撃したところで、エコーバードに効果なんて期待出来ず。
かといって、被弾覚悟で反撃すれば相打ちする程度の体力しか残っていない。
「ポヨ……」
敵の数の方が数は多い以上、相打ちでは全てのエコーバードは倒し切れない。
そして、エコーバード一体でも、ソヌスの街の住人達を屠るには十分な戦力である以上、玉砕覚悟で数だけ減らしても意味がない。
手詰まりであった。
面白かった、続きが見たい。
書籍化して絵が付いているところが見たい。
何かしら感じてくれた方は、是非とも高評価してくれると嬉しいです。
また気楽にリアクションなどして頂ければ嬉しいです。




