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憎まれ救世主 ~異世界転移したら不遇なスキルを授かったので、悪役キャラを演じていたら、裏でモテモテハーレムになっていた~  作者: お米うまい
第六章 救いのポヨポヨビースト!

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第321話 絶望のソヌスの街

「クケー」


 時間は僅かに遡る。


 気配を消しソヌスの街の遥か上空を飛んでいたエコーバードが、嬉しそうに声を出す。


 研一達が街を出て反響の山に向かった事を確認し、街にもう自分達と戦えるような強い存在が居ない事に気付いたからだ。


「クケケ……」


 魔獣は全てソヌス国周辺から、居なくなってしまったのではないかと思うだろう。


 確かに並みの魔獣はポヨポヨビースト達を恐れて、ソヌスの土地を離れた。


 だが、空の覇者とまで呼ばれたエコーバードだけは、ずっと潜み待ち続けていたのだ。


 ポヨポヨビーストに侵略されない、新しい住処を手に入れる機会を。


「クケ?」


「クケークケー」


 その狙い続けていた場所こそ、ソヌスの街。


 人間という餌が豊富にある上に、畑には食べ物だって実っている。


 おまけに街を囲っている柵を、ポヨポヨビースト達は乗り越えられないという、エコーバードから見れば天国のような立地条件であった。


「クケー!!」


 エコーバードは急降下すると偶然開けた場所を歩いていて少女、イノを掴むと、そのまま空高くへと舞い上がる。


 お腹自体は空いているが、イノを食べる気はない。


 食べて空腹を満たすには小さくて食い応えに欠けるし、魔力強化の糧になる程の魔力量だって持っていない。


 だが――


「助けてー! おとーさーん! おかーさーん!!」


 こうして見せ付けるように掲げて飛び回っていれば、その内、新しい人間が出てくる。


 エコーバードは人間との戦いの歴史の中で、釣り餌に似た概念を学んでいたのだ。


「離して、アナタ! イノが!」


「落ち着け! 暫くはああやって俺達を誘き出す為に見せ付けるが、命までは取らない……」


 慌てて飛び出そうとするイノの母親を、夫であるこの国の警備隊長が止める。


 エコーバードの狙いは、建物の中に隠れている人間を引き摺り出す事であり、捕まえたイノを殺したり食べる事ではない。


 暫く命を取られる事は、ないだろうが――


(無事で居られるかは別の話だって事は、俺だって解ってる……)


 更に激しく悲鳴を上げさせる為に、腕や足をもがれるかもしれない。


 死なない程度の高さから地面に叩き付けられ、助けに来る人間が現れるまで放置される事だってあるだろう。


 あくまで殺す気がないだけであり。


 悲惨であればあるほど、人が寄ってくる可能性が上がる事をエコーバードは知っているのだから。


 ――そこで力加減を間違えて死ぬ可能性がある事くらいは、警備隊長だって気付いており、知っていて妻には知らない振りをするしかなかった。


「クケケ?」


「ああーー!!」


 人の気配が大量にあるのに誰も出てこない事を感じて、エコーバードが不思議そうに捕まえているイノの身体を軽く握る。


 それだけで骨にヒビが入り、イノが激痛に悲鳴を上げる。


(この数では、メロディ様が居たところで……)


 今にも飛び出して行こうとする己の妻を抑え込みながら、警備隊長は音魔法を使って周囲の様子を確認する。


 エコーバードの数は約五十体。


 メロディと街の兵士全員が力を合わせれば、五体くらいまで何とか戦えるかもしれないが、その十倍の戦力。


 ましてやソヌス国最強の戦力であるメロディは現在、街には居ないのだ。


 もはや出来る事なんて、エコーバードが諦めて飛び立ってくれる事を願うだけ。


『隊長、もう我慢出来ません! 俺が――』


『馬鹿者! お前が助けに飛び出しても、すぐに食われて終わりだ。そして、味を占めたアイツ等が、街に居座る事になる』


 激痛に悲鳴を上げるイノの身体を、エコーバードが見せ付けるように振り回す。


 あえて低い場所を飛んでいるが、取り返せるなら取り返してみろという誘いだろう。


 それが解っていても、警備隊長だからこそ動けない。


 自分の大事な娘の為とはいえ、それで街全てを壊滅に導くと解っている行動に出る訳には、いかないのだから。


(くそう! 何で俺の子ばかり、こんな目に!)


 だからと言って、心の中まで冷静で居られる訳がない。


 二年程前に息子であるケンスを亡くしており、もう一人の子どもであるイノまで、今まさに命の灯が消える瀬戸際なのだ。


 本当なら妻を抑えている腕を娘に伸ばしたいし、警備隊長こそ誰よりも娘であるイノを助けに飛び出したいのだ。


「誰か! 誰か娘を! イノを助けて!」


 すぐ近くでで人形のように揺らされる愛娘の姿に、イノの母親が悲痛の叫びを上げる。


 もはやイノは激痛と叫び疲れでグッタリして声すら上げておらず、早く治療しなければ、更なる危害を加えられなかったところで命に係わるだろう。


(だが、俺の私情で街を危険に晒す訳には――)


 それでも警備隊長は動けない。


 もしエコーバードの狙いが、街の占拠そのものだと知っていれば、迷いなく警備隊長は娘であるイノを助ける為に飛び出していただろう。


 運が良ければ、イノを助ける事が出来るかもしれないし。


 自分が囮になっている間に、仲間達に街の外に助けを呼びに行くように指示する事だって出来た筈。


 だが、残念な事にエコーバードの目的なんて解かる訳もない。


 このままイノは死に。


 街はエコーバードに好き放題に荒らされ、滅びる。


 筈だった。


「ポヨー!!」


 そこに、本来なら街に居る筈のない者の声が響いた。


 たった一体。


 群れから離れ、とある目的で街の傍を徘徊していた、はぐれのポヨポヨビーストがイノを救うべく、エコーバードに襲い掛かる。

面白かった、続きが見たい。

書籍化して絵が付いているところが見たい。

何かしら感じてくれた方は、是非とも高評価してくれると嬉しいです。


また気楽にリアクションなどして頂ければ嬉しいです。



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