第320話 決着と共に――
「大体、メロディさん!」
ポヨポヨビースト達が迷いで動きを止めるのを見て、何度目かになる攻撃を仕掛けていく。
研一は気付いていた。
メロディが言葉という搦め手で戦いを終わらせようとする最大の理由は、想定以上に身体能力の差が大きいからだ。
だからこそ、メロディは周囲に居るポヨポヨビースト達を一体も殺す事も出来ず、逃げ回って時間稼ぎしか出来ていないのだ。
「ミュジカの為とか何とか言うなら、まずはミュジカと相談して決めろ! 毎回毎回、一人で突っ走るな!」
そして、戦いにも終わりが近付いてきていた。
最初こそ戦闘経験の差で捌かれていたがものの、これだけ一方的に攻め続ける事が出来れば、動きにだって慣れてくる。
研一の拳がメロディを捉えるのも時間の問題だ。
「ウチだって最初は、ちゃんと相談してたし! けど、薬を使われて犯されようとしたってのに、交尾なんて獣でもしてるし、それで仲良くなれるなら別にいいじゃないか、なんていう奴と、どんな話をすればいいのかって話じゃん!」
ミュジカは辛くも研一の攻撃を避けながら、言葉を返す。
どうも貞操観念が強く比較的常識的なメロディと寂しくないなら割と何でもいいというミュジカでは、全く話が合わなかったらしい。
そして、このメロディの言葉が勝負の流れを変える。
「ポヨポヨ……」
どうやらメロディがミュジカの事を考えて、ずっと行動してくれていた事をポヨポヨビースト達は、理解したようだ。
研一を抑え込もうと、迷いながらも動き始めたのだ。
「形勢逆転ってトコね」
(くそ、後少しだったってのに!)
膠着状態は崩れつつあり、もう少しで研一がメロディを気絶させるなり取り押さえるなり出来ていただろう。
だが、それもポヨポヨビースト達の動き一つで、一気に逆転してしまう。
(ん、何だ?)
そこで研一の頭の隅に何かが引っ掛かった。
大きな力を持っている研一。
逃げ回り耐える事しか出来ないメロディ。
そして、それ等の状況を引っ繰り返せるポヨポヨビースト。
「解かった! あるぞ、全部収まる解決策が!」
稲妻でも走ったかのように、研一の頭の中で全てが繋がっていく。
今の戦いの状態こそ、まさにソヌス国が置かれている情勢そのものだったから。
「はったり? 今更そんな事言われたって――」
「違う! 要は豊かな国になって他の国に狙われるようになっても、侵略を跳ね除けられればいいんだろ?」
国を狙う強国が研一。
そして狙われているソヌス国を、メロディに置き換えるのなら――
「ポヨポヨビースト達に、他の国の連中を追い払ってもらえばいいんだよ! それで全部解決じゃないか!」
並みの軍隊では、太刀打ち出来ない強さを持つポヨポヨビースト達が居る。
国が豊かになっても、それを守るだけの軍事力が、ソヌス国には最初からあったのだ。
「けど、この枯れた土地を豊かにするなんて――」
「そこは気付いてるんだろう? メロディが歌えば森を作る事だって出来る。それでも足りないって言うなら、植物の専門家が知り合いに居る。あの人とミュジカが組めば、この土地でもすぐに色んな草や木が生えてくるさ」
そして、国が豊かになったらどうするなんて前提で最初から話が進んでいた事から想像出来るように、研一もメロディも気付いていた。
ソヌス国の乾いた土地を復活させる方法だって、手にしている。
「……どうやってポヨポヨビースト達を、街の皆に認めさせるつもり? 食糧としてならともかく、子どもを殺したと思っている以上、そう簡単に受け入れてなんてくれないし、センの力で過去を見せたって、悪党のアンタの仲間。幻覚だと思って信じてなんてくれない……」
もうメロディは、構えてすらいなかった。
当然だろう。
ポヨポヨビースト達が街の住人に受け入れられるなら、わざわざ倒す必要なんてない。
後は納得出来るだけの言葉が欲しかった。
「それこそ悪党の俺が居る。メロディさんやミュジカだけじゃ満足出来なくなったとでも言って、街を襲うから、そこをコイツ等に助けさせればいい」
いわゆる『泣いた赤鬼』作戦だ。
研一のソヌス国での評判なんて、センを子どもの姿にしてミュジカと共に楽しむゴミ屑の変態野郎だ。
それが更に女を求めて侵略してきたところで、誰も疑いなんてしまい。
そして――
「負けたわ……。アンタの勝ち」
もうメロディに戦う意味なんてない。
両手を上げ、降参だとばかりに首を振った。
「ふう、何とかなったな……」
(後は街を襲う段取りでも、話し合うとして――)
これで全て丸く収まった。
もうポヨポヨビースト達の自殺を防止しなくても退場部だろうと、張り巡らせていた魔力無効化を解く。
その瞬間だった。
「街が襲われてるだって!」
「ポヨポヨ!」
ミュジカとポヨポヨビースト達が騒ぎ始める。
まだ襲ってもないし、演技で街の人を傷付ける気なんて全くないと説明しようとする研一であったが、それが誤解である事に気付くのに、時間は掛からなかった。
「違う、やみのん! エコーバードの群れに襲撃されてるって声が、街から届いてる!」
魔力無効化が解除された事で、街の住人が飛ばした救援要請の魔法に、ようやく気付く事が出来たのだ。
だが――
「今から戻ったんじゃ、どんなに急いでも街は――」
メロディの絶望の声が響く。
ここからでは、いくら急いだところで街の救援には間に合わない。
研一達が全力で走ったところで、街に辿り着く頃には、生きている人間なんて一人も残っていないだろう。
「研一さん……」
不安そうにセンが研一の名を呼ぶ。
その声に研一は――
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