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憎まれ救世主 ~異世界転移したら不遇なスキルを授かったので、悪役キャラを演じていたら、裏でモテモテハーレムになっていた~  作者: お米うまい
第五章 国を背負い、友を想う

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第319話 戦う理由

「…………」


 都合のいい解決法が思い付いていたなら、暴力に訴えずに言葉で説得していただろう。


 とりあえずメロディを気絶でもさせて。


 具体的な方法は、後から考えようとする研一であったが、そうは問屋が卸さないとばかりにメロディが動き出す。


「ねえ、皆。やみのんを止める事に協力してくれたらさ、ミュジカが街で皆と仲良く暮らせるようにするわ。党首として約束する」


 センやミュジカを抑える事は出来ても、自分達の為に戦ってくれる研一を邪魔する事だけは、どうしても出来ずに見守っていたポヨポヨビーストを戦線に参加させようとしたのだ。


 メロディと一対一で膠着状態。


 ここでポヨポヨビーストがメロディ側に回れば、勝負は一気に決まる。


「騙されるな! ミュジカは俺と一緒に魔王を倒す冒険に出る! だから――」


「ええ、やみのんの言うとおり。だけど、魔王を倒した後は?」


 メロディの甘言を打ち破ろうと研一が殴り掛かりながらも声を張り上げるが、メロディは冷静に攻撃を交わしながら言葉を紡いでいく。


 研一の方が思慮が浅いのだと、ポヨポヨビーストに見せ付けるように。


「やみのん。アンタは凄いよ。そのスキルに優しさ。意志と覚悟があれば、確かに魔王ってヤツを倒して、人類に平和ってヤツをもたらしてくれるって思う。けど、その後は?」


「その後?」


「魔王が倒された後でミュジカをどうするつもり? 世界中から恨まれる悪党仲間として傍に置く? それとも女好きの救世主に弄ばれて捨てられた可愛そうな被害者として捨てる?」


 その時になってミュジカ本人に選んでもらう、なんて答えではメロディは満足しない。


 何故なら、それは選ぶのではなく、選択肢がないから、それ以外は選べなかったという消去法にしかならないだろうから。


「ウチなら、魔王を倒した後の帰る場所を作ってあげられる。その為には子供殺しの魔獣の親玉なんて印象を、ミュジカに残しておく訳には、いかないの!」


 いざ選択となった時に、帰って来れる為の街を残しておく。


 その為には子ども殺しの魔獣とは完全に決別し、ミュジカ自らの手で始末を付けたという事にしておきたいというのが、メロディの考えであった。


「メロディさん、アンタ……」


 そこで研一は気付いた。


 ここまで頑なにメロディがポヨポヨビーストを倒そうとする理由。


 それは国の党首だから、というだけではない。


 ミュジカの帰る場所を作りたかったからだという事に。


「……面倒臭い国の統治や下らない権力争いに利用されるより、自由に生きられる方がウチはミュジカにとって幸せだって思ってた」


 かつてミュジカじゃ権力者に都合の良いように使われていた。


 そして地位を失った者達は、今度は薬を使ってミュジカに無理やり自分達の後継者を産ませる事で権力を取り戻そうとしたのである。


 だが、それでミュジカが狙われたのは、ミュジカが一番魔力を持っていたから。


 ミュジカが居なければ対象になっていたのはメロディであり、権力者達の悍ましさを外から見ていたメロディは、こんな場所に居るよりは、一人で暮らした方がマシだろうと思い、手を回してミュジカを追放したのだ。


「けど、違った。この子達が見せた記憶が、全部教えてくれた……」


 メロディはミュジカから、朧気にポヨポヨビーストとの出会いを聞いていた。


 曰く、なんか急に大量に現れたと思ったら、目の前で自分に喰われる為に死んでいった、と。


 だから、ポヨポヨビーストはミュジカの肉を食べたいという魔力に当てられて生まれた新生物なのだと思っていた。


 けれど――


「寂しい。誰かと一緒に居たい。この子達は、ミュジカのそういう願いから生まれてたのよ」


 ポヨポヨビーストが食べられる事に特化したのは、泣いていたミュジカを慰めようとする為に自らを変化させた後付け。


 本当はミュジカに拒絶された事に泣き、ミュジカを泣き止ませようと自らの存在意義さえ変質させた『人間への執着』。


 それこそが、ポヨポヨビーストの本質なのだろう。


「自己満足でミュジカを街の外に追いやって、この子達を生み出すまで寂しがらせた責任がウチにはある!」


 実際、メロディの推測は正しい。


 ミュジカが起きた時に周囲を取り囲むように現れていたが、一人で眠る寂しさに泣いていた魔力が生み出した魔獣なのだから。


 そして――


「ポヨポヨ!」


 ミュジカが寂しい想いをするのは駄目だと、ポヨポヨビースト達は判断したらしい。


 自分達の為に戦ってくれている研一の邪魔をする事になると解っていても、自らが死んでしまう事になると解っていても。


 メロディと共に戦おうと、決意と共に動き始める。


「馬鹿野郎! お前等が犠牲になった後悔をミュジカに一生背負わせる気か!」


 だが、それこそ自己満足でしかないとばかりに、研一は認めない。


 こうやってミュジカの為に動いてくれる奴等が死んだ果てに作られた場所なんかで、幸せになんてなれるとは思わない。


「ケンスって子どもが死んでしまった時以上の辛さや悲しみを、ミュジカに与える気か! お前等がやろうとしている事は、そういう事だぞ!」


 残された者の苦しみなんて、痛いくらいに知っている。


 ミュジカがポヨポヨビースト達の死を望まない限り、意地でも目の前で死なせてなんてやらないとばかりに研一が声を張り上げる。

面白かった、続きが見たい。

書籍化して絵が付いているところが見たい。

何かしら感じてくれた方は、是非とも高評価してくれると嬉しいです。


また気楽にリアクションなどして頂ければ嬉しいです。



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