第222話 現ファブリスの代表として
「こ、これは!」
研一が民衆を全員叩きのめし。
それでも気分は晴れず、心を落ち着けようと深呼吸を繰り返していると、誰かの驚く声が処刑場に響いてきた。
「……ミリティか」
リティアを助ける為、研一の後を必死で追ってたミリティが今になって追い付いたのだ。
しかし、想像を絶する光景に驚いているのだろう。
顔を驚きで硬直させて、動けないようであった。
「ああ、わりぃわりぃ。お前を好き放題にしていい代わりに、民衆には手を出すなって話だったな。つい、ムカついたんでな。やっちまったよ」
いつ民衆が起き上がるか解からないし、痛みで倒れ込んでいるだけで意識が残っている者も居るかもしれないし。
ウルスス達獣人や元正規兵の男達が、いつ戻ってくるか解からない。
研一はリティアの無事をミリティに告げる事もせず、必死で悪党を演じる。
「ぬしさ――」
「どうする? 契約不履行って事で、テメェは解放してやってもいいぜ」
こんな凄惨とも言える光景を目の当たりにして、主様なんて心酔しているような名前で呼ばれて、誰かに聞かれでもしたら今後の統治に影響するだろう。
大事な大事な自国の民が叩きのめされた事に怒るのが正解の態度だとばかりに、研一はミリティの言葉を無理やり遮る。
「あ、う……」
それでミリティに、大体の事は伝わってくれたのだろう。
もう別れの時が近い。
これからは党首として国を背負っていかなければならず、ここで気持ちを切り替えるくらいの気概を見せなければならないのだ、と。
「ただテメェに手を出している内は民衆には手を出さないって契約は破っちまったが、魔族共をぶちのめしたら、この国にあるモノなら何でも貰っていいって約束は生きてるよな?」
「えっと……」
それでもすぐに話を合わせて、演技するのは難しいのだろう。
何も答えられないミリティの返事を待とうともせず、研一は軽く跳躍し、処刑台に囚われたままのリティアの傍へと移動する。
「ああ、違った違った。その約束をしたのは、こっちの女だったな」
「はあ!? そんな事言ってる場合じゃないって解からない! 早くこの鬱陶しい拘束を解きなさいよ! この鈍間!」
そこで研一が傍に来た途端、今まで黙っていたリティアがヒステリックに叫び声を上げる。
事情を全て知っている事も助けに来た事も伝えていないのだから、この態度も当然だろうと研一としては思うが――
「…………」
傍に居るプロディとしては、耐え難いモノであったらしい。
その怒りを示すようにバチバチと身体から電撃が漏れ出ていたが、研一は目線だけで大人しくしていてほしいとプロディを制して、処刑台に近付く。
「ったく。ほら、裏に操作方法書いてあるでしょ。その手順通りにやれば、すぐ外せるわよ」
(……マズイ、読めない)
リティアに言われた通り、処刑台の裏を見た研一は、固まって動きを止める。
言葉自体はスキルの翻訳機能が働いていているが、文字には適用されていないらしく、何が書いてあるのか、サッパリ読めなかった。
「……ここは私が」
「あ、ちょ――」
「……ふむ、なるほど」
何故か顔を赤くして慌てるリティアに、プロディは意味深な視線を一瞬だけ向けると、処刑台を操作して、リティアを拘束から解放する。
そんな面倒な事をせず叩き壊せばいいんじゃないかと思うかもしれないが、処刑台に組み込まれた魔力封じの首輪は、簡単な魔法以外は全て封じ込めてしまう効果があるだけでなく――
正しい手順で外さなければ、首輪によって乱された魔力が戻らなくなり、二度と魔法が使えなくなったり、廃人になる事もあるからだ。
「こ、これは一体!? それに、あのメイドは何だ!?」
「…………」
そこで更にウルスス達、獣人と元正規兵の部隊が到着する。
同時にセンも駆け付けるが、こちらは特に処刑場で倒れている民間人達の惨状に驚いた様子も見せず、リティアと研一に視線を向けていた。
「今更来たのね、役立たずの間抜け共! 早くこの変態から、私を助けなさい!」
その瞬間。
役者は出揃ったとばかりに、リティアが大声でウルススに助けを求める声を上げたかと思うと、勢いよくウルスス達の元に駆け寄ろうとする。
「おいおい、約束が違うぜ。ファブリスの党首様よぉ。魔族共を叩きのめしたら、この国にあるモノは何でもくれるって話だったろ? テメェとミリティを並べて犯すのを楽しみにしてたんだぜ?」
だが、研一は逃がさないとばかりにリティアを即座に捕まえて抱き寄せる。
もうお前は逃げられない、俺の物だと言わんばかりの態度で。
「はあ!? 物ならくれてやるって言ったけど、人間は物じゃないでしょ!」
「あん? そこのミリティでも獣人でも好きに持って行っていいって言ってたじゃねえか」
「私は人間の話をしてるのよ! 家畜に毛が生えたような汚らわしい獣人達と私達人間を一緒にしないで!」
「…………」
ウルスス達から呆れるような視線が向けられ。
ミリティは一瞬だけ、悲痛に顔を歪ませたが、すぐに表情を引き締めた。
「ほら、何ぼーっとしてんのよ! 戦う事しか役に立たない脳無しなんだから、こう言う時くらい役に立ちなさいよ! さっさとこの変態から私を助けなさい!」
リティアは研一の腕から逃れようと必死で足掻きつつ。
まるでウルスス達の白い視線になんて全く気付いてないような、自分は助けられるのが当然だとばかりの傲慢な態度で、叫び声を上げていく。
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