54.決心と相談
分厚い夜のカーテンが世界を塞いだ頃。湯浴びから戻ったロイカは、キッチンでハーブティーを淹れるミンティーを見つけた。
「ロイカなぁに?」
「その…ミンティー、お話してもいいでしゅか。」
いいよ、隣に座りなさい。とミンティーは穏やかな声でいった。
ミンティーはロイカにもハーブティーを淹れてくれた。少し湯気がたつ暖かなマグカップは少し寒い夜の灯火みたいだった。口を付ければローズヒップの甘酸っぱさが鼻腔をくすぐる。
「以前…神様と約束をしたんでしゅ、助手になる約束を。」
三者面談が終わり、風の精霊の仕事を詳しく見た数日。ミンティーに話す決心ができた。
「でも神様は精霊としての生活があるから約束は破棄してもいいといったんでしゅ。でも、私の心はそれは嫌っていってるんでしゅよ…?」
以前…という言葉の不可解さを指摘する事なくミンティーは聞いていた。
「…そう。神が約束が在る上で意思を尊重するなんて滅多に無い話なのよ。…神ってランガ様でしょう?私は一度しか会った事ないけれど、女神ランガは大切に思ってるのね。…私はランガ様なら安心してロイカを任せられる。」
「でもー…でしゅ。」
「あのね、ロイカ。ある少女の話聞いてくれてる?」
…昔、というほどでもない昔に、風の精霊として少女は生まれました。でも少女は前世を持っていました、戦いの中で弱き者だった彼女は死んだのです。
だから彼女は次の生では強さを求めました。強く、誰よりも強くー…今世も戦禍に巻かれた少女はある日瀕死の少女を助けます。
色々な事情が重なって二人で生活するようになったのですが、そこで初めて今までが強さを求めたが為の息苦しい毎日だったと気付いたのですー。
「隣にいてくれる理解者は大事よ。
…あとこの話、マヴィムには内緒よ?」
悪戯っぽく笑ったあと少し真剣な表情でそれはロイカにとってはランガ様なのかもしれないでしょう?とミンティーはロイカの頬を撫でた。
「その話、ミンティー姐さまの…?ううん、分かりましゅた。ランガ様についていきましゅ。とりあえず一年だけ。」
「ええ。明日にでも、決心が鈍らないうちに報告してきなさい、ランガ様に。」
そうすれば私は貴方を送り出してあげるから。
小さく呟いて、ミンティーはハーブティーを飲み干した。
「…大丈夫、風の精霊の道に戻りたくなったらいつでも戻ってこれるようにしてあげる。なんたってお姐さま、風の精霊の中じゃちょっとはお偉いさんなんだから」ミンティーは少しおどけてそう笑った。




