第3話 陽キャは距離が近い
第3話です。
理人以外とも関わります。
翌朝、大学の校門をくぐると、春の風が頬を撫でた。
一限の教室に向かう途中、中庭のベンチに見覚えのある金髪が座っていた。
スマホ片手に誰かと電話している。
声がやたらとでかい。
「……やから!昨日言うたやん、また会おって。……え?もう連絡してくんなって?ちょ、待ってや――!」
通話が切れたらしい。湊は天を仰いで盛大にため息をついた。
自分から切るのはいいが、切られるのは気に入らないらしい。
特に声をかける理由もないので、そのまま通り過ぎようとした。
「くっそー……なんでやねん……!昨日はええ感じやったのに……」
目の前を私がちょうど通りかかるタイミングで、湊が顔を上げた。
「……ん?」
……げ。
目が合った、気がする。
がばっと立ち上がって
「おい待てやお前!今なんかばかにしたやろ!見たぞ!」
絡まれた。
「…独り言、大きいなと思って…」と苦笑いで返す。
ずかずかと近寄ってきて
「はぁ?独り言?俺が?」
図星だ。
腰に手を当てて
「つーかお前、昨日食堂におったやつやんな?」
こっちもバレてる…
「…はい、昨日食堂いましたね。」
じーっと顔を見て、
「ふーん……なんや普通の顔しとんな。」
失礼極まりない第一印象だった。
当たり前だ。こっちは陰キャだ。
そう思ったが、苦笑いで返す。
湊は首を傾げて
「なんやお前、おもろいな。怒らんのかい。」
何がおもろいのか。
…怒ってほしかったのかこの男は。
返す前に、急にトーンが落ちた。
「……あー、なあ。ちょっと聞いてくれへん?」
「…私でよければ。」
ここで断るほど冷たい人間ではない。
ベンチにどかっと座り直し、隣を叩く。
「昨日ナンパした子がおったんやけど、朝起きたらブロックされとってん。俺なんかしたかなぁ……」
心当たりしかないのでは…?
そう思ったが声には出さなかった。
「心当たりとかは…?」
「ない。」
真顔で言い切った。
あるに決まっている。
「どんなデートをしたんですか?ナンパが成功した後とか…」
指折り数えながら、
「えーと、飯奢って、カラオケ行ってー……」
「…そのあとは?」
分かりきってはいるが。
目を逸らして
「……まあ、その、ホテル的な?朝まで一緒にいて、それでブロック。」
それだ。
答え合わせ完了である。
慌てた様子でフォローをする。
「いやいや待ってくれ!ちゃんと優しくしたで!?ゴムも付けたし!」
そういう問題ではない。
頭を抱えだし、
「マジでなんでや……何があかんかったんや……」
一人で話し出した。
忙しい男だ。
しかし初対面だ。あまりきついことも言えない。
「飽きられちゃったんですかね。顔のいい人としたっていうステータスで満足しちゃったとか……」
できるだけオブラートに包んで答えた。
私の言葉に、はっとした顔をする
「ステータス……あー、なるほどなぁ……」
あっさり納得しているらしい。
自分が顔がいい自覚はあるようだ。
また、大きくため息をついて
「はぁー……俺ってそんなもんかぁ。」
「コミュ力ありますし、悪い人ではないと思いますよ。」
実際、素直に根はいい人そうとは思っている。
私の言葉に、ぱっと顔上げた。
「……お前ええやつやな!」
単純な男だ。
にっと笑って
「なあ、名前なんていうん?」
「吉野瑞希です。」
「瑞希な、おっけ。覚えたわ。……俺は鶴見湊。」
「……よろしくお願いします。」
「あ、やば!一限もう始まるやろ。お前同じ講義?」
時計を見て、私も行かなきゃと立ち上がると、湊も一緒に立つ。
「おっしゃ、ほな行こか!」
……距離が近い。
なぜか当然のように並んで歩き始めた。
これだから陽キャは怖いのだ。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
次はいよいよ、全員が揃います。




