第25話 友達との距離
第25話です。
瑞希は友達だと思ってるんです。
理人からのメッセージを開く。
『夜霧、そっちに行きましたか?』
なぜ知っているのだろうか。
いや、彼なら知っててもおかしくないか。
嘘をついても仕方がないので、『来てますよ』と返信した。
すぐに既読がつき、『そうですか。』と返信が来た。
それだけだった。
おにぎり2つめを齧りながら、夜霧がちらりとこちらを見ながら言った。
「理人ですか?」
「そうです」
「なんて言ってました?」
「夜霧くん来てるかって…」
「ふぅん…それだけ?」
うなづいた。
「…彼らしいですね。」
そう言って、3個目のおにぎりを食べ終わり、
空いた食器の洗い物を始めようとしていた夜霧を慌てて止めた。
「作ってもらったうえに洗い物まで…そのままでいいですよ」
素直に引き下がった。
「いいんですか?…ではお言葉に甘えて。」
帰るのかと思ったが、夜霧はそのままソファの端に腰を下ろした。
「…もう少しだけいてもいいですか。」
「いい、ですけど…」
それからしばらくゆっくりとした時間が流れた。
時々、お互いぽつりぽつりと会話をしながら。
ふと思いついて口を開く。
「敬語、そろそろお互いやめませんか?」
夜霧はこちらを見つめ、珍しく即答しなかった。
少し考えるように天井見る。
「……ワタシの敬語は、癖みたいなものなので。」
でも、と言ってふわっと笑う。
「瑞希さんがそう言うなら、やめようか。」
その破壊力に、しばらく語彙を失ったが、
夜霧が照れたように笑いながら、続けた。
「……なんか変な感じ。」
普段の丁寧な仮面が一枚剥がれた瞬間だった。
「瑞希さんも敬語やめてよ、不公平でしょ?」
「うん、そうだね。そうしよう。」
夜霧が嬉しそうに笑う。
「いいね、それ。」
その後もぽつぽつと他愛ない会話が続いた。
好きな食べ物、最近見た映画、くだらないネットの話。
気づけば午後三時。
「……長居しちゃったな。」
「雨、降ってきたね。」
そう言われて外を見ると、窓を叩く雨音が部屋を満たしていた。
困ったように笑いながら言った。
「傘、持ってきてないんだよね。」
「ちょっと待ってて…うーん、あった。」
「これ、使っていいよ。」
夜霧は傘を受け取って玄関に向かった。
夜霧はこちらを振り返ってにこりと笑う。
「今日はありがとう。おかゆ食べてくれて。」
靴を履き、ドアノブに手かけるとそのまま振り返る。
「また来ていい?」
「うん、次は連絡してね。またね」
そう言うと、夜霧は小さく手振って雨の中に消えた。
我が家に静寂が戻った。
テーブルにはさっき梅雨が使ったゼリーのカップ。
ソファにはまだ微かに残り香。
今日は夜霧と少し仲良くなれた気がした。
それは嬉しいことのはずなのに、なぜか少しだけ落ち着かなかった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
夜霧との距離が縮まりましたね。本当に友達でしょうか。




