第22話 湊からのお誘い
第22話です。
理人くんの高すぎるお嫁さん適性が火を吹きます。
『今から理人ん家で宅飲みすんだけど来る?』
スマホを見ると湊からのメッセージが届いていた。
『それ、私が行ってもいいんですか…?』と返すと、数秒もしないうちに返信が来た。
『ええに決まっとるやろ!つまみ買ってきて!』
スマホを閉じようとすると、夜霧からメッセージが届いた。
『お待ちしてますよ。』
続いて澪からも。
『瑞希ちゃん来るなら澪の分のお菓子もぉ』
最後に、理人からもメッセージが来た。
『……来るなら、事前に連絡してください。片付けが間に合わないので。』
『おつまみとお酒買っていきます。』と返して準備を始める。
『ありがとうございます。では住所を送ります。』
準備をしていると、理人からマンション名と部屋番号が送られてきた。
出る前に理人に連絡をして出かけた。
あの建物だ。
近くのコンビニで酒とおつまみを調達。
パンパンになったビニール袋を持ってインターホンを押す。
理人がモニター越しに出た。
「開けます。上がってきてください。」
オートロックが解除される音を聞いて、エレベーターで五階へ。
503号室のドアが開いた瞬間、廊下に靴が散乱していた。
理人の几帳面な性格とは明らかに不釣り合いなスニーカーとサンダル。
理人が額を押さえながら言った。
「言ったでしょう、散らかってるって。」
リビングに入ると、想像以上の光景が広がっていた。
湊がソファを占領してビール片手にこちらに視線を向ける。
「おー!遅いぞー!」
澪は床に寝転がってポッキー咥えている。
「あ、来たぁ。」
夜霧はキッチンカウンターにグラスを並べながら
「いらっしゃい。重かったでしょう、持ちますよ。」
理人だけがスウェットに着替えてエプロン姿でキッチンの方に向かった。
菜箸を持ち直している。
何か作っている最中だったようだ。
理人がちらっと振り返る
「せっかく来たなら、ちゃんとしたものも食べさせます。座っててください。」
「えっ、もしかして、手料理ですか…?」
フライパンを振りながら
「大したものじゃないです、アヒージョくらいですよ。」
理人らしい、おしゃれなチョイスだった。
エプロン姿でオリーブオイルの香りを漂わせる理人。
これはもう完全にお母さん、いやお嫁さんだ。
そんなことを考えていると、つい口に出てしまった。
「いい奥さんになりますねぇ…」
理人の方からガシャンと音がした。
「……何ですか急に。」
湊が腹を抱えて爆笑している。
「奥さんて!!ママの次は嫁かい!!」
ごろんと寝返り打ち、こちらを見ながら澪が言う。
「理人くん似合うよねぇ、エプロン〜」
夜霧はワイン注ぎながらにっこりと笑っている。
「家庭的ですものね、理人は。」
話題の本人は、背中で語るように黙々と調理を再開する。
きっと照れているのだろう。
それを見た湊はニヤニヤしながら茶化す。
「おーい理人くーん、照れとるんー?」
理人は湊を無視して、火を止める。
テーブルにアヒージョが並ぶと、ニンニクとオリーブオイルのいい香りが広がった。
パンとバゲットも添えてある。
夜霧が目を見開く。
「あら。美しい盛り付けですね。」
エプロン外しながら素っ気なく言った。
「冷めないうちにどうぞ。」
「わぁ。すごい!いただきます」
海老を一つ食べる。
ぷりっとした身にガーリックの風味。
思わず、もう一口パンを浸していた。
パンに浸して頬張りながら湊が言った。
「うっま!!お前なんでこんな料理できんねん!」
理人は自分でも一口食べながら静かに言った。
「普通です。」
もぐもぐと口を動かしながら澪も湊に賛同する。
「普通じゃないよぉ、美味しいよぉこれぇ。」
その会話を眺めながら黙々と食べる。
夜霧が入れてくれたワインに合う味だった。
ワイングラス傾けながら夜霧がこちらを観察している。
「気に入っていただけたようですね。」
「うん、美味しいです。」
「夜霧くんが入れてくれたワインとも合う!」
理人が珍しく少し得意げに目を輝かせる。
「でしょう。マリアージュは考えて味付けを選んでますから。」
マリアーじゅ…?
プシュッと三本目のビール開けながら湊が口を挟む。
「お前バーテンダーかよ。」
もう酔ってるのか、とろんとした目で澪がこちらに近づいてきた。
「瑞希ちゃぁん、ほっぺにソースついてるぅ。」
素早くサッと自分で拭いた。
何をされるかわかったものではない。
「…教えてくれて、ありがとう」
伸ばしかけた澪の手が空を切った。
「つれないなぁ〜」
湊がそれを見てゲラゲラ笑っている。
「避けられとるやん!」
理人はワイン飲みながらチラッとこちらを見る。
「賢明な判断ですね、瑞希。」
夜霧も横からすっとナプキンを差し出す。
「こちらをどうぞ。お手拭き用に。」
紳士的。あまりにも自然な所作だった。
これが魔性の男の実力か…と、酔い始めた頭の片隅で思った。
「ありがとう、ございます…」
顔に出ていたのかもしれない。
夜霧が満足げに微笑む。
「どういたしまして。」
酔ってきたのか、湊が陽キャな遊びを提案し出した。
「なあなあ、王様ゲームせーへん?」
ここまで読んでいただきありがとうございます。
酔った大学生の定番ですね。




