第15話 学校の有名人
第15話です。
大学でイベントが始まります。
日曜日は穏やかに過ぎた、はずだった。
月曜日の朝。大学の正門をくぐると、掲示板の前が人だかりになっていた。
何事かと思った。
背伸びして人垣の隙間から掲示板を見る。
そこには一枚のチラシが貼られていた。
『第32回 ミス&ミスターコンテスト 立候補者募集中 ※推薦も可』
その下に小さく『主催:学生会』と書かれている。
毎年恒例の大学のミスコンらしかった。
周囲のざわめきに耳を澄ます。
「ねえ、あの四人に出てほしくない?ほら、あのいつも学食にいる!」
たしかに似合いそうだと思った。
「絶対優勝でしょ!顔面偏差値バグってるもん!」
「誰がいいかな〜、やっぱ夜霧くん?王子様感やばいし!」
何を言っている、あいつは蛇だ。
王子様とか言ってたら取って食われるぞ。
「理人くんの知的な感じも捨てがたいよねぇ〜」
名前が出るたびにきゃあきゃあと黄色い声が上がる。
そのとき、背後から声がした。
「ああ、もうそんな時期ですか。」
振り返ると、理人が立っていた。
朝日を背に受け、いつも通り隙のない佇まいで掲示板の方を見ていた。
こちらに視線を移して薄く笑う。
「おはようございます。」
「おはようございます…」
理人の視線が掲示板に戻る。
「ミスコンですか。正直、興味はないですが。」
「私もです。」
そう答えた私を見て、ふっと鼻で笑った。
「アナタが出たら面白そうですけどね。」
冗談なのか本気なのか読めない。
何を言っているんだ、この男は。
「私はまあ…推薦されたら断りきれないかもしれませんが。」
「理人くんは、似合いそうですね。」
社交辞令とはいえ、本心だった。
理人が一瞬だけ目を細める。
「お世辞が上手ですね。」
褒められ慣れている人間の反応だった。
歩き出しながら、ふと振り返る
「アナタは誰が出ると思います?」
「あなたたち四人とも、だと思いますよ。」
「……そうですか。」
それだけ言って、理人は講義棟の方へ歩いていった。
いつもより歩幅が広い気がした。
一限の教室に入る。
後方のいつもの席。隣に中学からの友達の雪がすでに座っていた。
こちらに身を乗り出し、小声で声がした。
「見た?ミスコンのやつ。」
「あれさ、あの四人に出てほしくない?」
雪は目をきらきらさせていた。
「そうだねえ、あの4人が出てたら似合いそう。」
雪がグッと拳を握る。
「私は推す。全力で推薦する。」
雪の目は本気だった。
それからスマホで何かを調べ出す。
「推薦って、本人の同意いらないやつなんだ……」
そんなことがあるのか。
思わず同情してしまった。
「ええ?かわいそうに」
「かわいそうじゃない、適材適所。」
「適材適所……」
雪がうんうんと頷く。
「だって考えてみて?あの顔面がステージに並ぶんだよ?見る側は得しかないでしょ。」
「やらされる側はちょっとかわいそうに思っちゃうなぁ」
むぅと頬を膨らませる。
「あんたほんとにお人好しね……」
これが、お人好し…?
その時、教授が教室に入ってきて会話は中断された。
午前の講義が終わり、昼休みになった。
学食に向かう途中、渡り廊下で夜霧とすれ違った。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
男装・女装どちらも似合いそうですね…




