第14話 帰る場所
第14話です。
澪もちゃんと厄介です。
それから数日後のある日の夕方だった。
自宅近くの住宅街に入り、人通りがほとんどないはずの道に、人影があった。
街灯の下、壁にもたれかかっているその影は、気だるげに片手でスマホをいじっている。
顔を上げてひらっと手振る。澪だった。
「あ、瑞希ちゃんだぁ〜」
「えっ…?!」
「えへへぇ、驚きすぎぃ。幽霊じゃないよぉ、澪だよぉ。」
どうしてこの場所を知っているのか。
そんな疑問が口を出る。
「なんで……?」
澪はスマホをポケットにしまい、ゆっくりと体を起こす。
「んー、夜霧くんに送ってもらったんだけどさぁ、車降ろされたのここだったんだよねぇ。」
つまり夜霧が澪をここに置いていったらしい。
押し付けられたか、たまたまか……。
「それでぇ、お金もないしぃスマホも充電ないしぃ。家もないんだぁ。」
「……瑞希ちゃんち、泊めてくんない?」
「嫌です。」
そう言ってスタスタ歩いて通り過ぎる
澪が後をついてくる。
「えぇ、冷たいなぁ。」
側から見たら、タチの悪いナンパ師かストーカーだ。
「いやです。自分でなんとかしてください」
澪が私に追いつき、隣をのそのそ歩きながら顔を覗き込んでくる。
「帰る場所ないから困ってんだよねぇ。」
「えぇ…」
「玄関先でもいいよぉ?」
少し悩んだ後、妥協した。
「澪くんは友達だし…今日だけ宿とってあげるから、今日はそっちに帰って。」
「私は帰るから。……それでどうですか?」
そう提案すると、ぱぁっと顔が明るくなった。
「瑞希ちゃん優しいねぇ!好きぃ!」
あまりにも軽い「好き」の言葉に頭を抱える。
決まった。
こいつは大クズだ。ヒモだ。
ビジネスホテルを手配し、住所と部屋番号を教える。
「今後一切こういうことはしないですから。もう頼ってこないでくださいね。」
澪はゆるく笑顔になる。
「はぁい。」
多分、私の言っていることは耳に届いていないだろう。
李風はのろのろとビジネスホテルの方向へ歩き出し、手を振る。
「おやすみぃ、瑞希ちゃぁん。」
「おやすみなさい」
ようやく一人になった。
自然とため息が出る。
自宅に入り、ソファに倒れ込む。
そうして天井を見つめていると、澪は無事に宿に着けただろうかと考えていた。
しばらくそうしていると、スマホが震えた。
メッセージを開くと夜霧からだった。
『夜分にすみません。澪さん、ワタシが途中まで送ったのですが、降車場所を間違えてしまったようで……』
『瑞希さんの家の近くだったようで……ご迷惑をおかけしませんでしたか?』
宿を手配したこと、今後は頼らないでほしいと伝えたことを簡潔に返す。
数秒のうちに返信が来た。
『本当に申し訳ありません。彼には明日きつく言っておきますね。』
『……あまり瑞希さんの優しさにつけ込まないよう』
続けてもう一通。
『おやすみなさい』
『おやすみなさい』とだけ返してスマホを裏返した。
シャワーを浴びてベッドに潜り込む。
目を閉じると、あの四人が並んだ光景が浮かんだ。
そして、理人の言葉が浮かぶ。
どうしたものか。
寝返りを打ち、枕に顔を埋める。
本当に、当事者になると面倒くさい。
意識が遠のく直前、最後に浮かんだのは誰の顔だっただろうか。
翌朝、日曜日。
目覚ましより先にスマホの通知音で起きた。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
家がないって何したんでしょうね。




