第12話 忠告の続き
第12話です。
理人に呼び出されます。
何の用事だろうか。
『空いてますが、どうかしましたか?』
理人にメッセージを返すと、数秒もしないうちに返信が来た。
『話しておきたいことがあります。明日、図書館に来てください。』
『わかりました』と送ってスマホを伏せた。
シャワーを浴びながら考える。
何の話だろう。
あの人たちに深入りしない方がいいと言った昼間のメモの続きだろうか。
ベッドで天井を睨む。
今更そんなことを言われても、手遅れだ。
そんなことを考えながら目を閉じた。
翌日の三限が終わり、足が重いながらも図書館へ向かった。
ドアを開けると、珍しく理人が窓際の席で本も開かずに待っていた。
「来ましたか。どうぞ座ってください。」
そう言って向かいの椅子を指す。
声は平坦だが、いつもの調子ではないのは明らかだった。
周囲に人はおらず、静かな空間に空調の音だけが響く。
席に座ると、少し間を置いて
「単刀直入に言います。」
「あの三人、夜霧、湊、澪。あの連中とは距離を取った方がいい。」
こちらをまっすぐ見て言った。
敬語が消えていた。
「アナタがどう思ってるかは関係ありません。」
「問題は彼らがアナタをどう見ているかです。」
さらにため息をつく。
「特に夜霧。昨日、二人でいたでしょう。」
見られていたのか。
しかし、素直に答える。
「……たまたまです。」
指で机をとん、と叩く。
「たまたま、ね。あの男がたまたまな訳がないでしょう。」
理人は真剣な表情をしていた。
それから、少し声を落す。
「私だから言えますけど、あの三人は全員アナタに執着し始めてる。」
「……なんでですか?」
そう聞くと理人の眉間に皺が寄る。
「……本気で言ってます?」
なんとなく察してはいるが。
額に手を当てる。
「はぁ……いいですか?普通、私たちみたいなのと関わると、人間は避けるか依存するかの二択なんです」
「じゃあ、一回くらい依存してみたらいいんですか?」
思っただけだと思ったら口に出ていた。
理人はぎょっとした顔をした。
「何言ってるんですか。」
「ダメですよね」
苦笑いした。
「ダメに決まってるでしょう。冗談でもやめてください。心臓に悪い。」
そりゃそうだ。
「でも、それはあなたもではないんですか…?」
「私に忠告することで、…なんか企んでるとか。」
理人が一瞬目を見開いて、それから少し笑った。
どこか、嬉しそうだった。
「……鋭いですね。」
「否定しないんですね」
理人が背もたれに体を預ける。
「嘘ついても見抜くでしょう?アナタは。」
そんなことはない。買いかぶりすぎだ。
しかし、少しだけ意地悪をした。
「そのくらいなら。…なので、あんまりに執着されると、私逃げちゃいますよ?」
「他の3人も同じです。」
半分は本音だ。
ぴくっと肩が動き、一瞬表情が揺らいだ。
「……それは困りますね。」
「お友達としてなら、これからも仲良くしたいです。」
しばらく黙った後、小さく息をついた。
「お友達」。
その言葉に、理人の表情がわずかに揺れる。
眼鏡の位置を直し、薄く笑う。
「……わかりました。それで手を打ちましょう。」
これで離れていくなら、そこまでだったということだ。
理人が傍の本を開き直す。
ページに目を落とした。
「私たちは、そこまで安くないですよ。」
それはそうだと思い、笑顔を作る。
ぎこちなかったことだろう。
ちらっと目だけ上げて、すぐに本に視線を戻す。
「もう行っていいですよ。」
「わかりました、ではまた。」
「ええ、また。」
図書館を出ると、廊下の空気が妙にひんやりした。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
お友達って難しいですね。




