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第11話 夜霧の素顔

第11話です。

夜霧回です。

夜霧が煙を吐いて空を見上げている。


切り捨てたのだろう。

いつも通りの、なんでもない顔で。


こういうところから噂は広がっているのだ。

見なかったことにして通り過ぎるのが正解だ。

そんなことはわかっている。


しかし、一瞬だけ足が止まってしまった。


再び歩き出そうとすると、夜霧の視界に入ってしまった。


何事もなかったかのように微笑んでいる。

「あら。瑞希さんではないですか。」


目元が少しだけ赤い。

泣いていたのは相手の女性だけではなかったのかもしれない。


立ち上がり、こちらに近づいてくる。

「奇遇ですね?こんなところで。」


会釈で返す。

気まずい。


会釈で返されて、少し目を細める

「釣れませんねぇ、それだけですか?」


仕方なく挨拶を返す。

「こんばんは」


夜霧がふっと笑った。


隣をぽんと手で叩く。

「隣、座りませんか?」


断るのも忍びないので、隣に座った。


夜霧はしばらく黙ったまま、夕焼けを見ている。

普段なら隙あらば甘い言葉を囁いてくる彼が。


「……さっきの、見てましたよね?」


「…ちょっとだけ」


前を向いたまま呟いた。

「そうですか…最低でしょう?ワタシ」


「いえ、よく知らないので。なんとも。」


一瞬きょとんとした顔をして、それから声を出して笑った。

「あはは……冷たいですねぇ」


おい、人が気を遣ってやったのに、なんと言う言い草だ。


「冷たいですか…すみません。」


手を振って

「いいえ、謝らないでください。むしろ……」


言葉を探すように間が空いた。


「……楽です。」


「そうですか。」


夜霧が横目でこちらを見る。

「普通、もう少し踏み込んでくるものですよ。"大丈夫ですか"とか"辛かったですね"とか。」


「大丈夫ですか…とか聞いておいた方が良いですか…?」


少し目を見開いて、それから首を振った。

「やめてください、本当に大丈夫なので。」


面倒くさい男。


頬杖をついて遠くの夕日を眺めながら

「不思議な方ですね。」


「そうですかね?」


「ええ。ワタクシに興味がない人、初めてかもしれません。」

そういって表情が柔らかくなる。


そうだろうな!…おっと本音が。

慌てて言い方を取り繕う。

「そんなオシャレ美人な顔してたら、そうでしょうねぇ」


「……おしゃれ美人?」


予想外の表現だったらしく、いつもの微笑みが剥がれた。


口元を手で隠してまた微笑みを作る。

「ふふ……変わった褒め方ですね。」


「ええと、じゃあ直球で顔が良いといった方が普通ですかね?」


ククッと笑う。

「どちらでも。ただ、そんな淡々と言われると調子が狂いますよ」


すっと笑顔が消えた。

「……瑞希さん」


空気が変わった。


体をこちらに向け、真っ直ぐ目が合う。

「貴方は、ワタシを嫌わないんですか?怖く、ないんですか?」


「別に私が何かされたわけではないので……少なくとも嫌いではないですよ。」


その答えを聞くと、目を閉じた。

噛み締めるように。


数秒の静寂。


ゆっくり目を開ける。

「好きでもない、でしょう?」


気まずさが顔に出る。

「……よく見てますね。」


夜霧がふっと笑った。

「顔に書いてありますから。」


夜霧がすっと立ち上がる。

「引き止めてしまいましたね、すみません」


手を差し伸べられた。

エスコートのつもりらしい。


手を取り、立ち上がると夜霧が一歩引く。

「では、また明日。」


去り際の横顔はいつもの完璧な微笑みに戻っていた。

さっきまでの表情は、もうどこにもない。


家に着いてスマホを開くと、通知が光っていた。

理人からだった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

他人に興味なさそうな顔している男は、面倒な確率高いですよね。

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