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77番目の使徒  作者: ふわむ
第一章
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魔法士ランダルフ2


え!?この、にこにこしているおじさんが魔法士様!?

というか『翠青の風』ってなんですかー!

四等って、どれくらいの強いの?

それに・・・輸送部隊って来るの明日じゃなかったっけ!?


色々疑問が頭を駆け巡る。が、しかし、だ。

とにかく挨拶だ。

私は胸に手を当てたままランダルフ・・・様に向いてお辞儀をした。


「初めまして。第七ホラス村のエルナと申します。こちらは私の父のドナンです。ランダルフ様、お目に掛かれて光栄です」


頭を下げたまましばし間が空いた。


「えーと。楽にしてくれっかな」

「はい」


私と父さんは、立礼を解いてランダルフ様を見た。

旅をしてきた行商のおじさん、のように見える。


「村長に紹介してもらったが、改めて。俺はランダルフ。冒険者だ。俺と話をしたいっていう娘っ子がいるってことだったが、エルナ、君のことで合ってるか」

「はい。魔法のことについてお話を聞かせて頂けませんか」


ランダルフ様は少しの間、じっと私を観察するように見下ろしていた。


「ふーん。ま、いいか。村長、ここに座らせてもらっていいのかい?」

「ああ、もちろん。私も同席だけさせてもらうが、ランダルフ殿と話をするのはエルナだよ」

「わかった。ええと、エルナ、それからドナンさんだっけ、そっちに座ってくれ」

「「はい」」


椅子が四つ運ばれ、私は父さんと並んで座った。

全員が座ったところで正面のランダルフ様が口を開く。


「で、何の話が聞きたいんだ?エルナ」


世間話も一切無しで、最初から本題だ。会話の中で打ち解けられるといいんだけど・・・。


「まずは二つです」


私はふーっと息を吐いてから、指を一本立てる。


「魔法でどんなことができるのか、ということ」


指を二本立てて続ける。


「そして・・・私も魔法を使えるようになるのか、ということです」


ランダルフ様は少し困った顔をして、腕を組んだ。


「魔法でできることは、一般的な話でいうなら・・・夜でも足元を照らせる光を出したり、火種を作れたりする。ただ、魔法ってのは個人で得意な系統が違う。だから、光しか出せないやつもいるし、火種しか作れないやつもいるな」


んん?想像してたのと違う。

いや、私も狩りを経験したからわかる。光も火種も便利だ。便利なんだけど・・・。

もっと、敵をドカーンとやっつけたり、箒に跨って空を飛んだりするのかと期待したんだけど。


「一応言っておくと、だな。魔法士に、どんな魔法ができるのか、ということはあまり聞いてはいけないんだ。俺は結構色んなところに駆り出されてるんで、何ができるか知れ渡ってしまっているんだが、他の魔法士には切り札として秘匿している奴もいる。だから、今後は気を付けるといい」


ぬあーっ、しまった!

マナー違反だったのかー。

正確には、私は一般的な魔法の話を聞きたかっただけで、ランダルフ様がどんな魔法を使えるか、という意味ではなかったが、今の質問の仕方ではそう捉えられても仕方がない。


「知らなかったとはいえ、失礼な質問をしました。ごめんなさい」

「ああ。それで二つ目の質問、エルナでも使えるかどうかは・・・わからん。まず素養がないと無理だし、仮にあったとして魔力を通せるまで何年掛かるかはエルナ次第だ」


最低でも素養が必要、そして時間が必要、か。

でもでも、こんなファンタジー世界だよ?魔法!絶対!使いたい!!

それに私はまだ七歳だ。挑戦に費やすための時間はある。


「私、魔法を使ってみたいんです。何が何でも!」

「ふーむ、そんなに使ってみたいのか・・・。エルナはどんな魔法を見たんだい?」

「え?・・・いえ、見たことはないです。ガルナガンテ村長が魔道具を使っているのを見ただけですが」

「え?ないの?」

「はい、ないです」


・・・おや?何か変だったかな?

あ、そうか!魔法を見たことないのに、魔法を使ってみたい、ってかなり変か。

やらかしたーっ!

どうする?誰かにすごい魔法を聞いたことにするか?いやダメだ、ここで嘘は良くない。


「見たことはありません。でも、魔道具を見て感じたんです。魔法は大きな可能性を持っているに違いない、と」


嘘は言ってない、言ってないよっ。

でも苦しいなー。

・・・そう思ったが、


「ほう!」


ランダルフ様は嬉しそうな声を上げた。


「確かにエルナの言う通り、魔法は大きな可能性を持っているぜ。そうだよな、魔法に憧れる切っ掛けなんて、そんなもんだよな」


あ、あれ?何か納得してくれた。いいのかな?


「よし。俺が今から夕方まで魔法の練習方法について指導してやってもいい。いいんだが・・・金が要るぞ。銀貨四枚が必要だ」

「払います!」


私は即答し、懐の革袋を取り出した。そして銀貨四枚をつまんでみせた。

座っていたランダルフ様が上半身をのけ反らせる。


「お、おい!持ってんのかよ!?」

「はい、私が稼いだお金です。ぜひお願いします」


銀貨1枚あれば、この辺りの村人なら十日は家族で食べていける。

ランダルフ様は一つため息を吐くと私の父さんを見た。

視線を受けて、父さんは頷く。


「エルナの言葉に間違いはありません。それはエルナが稼いだ金です」


父さんの言葉を聞いたランダルフ様は、若干渋い顔をしながら私から銀貨四枚を受け取った。

そして、そのままガルナガンテさんに差し出す。


「村長。すまねぇが、オルカーテの冒険者ギルドに達成後報告依頼を出してくれないか」

「うむ。引き受けよう」

「助かる。それと、今からエルナに指導したいんだが」

「中庭を貸そう。外からは見えない。内からは見えるが屋敷の者には立ち入らぬよう周知させよう」

「ありがたい」


ガルナガンテさんはすぐに使用人さんを呼び、ランダルフ様と私を案内するよう伝えた。


「よし、エルナ行くぞ」

「はいっ」


使用人さんの後に続くランダルフ様。私はそれを追う。

遂に!魔法が!見られるかもしれない!!

私はかつてない期待で胸を高鳴らせるのだった。


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