決闘
日村と黒鉄は羽澤先生から許可を得て、多目的ドームを借りた。
先生は、この決闘を否定するつもりはないらしい。
そして、半数以上の生徒が観客として参加した。
ルールはどちらかのダウン。及び、これ以上の戦闘は厳しいと判断された時点で終了。
ドーム内にある大きなモニターにはテンカウントが表示されていた。
「二人とも準備は良いですかー?」
「おう!」
「おっけーでーす」
二人の準備は整ったようだ。
「んじゃ、行くぜ!!」
カウントが終わると同時に、
黒鉄は物凄い勢いで日村に突っ走って行った。
「うぉっと!」
素早い攻撃に対応する日村。口だけの男じゃないようだ。
「いつまで避けられるかなぁっ!!」
「君が負けるまでさ」
避ける動作に無駄がない。先にバテるのは間違いなく黒鉄の方だ。というか、二人ともまだ異能力を見せていない。探っているのだろう。
能力者同士ってのは初見殺しによって決着がつくことが多い。
異能力を発動するタイミングはかなり重要になってくる。
「どうだっ!!」
ラッシュを仕掛けていた黒鉄は、一瞬の隙を見つけてストレートを打った。
「はぁーあ。期待外れだよ」
動じることなく黒鉄のストレートを手で受け止め、溜息をついた。
「ぐぁっ!!」
すると、日村から突然風が吹き出した。突風に見舞われた黒鉄は吹っ飛ばされ、寝転がっている。
先に能力を出したのは日村の方か。
まだ全貌は見えないが、厄介なのは間違いなさそうだ。
「どうしたの?このままじゃ負けちゃうよ?」
「うっせぇ!まだこれからだ!」
「へぇ」
異能力を出すことなく、再び突っ込んでいく。
呆れた日村は再度風で追っ払う。
「へへっ!もういっちょ!!」
「君さぁ、やる気あるのかな?」
「あるに決まってんだろー!!」
「暑苦しい人間は嫌いなんだよね」
「ごぉっ!?」
再び突っ込んできた黒鉄に対し、今までの中で一番強力な突風を起こした。客席にまで余波が来るほどの威力に、クラスメイト達は驚愕している。
「先生、もう終わりでいいですよねー?」
日村は勝ちを確信し、ニヤリと笑みを浮かべている。
「まだですよ〜」
「ん?なぜです?」
「勝手に勝敗……決めてんじゃ……ねぇよ」
至る所傷だらけで出血している。彼は日村同様に笑みを浮かべ、立ち上がった。
「うわ……しつこ」
「行くぜ……クソ野郎!!」
どこか雰囲気の違う黒鉄は目を見開き、獣の様に四つん這いになって日村に迫っていく。
ヤツの体の至るところから血が出ており、それがマフラーのようになびいている。
またまた風で追っ払おうと構えていたところ、
既に黒鉄は日村の眼前に迫り、握り拳を振るっていた。
「っ!?」
右ストレートが顔面にクリーンヒットし、思いっきり吹っ飛んだ。ものすごいスピードとパワーだな。確定ではないが、黒鉄の能力は血液がトリガーとなっているみたいだ。身体能力強化、ってことでいいのか?
「ごほっ!ごほっ!」
「どうだ……?痛てぇ……だろ?」
「ちょっとはやるね。でも、もういいや。……ん?」
何かをしようとした日村だが手を止めた。
「あ……」
いきなり黒鉄がバタッと倒れた。
「はーい。そこまでです」
突然勝負が決まり、クラスメイトは唖然としている。負けた黒鉄は退学、か。
「はぁ……随分と調子に乗ってくれたね。黒鉄くーん?」
うつ伏せに倒れた黒鉄の頭を力強く踏み、煽っている。
「よせっ!」
塚本がいつの間にかグラウンドの方に駆け出していた。
「え?なに?」
「そこまでする必要はないよね」
「イラッとさせるほうが悪いのさ。まあ、もう二度とこの顔を見なくて済むからいいけど」
顔を踏むのをやめ、あくびをしている。つくづく性格の悪い奴だな。
「日村君……」
「なに?」
「彼の退学を……取り消してもらえないだろうか」
退学取り消しの交渉を持ちかけたが、相手が悪い。クラス一と言っていいほどひねくれている奴だ。
「はい?」
「もちろん、その際には君に対価を支払うよ」
「うーん。対価ねぇ」
「頼む……このとおりだ」
塚本が深々と頭を下げた。
「いいよ。塚本君とは長い付き合いになるだろうし、今回は君の顔を立てて取り消すよ」
「本当に?……ありがとう!」
「でも、対価はいただくよ。君と……こいつのマネー全額をね」
「分かった」
「じゃあ交渉成立ってことで」
退学は免れるが金は無くなる、か。どちらにせよ、黒鉄は今後地獄を見ることになりそうだな。
塚本も金無しだが、アイツは人望もありそうだしなんとかなりそうな気がする。
「塚本くーん!」
「あんなバカのためになんで?」
「彼はクラスにとってかけがえのない存在の一人だからね。こんなことで失うわけにはいかないよ」
このクラスは彼を主体として動いていくのだろう。マネーを失ってまで誰かを救うほどのお人好しはそういない。
「塚本君って超優しいのね。ホントカッコいい!!」
「それな。てか、日村サイテー」
「本当最低ね」
クラスの女子達が塚本に駆け寄り、塚本に称賛と日村に批判の声が響いた。
しかしこのクラス……大丈夫だろうか。




