自己紹介と自由時間
根本的な願いの条件を伝えられ、一同は動揺を隠せず未だ沈黙を続けている。
それをニコニコと見ていた羽澤先生が手を叩く。
「はーい。それじゃあ自己紹介を始めたいと思いまーす。まずは、塚本君からどうぞ~」
「え?…………あ、はい」
この空気のなか、先生は無理やり進行させる。
「えっと、塚本裕二です。みんなと仲良くしたいので気軽に声かけてください。一緒にこの学校生活を頑張っていきましょう。よろしくお願いします!」
昨日先生に質問していた爽やかな男こと塚本裕二。すごいモテそうな男だな。
こうして廊下側から順にまわっていき、隣人イヴの番が来た。……頑張れ。
「……イヴ=ロマノフです。えっと……お話があまり得意ではないので、仲良くできないかもしれませんが、どうかよろしくお願いします」
地獄の空気から少し変化してきていたので、そこそこ大きな拍手が鳴り響いた。
ていうかその挨拶パクりたい……。
「はぁ」
誰にも聞こえない溜息をつく。
こんななかで自己紹介なんてしたくない。
しかも俺が一番最後だ。
まあ、当たり障りのない挨拶をすればいいよな。
そして、なんだかんだ俺を含めてあと三人になった。
「えー、日村夏樹です。怖気づいてるのか知らないけど、ビビってるならさっさと退学すれば良いんじゃないかなって思います。そんなヤツはどのみち残っていけない。足手まといになるので、退学の検討をよろしくお願いしまーす」
なんとも自己紹介とは離れたクラスメイトへの文句を述べた。こいつヤバいな。
「おい!お前!!」
金髪の男子生徒が席を立ち、物凄い剣幕で日村を睨んでいる。今にもそっちに向かいそうだ。
「え?なに?」
「クラスメイトは仲間なんだ。その言い方はねぇだろ?」
「仲間、ねぇ」
呆れた表情で言った。
「なんか間違ってたか?あぁ!?」
「僕の意見も間違ってたかなぁ?少なからずそう思ってる人もいると思うんだけど」
実際、日村の意見も分からなくもないが、ヤツの理想だと強者のみしか残らず、淡々とした関係が続いていくクラスになってしまう。連携や信頼というものがきっと見られない。
それに、この場で切り捨てるのは得策じゃない。戦力は多いに越したことはないし、
言われてないだけで、退学した生徒のクラスにペナルティの可能性も有り得る。
「はーい。そこまで!あと二人の自己紹介も残ってるので、切り替えていきましょう〜」
先生が割り込み、この場はなんとか収まった。
「く、久保田弘樹です。よろしくお願いします。えぇと、その、…………以上です」
やたら低音ボイスな子だな。っと、次は俺か。
「えー、桐生颯斗です。……精一杯頑張りますので、よろしくお願いします」
至ってシンプルな自己紹介をし、なんとか終わった。
「はーい。皆ありがとう。それじゃあ今から三十分間自由時間にしまーす。トイレの時以外、教室から出ないようにお願いしますね〜」
そう言うと、先生は教室から出ていった。
自由時間か。っておいおい。先生が出ていったら
まずいんじゃ……。
「おい!日村!!」
やっぱりか。これはいつ手が出てもおかしくないぞ。
「やめなよっ!!」
「黒鉄君!やめるんだ!」
「黒っちー!冷静になれ!」
三人の生徒が、止めようと早々に立ち上がる。
「いいよいいよ。君たちは見てると良い」
日村は止めに入ろうとしたクラスメイト達を止める。そしてその間に、黒鉄という生徒は日村の席についた。
「クラスみんなに謝れ!」
そう言いながら素早く日村の胸ぐらを掴み、今にも殴りそうな雰囲気だ。
「そんなに気に食わないなら、放課後に決着つけようよ。負けたほうが退学ってことで」
なんともリスキーな決闘だ。受けるだけ馬鹿馬鹿しいが……。
「おう!やってやるよ!逃げんなよ?」
危険性を考えず、即答した。
「いや、逃げる必要ないし、その煽り意味ないよ?」
「んだと!?」
「じゃ、そういうことでー」
怒りに満ちた黒鉄は拳を握り、自分の席に戻っていった。
「ん?」
イヴからチャットが来ていた。
(まずいですね。どうなるんでしょう?)
(現状、決闘は止められないな。見守るしかない。)
(決闘……見に行きますか?)
(ああ。一応な。)
(私も見に行きます。)




