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炙り出し

翌日も、またその翌日も作戦通りに同じ日々を送る。


そして今日も彼女を送り届けた。



「今日もありがとう」


「ああ。またな」


彼女の表情は断言できるほど明るくなっている。


精神的な攻撃は未だに少なからずあるが、話題はそこまであがらなくなっていた。


そろそろ頃合いだろうか。


俺はそのまま帰らずに外に出た。


適当に通りの方へと歩き、裏路地を通る。


「…………何か用か?」


一見すると、辺りにそんな人物は見当たらないし、

そんな気配はなく思える。が、ここに来ると、空間把握が安定して使用できる。


そして今、俺の背後に位置取る一人の気配を感知。


物陰からこちらを伺っているようだが、そんなものは俺に通用しない。


「そこにいるのは分かってる」


と告げるが、もちろんそんなことでは出てこないだろう。


普通ならこちらから出向くメリットはない。


不意打ちに遭うからだ。


あえて俺はこちらから出向く。


何者のかがいる、狭い通路に向けて一歩二歩と歩みを進める。


「おらっ!!」


と通路からナイフを持った浮かない顔をしたパーカー男が飛び出してきた。


そいつは俺に向かってナイフを振る。


ナイフを持った右手の甲を叩いて落とし、隙だらけの顔面に右ストレート。


「がうっ!?」


よろけたところをすかさず蹴りを入れ、ダウン。


落ちたナイフを拾ってそいつに向けつつ、マウントを取る。


「く、ぐぞぉ……なんなんだよ……おばぇ」


涙を浮かべ、鼻血を垂らした不審者。


「こっちのセリフだ。お前、学生じゃないよな」



彼女と毎日一緒にいたのには単純な理由がある。


盗撮犯はおそらく、さらなる写真を撮ろうと彼女をつける。そこに俺が入り続ければ、段々と邪魔に感じていく。


それから彼女の写真をひとまず諦め、邪魔者である俺を盗撮と似た要領で後をつけ、襲ってくる。


そうなれば良いなという感じで立てた作戦だったが、こうまで上手く運ぶとは思わなかったな。


「は、離せっ!!ヒッ!?」


「何者だ?」


喉元にナイフを近づけつつ質問する。


「お、俺はただの雇われだ!彼女を盗撮するだけで金が入るって言うからやってただけで!!」


雇われか。なら、校門前に写真を貼った奴がいるってことだよな。


なんなんだ?


「誰から雇われてる?」


「し、知るか!俺はネットで応募しただけだからな」


ネットで募集してた。か。


色々と怪しいな。


「金がほしいなら、もっと真っ当なバイトでもやってろ」


そう言い、彼の顔面に一発叩き込む。


だらしない顔をして気絶した。


もう少し聴取しても良かったが、こいつは所詮雇われ。


この手の奴らは、どうせトカゲの尻尾切り。


"依頼主"は危険を察知してエスケープするだろう。


「……やっぱりか」


気絶した男の指で、ポケットに入っていた端末のロックを解除しようとするも、すでに端末の電源が入らない。


依頼主から専用の端末でも渡されていたのだろう。どうやっても電源が入らない。


「さて」


とりあえず俺は、アプリに内蔵されている通報機能を使って警察に突き出した。


___________________________________________________


「ふぅ」


終わった。とりあえずは、だが。


彼女にも伝えよう。


(え?ウソ?)


(本当だ。とりあえず警察に突き出したから大丈夫……だと思う)


(怪我とかしてない?大丈夫!?)


(ああ。問題ない)


(そっか。それなら良かった……)


(でも、正直あんまり気は抜けないな)


(そうだね……誰かを雇ってまで、私をどうしたいんだろう)


(それはわからないな。どのみちくだらない考えを持った奴が企てたんだろう)


(だろうね……。あっ、桐生君、明日空いてる?)


(あ、ああ)


なんとか盗撮犯を捕らえたが、そいつのバックに"何かしらの存在"が控えている。


が、とりあえずの平和は保たれた。



神薙への誹謗中傷も、ほぼ見かけない。


最初こそ動揺していた彼女だが、今では手慣れた対応をして、いつものように振る舞っている。


___________________________________________________


翌日の放課後、俺の部屋に彼女が訪ねてきた。


「わざわざどうした?」


「お邪魔しまーす。あの……これ、桐生君に」


彼女が鞄から取り出したのは、暗めな赤い箱。


なんだろうこれ。


「あ、ありがとう。これは……?」


「美味しい紅茶とサブレのセットだよー。き、嫌いだったらごめん!」


「いや、……好きだよ。ありがたくいただく」


「……よかった」


「……一緒に飲むか?」


「ううん、私はこれで帰るね!……本当、ありがとう」


「またな」


彼女はお礼の品を渡して帰っていった。


「…………」


オシャレ過ぎないかこれ。


こんな事言うのはなんだが、高そうだ……。


しばらく充実したティータイムを過ごせそうだな。

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