戦慄行為
仮面男の話題も冷めつつある今日この頃。
例の試験を待ちつつ、今日も朝を迎える。
「ふわぁー……ん」
時刻は午前六時半過ぎ。
この生活にもだいぶ慣れてきた。
しかし、一人暮らしっていうのは良いもんだな。
なにかに縛られる事が少ない。
何を食べるのも自由。誰と過ごそうが自由。
好きな時間に寝られるし、起きる時間だって
遅刻にならないようにすればいいだけ。
本当に楽なところだ。ここは。
コップ一杯の水を飲み、それから顔を洗って歯を磨く。
朝飯は基本的に摂らない。後は着替えるだけ。
「……ふぅ」
一連の流れを終え、出発時刻までぼーっとテレビを見る。
「ん?」
こんな時間にクラスのグループチャットに通知が来ていた。
三人くらいがヤバい!マジなのか?あれ何なの!?と
何がヤバいのか分からない内容が送られてきていた。
主語がない……。
それからすぐに塚本が反応する。
どうしたの?と。
すると、早期登校組の一人が反応。
校門まわりに"とんでもない写真"が
張り巡らされている、と。
とんでもない写真?なんだろうか。
その詳細を聞くも、そのクラスメイトは答えず、とにかく登校すれば分かる、と謎に焦らす。
写真でも送ってくれれば良いんだが。まあ、どうせ見ることになるな。そのとんでもない写真とやらを。
「おう颯斗!」
エレベーターを降り、エントランスでたまたま鉢合わせた黒鉄。
「珍しく早いな」
「まあな。あんなチャットされたら気になるだろ?」
「そうだな」
「おはようございます」
「おっは~!」
それからイヴと真島とも鉢合わせる。
「おはよう」
「おはよう!!」
「見ましたか……?あのチャット」
「ああ」
「一体何なんだろうねー」
「全く検討つかないな」
そんな感じで足を運び、校門前へ着く。
「うわっ!?何だよあの行列!?」
そのとんでもない写真に群がっているのか、
大人数の生徒が校門前に入り乱れていた。
人が多すぎて写真が見えない。
俺と黒鉄は二人でその団子状態の人混みを掻い潜り、前の方へとたどり着く。
「お、おいおい……なんだこりゃ」
「悪質だな……」
そのとんでもない写真を見て、全身に戦慄が走る。
「え?」
「マジ!?」
その写真とは、
"神薙真昼のプライベートな写真"だ。
友達との日常風景を写したものから、
帰宅する姿。それから一人で下着の買い物をしている姿
などなど。見渡す限り様々な写真が張り巡らされていた。
そのどれもが学校内ではない。
ストーカーってやつか。
とりあえず疑われるのは、
他クラス、もしくは彼女のファン。この二つだろう。
この街にだっていくらでもいるはずだ。
なんにせよ、唐突すぎるし、今のところ犯人は不明だ。
「こ、怖えぇ……」
「ヤバいなこれ」
「事件の匂いしない?」
まわりにいる生徒達も驚きを隠せず、その場に留まっている。
「本人が見たら……やばいよな?」
「だろうな」
他クラスとはいえ、彼女は同盟を組んでいる相手。
なにか力になっておいたほうが、後々それが効いてくるかもしれない。
「と、とりあえず行こうよー。見てらんないってコレ」
「……酷いですね」
「おはよう。桐生。……なんだかとんでもないことになっているな」
「真田か。……ああ。酷いもんだ」
「お前!てか、颯斗と仲良かったっけ?」
「いや、少し挨拶した程度だが?」
「な、なあ、あれって……」
まわりにいた一人の生徒が指を指す。
その方向には、例の張本人。神薙真昼がいた。
彼女は足を止め、下げていた鞄をドサッと落とす。
見てしまったようだ。当然ショックだし、恐怖を覚えただろう。
「こ、これ、なんなの……?」
身に覚えのない写真の数々。当然彼女は動揺を見せ、震えた足で後退る。
野次馬達の視線を気に留めることなく、そのまま彼女は写真の前へとやってきた。
すると、片っ端から貼られた写真を引き剥がしていく。
「懐かしいな……前もこんな事あったんだよね」
空元気な笑みを見せつつ、淡々と剥がしていく。
「俺達も手伝おうぜ」
「だな」
「そうだな」
ざわざわと野次馬達が話し込んでいるなか、彼女に協力し、皆で写真を剥がす。
「あ、ありがとう」
「大変だったな」
「気にするなよ」
「こいつの言うとおりだ。気にするなよ!」
「そうそう!」
「ですね」
「ありがとう。じゃあ、先行くね。その写真もらっておくね……」
引き剥がした写真を鞄に入れ、一人でトボトボと校内へと歩いていった。
「彼女……あんなようなことが前にもあったみたいだな。けど、懐かしいなで済まないだろう」
「そうだな」
朝から衝撃的な光景を目にした俺達。
とりあえず遅刻になりたくないので、教室へと入る。
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「なあなあ、その写真ってのマジなの〜?もう無かったんだけど」
「マジマジ!!普通にヤバい写真とかあったよ!」
「えー、写真とか撮ってないのー?」
「撮ってない撮ってない!さすがにヤバすぎるっしょ!」
「うえー!見たかったのになー」
「なあ!裸の写真とかあったか?着替えてるところとか!」
「ねえよんなもん!」
「なーんだーつまんないの〜!」
といったように、当然この話で持ちきり。
心無い奴の会話がところどころ聞こえてくる。
「彼女……心配ですね」
「ああ。心配だ」
真田が言っていたように、懐かしいだけでは済まないだろう。
とりあえずチャットでも送ろう。




