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終幕

「……くっ!!」


逆風を起こし、神楽島の顔面へと毒を反射した。

勢いよく向かっていく毒に対し、奴は両手をクロスさせてガード。毒を纏った手に吸い込まれている。


「……良い反射神経だ。てっきりアウトになるかと思ったがなぁ」


「喋ってないでさっさと来たらどうだ?」


「いちいちイラつかせてくれるな……お前。そろそろくたばっていいんだぜぇ!!」


そう言うと、目を見開いてこちらに突撃。このまま奴の体ごと吹き飛ばすのも良いが、それじゃ物足りない。屈辱的な目にあわせてやろう。


「でぇやぁ!!!!」


奴の独特な攻撃が毒と共に迫ってくる。再び猛攻を避けていき、一瞬の隙を突いて右のカウンター。


「おウっ!?」


「ふん!」


「ゴっ!?」


よろけたところに鳩尾への左ストレート。

鍛え上げられた肉体が耐えきれず、ズザザ!!と靴を擦りながら後退していき、膝から崩れ落ちた。


「こ……いつ……何で……?」


「何を動揺してる?早く立て」


「くっ……くく。本当に……おもしれぇなぁ」


ゆっくり立ち上がり、舌なめずりをしてこちらを見つめている。


「波動か、それとも……異能を反らしてるのか、候補はいくつかあるが……なんでもいい。……とにかく、お前を殺す!!」


「…………」


奇襲を警戒して構えた。


「うううううああぁぁぁ!!!!!!」


耳が痛くなるくらいの叫び声と共に、奴の体からドバドバと毒が溢れ出した。こいつ、ここら一帯を滅ぼす気か。しかもこれはデータにはない。


「このままじゃまずい……!!」


背後から塚本の声が聞こえた。彼は無事か。チラッと背後を見ると、松原は倒れていた。


塚本の言う通りこのままではまずい。俺はともかく彼らが死ぬ。


「とっておきだぁ。俺の全力をもってぇ……くたばれぇぇぇ!!!!」


奴の体から勢いよく辺りを埋め尽くす毒が迫る。

おいおい。体積以上だぞこの量。どうなってる。


まあいい。奴の全力を真っ向から叩く。


「松原君を……連れ出さないと!」


「そこのお前。そのまま動くな」


「え?」


塚本に向けて警告した。変に動かれて毒に触れたら困る。


「死にたくなかったら動くな」


こんな格好の奴を信じるのか分からないが、毒がもう間近だ。彼も逃げ切れないことを悟っているだろう。


「ふぅ…………はっ!!!!」


毒の波に対して右手をかざし、災害レベルに近い強風を吹かせた。


「そんなもんで何が出来る!!」


「終わりだ」


「っ!?」


迫る毒の波を余すことなく押し返していき、逆流していく。

そして、そのまま強風を神楽島本体にぶつけ、遠くにふっ飛ばした。


「す……すごい。君は一体……」


「…………」


もちろん答えることはせず、俺はその場を去った。ちなみに押し返した毒に関しては心配ない。

現場が広く、人気もないこともあり、被害はゼロ。そのままにしておくわけにもいかないが、そのへんは学園側がうまくやってくれるだろう。

さてと。


「しぶといやつだな」


ふっ飛ばした地点に行くと、奴は半目を開けて寝転がっていた。まだ意識があるようだ。


「…………こ……ろ」


口をパクパクさせて何かを訴えている。


「や……れ……」


自身の敗北を受け入れ、死を懇願しているようだ。己の実力に絶対とも言える自信を持っていた奴が、よくわからないやつに負けた程度でこうも弱気になるのか。確かに負けは死と同類。それを常に覚悟してたのだろうが、こうもすんなり折れてしまうとは。


「断る」


「…………!?」


神楽島はこの状況で断る俺に対し、血まみれの顔をゆっくりと歪ませた。


「お前を殴るのは……とっても気持ちがいい。だからまだ殺さない。……飽きた時にでも殺すよ」


そう理由を述べながら、風を纏った右足を上げ、そのまま顔面にストンプ。


グチャッ!!



そんな音を立てたストンプにより、とうとう神楽島は白目を向いて気絶した。


「…………ふぅ」


一息つきたいところだが、一つ気になることがある。俺はすぐに、ある雑居ビルの屋上へ向かった。


「……逃げが上手いな」


何者かは街中の方へと逃げたようだ。これじゃ追うに追えない。空間把握はポンコツに成り下がるし、この格好は目立つ。


気配は神楽島と会敵してからずっと感じていた。正体が誰かなんて見当もつかないが、ろくでもない奴が見てるってことは確かだ。


さてと、最後の仕込みをしよう。


___________________________________________________


俺はすぐに最初に位置取りをして着替えた空きテナントのある雑居ビルへ戻り、制服に着替えた。

もちろん誰にも見られていない。


制服を適当に汚しておき、変装用の装備を入れた手提げを置いて塚本の方へ向かった。


「塚本……無事だったか?」


足を引きずりながら駆け寄る。


「あ……桐生君!僕は大丈夫!君の方こそ大丈夫かい!?」


「ああ。単に足を捻っただけだ。心配ない。ところで……そこに倒れてるのは松原か?」


「……うん。ちょっと前に救急車を呼んだんだけど……」


「重傷だな……」


治療までの時間が遅いと死ぬだろうな。奴の毒はそういう類のやつだ。無事だと良いんだが。


「おーい!!」


突然聞き覚えのある声が聞こえた。そこにいたのは少し汚れた神薙真昼。


「ごめんなさい!!こっちに中々来れなくて!!」


「どうしたんだ?」


「その話は後で。……まずそっちの状況を教えてくれる?」


塚本が流れを説明していった。すると、神薙は顔をしかめ、考え込んだ。


「仮面男……ねぇ」


それからまもなくして救急車が到着。神薙が同行し、松原を搬送。

塚本は軽傷なので、そのまま一緒に帰宅。


その後、少し時間を空け、俺は手提げを回収しに雑居ビルへ戻った。

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