一堂に会する
さらにその翌日。
いつも通り、眠たい目を擦りながら登校する。
「ん?」
遠くからで何だか分からないが、
どうやら下駄箱前で誰かが揉めているらしい。
「とぼけるな!アンタたちなのは分かってる!」
「はぁ、なんのことだかサッパリ分からないって言ってるだろう?」
少し進んでいくと、F組の神楽島と、代表戦で退学者を指名してたB組の女子生徒が、
それぞれの取り巻きを含めていがみ合っていた。
「じゃあなんで藍沢君は来ないのかしら?」
「さあなー?」
神楽島はあえてなのか、含みのありそうな受け答えをして、首を傾げた。
ていうかこの揉め事……俺のせいじゃないか。
まあでも、藍沢に釘を差したことは間違っていないし、我々A組にとって必要な事だ。
真相を知る身としてはどことなく気まずいが、
さっさと奴らの横を抜けて教室に向かおう。
そう思い、歩みを進めた。
「なにごとー!?」
ギスギスした空気のなか、
背後から聞き覚えのある声が聞こえた。
そう、その声の主は神薙真昼。C組の主将をつとめる生徒だ。
面倒臭い事にならなきゃ良いが……。
「はっ、お前は下がってろ。顔商売が」
「ははは。……喧嘩売ってる感じなのかな?」
神薙はニコニコしながらも怒りが感じられる返答をした。顔商売って……。
「あなたには関係ないから引っ込んでなさい」
神楽島に続けて引っ込んでいろと女子生徒が言った。
「いやいや、朝からこんなところで揉めてたら迷惑じゃない?」
ごもっともな返答にガヤがそうだ!そうだ!と
野次を飛ばす。
「何事だ?」
この場に続けて学年最強と言われるD組の主将、
真田政宗がやってきた。
「おい真田、今面白そうになるところなんだ、じゃま……するなよ?」
真田にそう言いながら、不敵な笑みを浮かべた。
「さっさと教室に行け。それと迷惑だ」
「ならコイツに言えよ。俺はいきなり喧嘩売られただけだ」
「ほう。それはお前の"やり方"が悪いからだろ?」
「ああ?」
女子生徒と神楽島じゃなく、今度は真田と神楽島がいがみ合っていた。
というか、真田もこの学校の裏側に気づいているようだな。
そして二人は、今にも手が出そうな雰囲気になっている。特に神楽島は闘争心が剥き出しで、目を見開いて真田にガンを飛ばしていた。
「ちょいちょい!二人共やめなよ〜?」
神薙が止めようと一声かける。
「はぁ……無駄よ。どう見ても因縁ありって感じじゃない?私だってそうなのに。ならこの際、潰し合ってくれないかしら」
「えぇっとー……」
神薙はお手上げのようだ。
「おはよう桐生君。ってなんだこれは?」
挨拶とともに驚愕する塚本。無理もない。
これだけの主将をつとめる生徒が一堂に会することなんてそうそうないだろう。
「ああ。おはよう。……実はな」
この状況を簡単に説明した。
「うーん、遅刻すると減点されるし、うちのクラスの子が巻き込まれてないなら無視して行こうか?」
「ああ、そうだな」
塚本の言うとおりだ。俺達にはなんの被害もない。そして歩みを進める。
「______お前達、何をしている?」
そしてまた、聞き覚えのある声がした。
振り返ると、
そこには生徒会長、倉科泰斗の姿がある。
「おいおい、生徒会長さんまで来ちまったよ!」
「会長……」
「わぁお!」
「盛んなのはいいが、みんなの邪魔だ。さっさと教室に行け」
会長の威厳により、それぞれの主将たちは
黙ったまま下駄箱に入っていった。
「…………」
「…………」
「ん?どうしたの桐生君?」
「……いや、なんでもない。行こうか」
倉科泰斗はこちらをじっと見つめていた。




