強者の戯れ
「…………」
いつの間にかこの場に来た生徒会長を、俺はただ見つめる。
「一年か。話に聞いていたとおり好戦的な奴が多いようだな」
倒れた藍沢達を見回し、こちらに近づいてくる。
「…………」
俺はただ黙ったまま彼を見つめる。
「顔を見られないよう変装か。いい出来だ。どれ、顔を見せてくれ」
そう言い、仮面を触ろうと右手が伸びる。
俺は咄嗟に右手首を掴む。
「ふっ。そんなに見られたくないのか?安心しろ、まわりには誰もいない。それに、俺がお前の正体を知ったところで誰にも言わないさ。そもそもメリットがない」
「…………お断りします」
念には念を。俺は掴んでいた右手首を離し、丁重にお断りした。
「ふむ、そうか……」
「______!?」
安堵した途端、いきなり右の裏拳がとんできた。
それを後ろに下がって避けると、物凄い速さで近づき、ラッシュを仕掛けてくる。
「ほう、やるな」
「何するんですか?」
「いやすまない。少々からかってしまった。……しかし驚いたな。まさか、身体強化を使った私の攻撃を初見で避けきるとは」
身体強化か。どうりで速いわけだ。
「もう帰っても良いですか?ここにいる理由はもうないんで」
その場から立ち去ろうと歩き出す。
「待て」
「なんですか?」
「その動き……やはりそうか。一年A組の桐生颯斗だな?」
そんな素振りを見せたわけでも、顔を晒したわけでもないが、一発で言い当てられた。
「…………」
「そう警戒するな。私は生徒会長だ。すべての生徒の情報は把握している。人には話せない……深い事情までな」
「そうですか」
「ふふふ。様子を見に来て正解だった。有意義な時間だったよ。より君に興味が湧いてきた」
余計なやつに目をつけられたなこれ。
はぁ。
「君が本気で戦う瞬間を楽しみにしているぞ。
ではな」
「……帰ろう」
___________________________________________________
制服を入れた手提げのところへ戻り、
着替えてから帰宅。
幸い手提げは無傷で置いてあった。
生徒会長にはバレてしまったが、
今回使用した変装は使えそうだ。サバゲー用に開発されたのもあって動きやすい。仮面からの視界は決して良くはないが、まあ仕方ないか。
______そして翌日の放課後。
俺の部屋に塚本が来た。
どうやら藍沢は登校していないようだ。
「結果的に成功した。奴には改めて感謝しておくよ」
「そっか。……お疲れ様」
「別に俺は何もしていない」
「いやいや、そんなことないよ!」
「あいつプライド高そうだし、今回の一件で折れたかもな」
「そうかもしれないね」
今後の藍沢次第だが、心が折れていることを願う。
もしまだやる気なら、
もう少し痛めつけるしかない。




