ナイトレイド
至って目立つことなく外に出ると、藍沢とその他三人の後ろ姿を確認。
早歩きで何処かに向かっている。
その後を追うと、学校近くの雑居ビルに入って行った。
俺達を襲ったときのように、体験入部の帰りにまた誰かを襲う気だな。あの時は何人で俺達を襲おうとしていたのか分からない。
黒鉄の叫びによって電撃以上の攻撃はこなかった。
急いで向かいの雑居ビルに入り、手提げから黒のパーカーと手袋。それから骸骨のマスクを取り出す。
これらは、この前の日曜に一人で出掛けて手に入れた物だ。
そそくさと着替え、スマホの写真アプリを開いて
自分の姿を確認する。
「よし」
問題点であった黒髪に白メッシュという自身の髪色。カラースプレーなどで染めようかとも考えたが、色々考えた結果、却下した。
そんな時出会ったのが今着ているパーカー。
このパーカーのフードなら、目深に被れるだけでなく、簡単に剥げないように留めておけるようになっている。なので髪が出ることはない。
ただ一つ問題点を挙げるとするなら、休日以外
制服の上から着なければいけないこと。
ルールを破って退学にはなりたくないので仕方ないが、日によっては地獄。
そして手提げを目立たないような場所に放置。
このあたりは空きテナントだらけの雑居ビルが多い。多少の戦闘なら騒ぎにならなさそうだな。
俺や藍沢のいる雑居ビルも、空きテナントだらけのビルだ。
「…………」
空間把握を使って奴らの位置情報を補足しているので、状況は分かっている。
まだ動いていない。
やかましい都市部の方なら分からなかった。
奴らは屋上に位置取っており、二対二で周囲を警戒してるようだ。厄介だな。まあ当然か。
警戒しながら帰宅した塚本のように、大人数による下校で、手を出しづらい状況になると面倒。
なので大人数に対応できるよう、数を増して速攻で襲う。って感じなのか。
まあどっちでも良い。準備はオーケーだ。
「いくぞ」
先程裏路地に放置された空き缶を拾っておいた。
これを使ってまずは一人ダウンさせる。
藍沢以外の三人の中に、きっと電撃を使う能力者がいる。当たりを引ければいいが……。
いや、もっと厄介なのがいるかもしれないがな。
最上階の一個下の階層に位置取っている俺は、向かいのビルが見えるよう奴らに目をつけられる前に速攻で窓を開けていた。
今現在まで、奴らに全くバレていない。
どうやら探知系の能力者はいないみたいだな。
いたらとっくにバレてるだろうし。
そして俺は空き缶を右手で握り、投球フォームを模して窓から思いっきり投げた。
ただの投擲じゃない。これは、風を纏わせ、威力を増した弾丸のようなもの。
距離、威力、着弾位置、全て完璧。
「ぐあっ!?」
一人の顔面にヒットし、バク宙して顔から落ちた。
「おい!なんだ!?」
「向こうからだ!!」
藍沢達は驚き、こちらに注目した。
これでとりあえず誰かが襲われる可能性は低くなった。さあ来い。
俺はその場から脱出し、藍沢達のいる方向を見る。
ドガン!!バリバリ!!
俺がいた雑居ビルは電撃によって一部崩れた。
なんだ、空き缶でダウンしたのは別の奴か。
「あそこに誰かいるぞ!!」
もう見つかったか。まあいい。
「君、何の用かな?」
「……ある方の使いだ。B組、お前たちは一度処する」
「君一人で何が出来るっていうのかな?」
藍沢は余裕の表情を浮かべ、バカにしながら笑って言った。
「…………!?」
ドガン!!!!バリバリ!!
有無を言わさず、電撃がとんできた。
俺は咄嗟に避け、次の攻撃を警戒する。
「へぇ。いい反応するね。さて、僕もやろうかな」
代表戦でも見た筋肉ダルマに変わり、こちらに迫る。それに速い。
まわりの塵を風で操作し、藍沢の目にぶつける。
「くっ!!」
そして電撃を使う取り巻きにも塵を目にぶつけ、
すかさず右ストレートを顔面に一発。
「おらぁ!!」
視界を確保したのか、藍沢がこちらに太い腕を振った。
それを避け、今度はこちらに背を向けて走り出す取り巻きに近づく。
彼の前に素早く回り込み、鳩尾に正拳突き。
「えがぁっ!?」
それに続けて左の掌底。うっ!と言いながら吹っ飛び、そのまま気絶した。
「なっ!?」
藍沢は驚いてその場で立ち止まった。藍沢の方に近づいていくと、首を横に振りながら後退していく。
「な、何なんだ君はっ!?」
「…………答える必要はない。さて、最後はお前だけだな」
「くっ!!」
拳をギュッと握り、あぁっ!!!!という掛け声とともにヤケクソな攻撃を繰り出してきた。動きは鈍く、簡単に避けられる。
「ふん!」
「うっ」
腹筋に一発カウンター。そして腹を押さえ、片膝をついた。
「…………早く立て」
「くぅ…………おらぁ!!」
立ち上がったと同時に腕を振るってきた。しかし、相変わらず動きは鈍く、簡単に避けられる。
不意打ちのつもりか分からないが、
俺は再度腹筋にカウンター。
「おぅっ!?」
「早く立て」
「…………うぅ」
立ち上がる様子もなく、這いつくばった藍沢の
顔面に蹴りを入れた。
「ゴッ!!」
蹴られた後、バタッとうつ伏せに倒れ、膨張した筋肉が萎んでいく。藍沢も気絶した。
「ふぅ」
俺は神楽島のように誰かを殺める気はない。
ただ、釘を差したかっただけだ。
ただ、完全に解決したわけではない。
今回を機に再度A組を襲う可能性はある。
追い打ちを考えておいたほうが良さそうだが、
中々難しい……。
藍沢の部屋、というかドアに何かしらメッセージや、自分と同じ仮面を貼り付ける的な、
物で脅そうかとも考えたが、それは難しい。
仕掛けているところを見られるからというわけじゃない。
"サイコメトリー"という能力があるからだ。
それは、触れた物の記憶を読み取って誰が最後に触っていたのかなどの特定が出来る能力。
これを使える能力者がB組にいる可能性はゼロじゃない。なので止めた。
さて、長居は不要だ。帰ろう。
ん?誰かの気配がする。
「ほう、これはこれは______」
あれは……生徒会長?




