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体験入部

「頑張ろうね二人とも!」


「おうよ!」


「ああ」


放課後、俺達はサッカー部に向かう前に指定された教室でまず体操服に着替えた。次に部室へ足を運び、そこで荷物をロッカーに入れる。

それから部室内にあるボールを一つ持って、二人か三人でグループを作り、パスまわしをして顧問の到着を待つ。


事前に学校案内のアプリに当日の流れは載っていたので、それを頼りに俺達は行動している。


塚本と黒鉄はグラウンドに向かう際、大きな声でよろしくお願いします!!と一礼してから走り出した。


こういうものなのか……。あんなに声張れないぞ。


礼儀なのでここは俺なりの全力でやろう。


「よ、よろしくお願いします!!」


こんなに大きな声を出したのはいつ振りだろうか。思い出せないほど遠い記憶な気がする。

しかし、特に恥ずかしさは無く、むしろ気持ちいいくらいだ。

ストレスが溜まったときに大声で叫ぶと良いと聞いたことあるが、なんとなく今ので分かった。


これは効果的だ。かといって、別にストレスが溜まっているわけじゃないので叫ぶことは暫くないだろうが。


「なんだよ!声張れるじゃねえーか!」


「僕も驚いたよ」


「……あれで良かったか?」


「もちろん!」


「おうよ!」


二人ともサムズアップで答えた。


「さてと、早速パスまわししようか」


塚本から黒鉄。黒鉄から俺へ。俺から塚本へ。


この順番で始まった。


「ちなみに、サッカーの経験は?」


質問しながらパスまわしを始めた。

塚本はキレイに黒鉄へパスを出す。


「俺は小学生の頃からやってるぜ!」


黒鉄は少し荒いかと思ったが、そんなことはなく、インサイドを使って的確にボールをパスしてきた。


「っと」


俺は黒鉄の動きを真似して塚本へパスを出す。


「颯斗は?」


「あ、いや、サッカーは今日初めてだ」


「そうなんだ?それにしては上手いパスだったよ!」


「それな!」


「そうなのか?」


「そういう塚本はいつから?」


「僕も小学生からだよ」


黒鉄は知らないが、塚本はあんなことがあったあと、普通の生活を送れていたんだろうか……。

少し気になってしまった。


順番を変えたり、雑談しながら時間を潰した。


数分後、


他クラスの同級生が集まり、俺達と同様にボールを持ってパスまわしをしていた。

先輩方はシュート練習やドリブル練習、ディフェンスにキーパーの練習など、自由にやっている。


「注目ー!!顧問に一礼!よろしくお願いします!!!!」


先輩の一人が大声で号令をかけた。


「「よろしくお願いします!!」」


それに続いて俺達もよろしくお願いしますと一礼。


「いやぁ。遅れて申し訳ない。……こんなに集まってくれるとは嬉しいねぇ!!」


サッカー部の顧問は体育教師の田宮先生だ。

知ってる先生だと何故か安心してしまう。


「キャプテン。お前だけでも軽く自己紹介しておけよ?」


「はい!!……キャプテンの谷原です。今日一日!みんなで楽しんで行きましょう!よろしくお願いします!」


意外と普通で驚いた。もっとこう、バチバチしてるのかと思ったが……。


「さてと、今日は体験入部なので、メニューは軽めに設定しています。とりあえず今からグラウンド五周してもらおうかな。……キャプテン。号令」


「はい!!……全員集合!!!!」


所定の位置につき、田宮先生の適当な合図でスタート。五周か。普段はもっと多いのかこれ。


塚本と黒鉄は余裕をもって適度に走っている。


______ラン終了______


「桐生君大丈夫?」


「ああ、大丈夫だ」


「へっ!こんなもん余裕だぜ」


汗はかいたがまだまだ余力がある。


こうしてサッカー部の体験入部が終わり、辺りはすっかり暗くなっていた。


時刻は午後六時半。丁度腹が減った。


今日の飯はきっと美味しく食べれる。


何を食べようか悩むな……。



「お疲れ様ー!」


「おう!おつかれい!」


「お疲れ様」


「なあ、腹減ったな。どっかで飯でもどうだ?」


「良いね。……桐生君はどうかな?」


「ああ、行くか」


「よっし!決まり!」


狭苦しい部室で着替えを終え、学校を出た。


街灯がまばらな暗い道を歩き、黒鉄がオススメするラーメン屋に向かっている。


「いやぁ。それにしても楽しかったなぁ!」


背伸びしながら体験入部の事を話し出した。


「まあ、入ったら入ったでキツイ事の方が多いんだけどね」


「それなー!」


「ふわぁ……」


眠い。この学校に来てから初めてこんなに動いたもんな。


「颯斗は楽しかったか?」


「あ、まあまあ、かな」


「まあ、サッカーの経験ないならそんな感想だよね。ボールに触れる機会よりもランがメインだったから……」


「つーか、お前体力あるんだな!!ビックリだわ」


「確かに!何か他にスポーツやってたの?」


「いや、特には」


スポーツは今日までまともにやったことがない。

体育の授業は、現在持久走しかしていない。

なので、今日やったサッカーが初めてだ。


「このまま入っちゃえよ!面白えぞ?サッカーはよ!」


肩を組んで、暑苦しい体を密着させてきた。


「暑い……」


「こらこら。強要は良くないよ。じっくり考えて入ればいいさ。ね!」


「…………」


「ん?どうしたの?」


「なんだよ疲れたのか______」


「静かに」


俺はまわりの音に集中し、何者かの気配を感じ取った。だが複数ではない。

最近色々なところで喧嘩売ってる奴らとは別か?



「な、なんだよ急に!」


「驚かせて悪い。簡潔に言うぞ。誰かが俺達を見てる。物陰からな」


「はっ!?マジかよ!」


「え?それってどういう……こと?」


塚本は知るわけがない。学校の裏側を知っているのは今ここに俺と黒鉄だけ。


お互いに顔を見合わせた。またあのような事になるのかと思うと、油断は出来ない。

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